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模型 65日目


 俺は木の板を【万能農具】で加工し、模型を作っていた。


 五村ごのむらで進行中の地下商店通りの模型だ。


 イメージは伝えているが、模型があるのとないのとでは大違いだろう。


 ただ、思ったよりも模型作りは面倒だ。


 サイズを間違えたかもしれない。


 幅六十センチ、長さ二メートル。


 もっと小さくすればよかった。


 だが、いまさら放り出せない。


 時間をかけてゆっくり作業をしようかなと思ったところで、山エルフたちと目があった。



 山エルフたちに手伝ってもらうことにしたら、作業が加速度的に進み始めた。


 もっと早く手伝いを頼めばよかった。


 ただ、地下商店通りに落とし穴はいらないぞ。


 槍も飛び出さない。


 この水路は?


 水攻め対策。


 いや、商店通りであって砦じゃないぞ。


 だが、雨水の排水を考えれば水路は悪くない。


 水路は残したままで。


 ん?


 ああ、それはレールだ。


 その上をトロッコが移動するんだ。


 トロッコはこれだ。


 先に作っておいた。


 板に車輪が付いた板型トロッコと、箱に車輪が付いた箱型トロッコの二種類。


 レールの上をこう、動くのだが……


 山エルフたちが、目をキラキラさせている。


 だが、問題点もわかるのだろう。


 レールだ。


 車輪幅に合わせて、綺麗に二本のレールを敷かなければならない。


 そして、車輪が通ることによるレールの磨耗。


 地下商店通りのレールは、【万能農具】で加工した死の森の木を使うから問題ないだろうが、ほかでこれを採用するのは厳しいだろう。


「レールを一本にするのはどうですか?」


 モノレールのように、一本の太いレールというのも考えたが、地下商店通りの通行を考えたときに邪魔になるかなと……


 いや、待てよ。


 モノレールのように、高架で持ち上げるのはどうだろう?


 上に空間を確保しなければならないから、トンネルを拡張しなければ……


 強度面に問題は……問題ありだな。


 荷物が落ちても危ないし。


 上じゃなく、下にするのはどうかな?




 調子に乗りすぎてしまった。


 完成した模型は、幅六十センチ、長さ二メートル、高さ一メートルの四階建て。


 大作だ。


 しかもこれ、俺には見覚えがあった。


 大型ショッピングモールだ。


 中央は吹き抜けだし。


 違いは、一階。


 一階には四本のレールが並んでいる。


 モノレールではなく、二本で一つのレールだ。


 モノレールが廃案になったのは、動力の問題。


 人力で押す場合、モノレールだと抵抗が大きくて重くなるのだ。


 それに対し、普通のレールだと抵抗が小さい。


 模型を作って実験したから、間違いない。


 そのため、高架にするのは諦めて一階に。


 割り切って一階は全部トロッコの移動用スペースと考えた。


 四本のレールを使ってトロッコが移動し、荷物を商店に運び入れる。


 商店は二階、三階、四階の側面にあり、左右の側面を橋が繋いでいる。


 また、各階の移動のための階段もかなりの数用意されている。


 エレベーター、エスカレーターがないのが残念だ。



 さて、この調子に乗りまくって作った模型。


 ボツだろうなと思いつつも、作ったのだから誰かに見てほしい。


 なので、五村に持っていって地下商店通りの計画関係者に見せた。


 ヨウコ以外、口を開けて何も言わなかった。


 もう少し反応してくれてもいいのに。


 残念だ。


 ヨウコからは、この模型をしばらく預からせてほしいとのこと。


 別にかまわないので、預けた。




 後日。


 ヨウコの号令によって、地下商店通り計画は大幅な見直しがされた。


 今の計画では、模型通りには作れないからと。


 模型通りに作るらしい。


 えーっと……


 模型はサンプルであって、違いがあってもいいからな。


 あと、落とし穴は潰しておくように。


 基礎工事は手伝うから。


 そう言ったら、俺はそのまま現場に連れて行かれた。




 現場は五村の中腹。


 少しでっぱった部分。


 このでっぱった部分に穴を開け、トンネル通路としていた。


 トンネルの長さは、百メートルほど。


 俺が【万能農具】で掘ったからまっすぐだ。


 トンネルの幅は六メートル。


 馬車が二台、すれ違えるぐらいの幅になっている。


 地下商店通りの計画は、このトンネルの有効利用を考えてのものだった。


 正確に表現するなら“地下商店通り”ではなく“トンネル商店通り”なのだが、俺が最初に地下商店通りと言ってしまったからそう名付けられた。


 計画の大元はトンネルの有効利用だが、これにヨウコが五村の問題解決の光明をみた。



 五村の問題とは土地不足。


 五村は小山にあるので、建物を建てられる土地が有限なのだ。


 五村建設初期にある程度、重要施設の土地や道路などは確保しているが、予想以上のペースで移住してきた者たちのための建築ラッシュで土地の不足が目立ってきた。


 ふもとを使って土地不足を解消させようとはしているが、なぜか住人は小山部分に住みたがるのであまり効果はない。


 さらには、高い場所に住むのがステータスのようにもなっている。


 その上、五村では建物の建て替えが難しい。


 建物は斜面にあるし、道路からなにから狭いからだ。


 増改築も難しく、住居に不満がある場合は引っ越しを考えなければならない。


 そんな状況なので、五村では麓以外では飲食店や商店が新たにできにくくなっていた。


 それを解消すべく計画された、地下商店通りだったのだが……


 大型ショッピングモールを作って、大丈夫かな?


 いや、トンネルの拡張は問題ない。


 空間的にも計算しているから、十分に収まるはずだ。


 通気や換気、照明に関しては、もともとのトンネルのときから対策されている。


 ……いけるかな?


 だったら、エレベーターとエスカレーターの設置を考えたい。


 上下の移動は大変だからな。


 仕組みはそう難しくないから、問題は安全性と動力だな。


 俺はエレベーターとエスカレーターのことを考えながら、トンネルの拡張作業を続けた。




 ちなみに。


 模型は一つだけではない。


 色々と試行錯誤があったし、実験なども兼ねて同じような模型をもう一つ作っていた。


 完成度は五村に持っていったほうが優れているが、遊び心は残っているほうが高いと思う。


 その模型を、ザブトンの子供たちが気に入った。


 店舗予定のスペースに、ザブトンの子供たちが一匹ずつ入っている。


 けられた橋を自在に渡る姿は、まるで生活しているようだ。


 トロッコ……こっちの模型ではモノレールのトロッコに乗って、遊ぶザブトンの子供たちの姿もみられた。


 喧嘩しちゃ駄目だぞ。


 順番だ順番。


 その模型の横で、試作で作った箱型トロッコに頭を突っ込み、取れなくなった姉猫のミエルが情けない声で俺に助けを求めた。





書籍化作業で(17日ぐらいまで)更新が止まります。

すみません。


更新再開後ぐらいに、アルフレートの話かなと思っています。


大型ショッピングモールは、各自お近くの大型ショッピングモールをご想像ください。

特定のお店をイメージしているわけではありません。


感想、レビュー、誤字脱字指摘、ポイント、ありがとうございます。

励みになります。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] そのうち、ザブトンの子供たちが大樹のダンジョン内に地下商店通りを作りあげるかも? 大樹のダンジョンで暮らしてるラミア族&巨人族「「賛成!!」」
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