アイギスの日 60日目
時間経過がわかりにくいので、タイトルにアルフレートたちが学園に行って何日目かを記載するようにしました。
以前のタイトルにも追加する予定です。
フェニックスの雛のアイギスは、地面でシャドーをしていた。
相手の攻撃をかわして、突っつく。
当たり前だが、パンチじゃないんだな。
その様子を見守っている鷲の様子から、アイギスの仕上がりは悪くないようだ。
対する巨大な蚕は、周囲にいるほかの巨大な蚕たちやドワーフのドノバンの応援に応えながら世界樹の葉を食べている。
余裕だな。
恒例行事と言っては失礼だが、定期的に行われているアイギスと巨大な蚕の戦いが、これから始まろうとしている。
しかし、どうしたんだ?
いつもなら、とっくに戦いが始まっているのに今回はまだ始まらない。
そう思っていたら、ハクレンが子供たちを連れてやってきた。
アイギスが出迎えている。
なんでも、アイギスが呼んだらしい。
なるほど、子供たちを待っていたのか。
つまり、相当な自信があるということ。
巨大な蚕は大丈夫か?
勝負はなかなかの名勝負だった。
炎をまとったアイギスの突撃からの分身攻撃。
それを察して、糸による結界を張った巨大な蚕。
糸で身代わりまで作るとは、なかなかやるな。
さらに糸の結界で守りを固めておいての魔法による攻撃。
攻防のバランスがいい。
今回も巨大な蚕の勝利かと思ったが、今回はアイギスが頑張った。
火の玉を吐き出し、それが糸の結界に触れて炸裂。
その瞬間にできた自分の影に、アイギスは潜った。
そして、同じくできた巨大な蚕の影から現れる。
それは完璧な奇襲だった。
「火の玉を囮と影を作る道具にしたわけですか。
やりますね」
俺の隣で見てた文官娘衆がそう言ってた。
影渡りって、手品じゃないよな?
どういう原理で……いや、いいや。
詳しく説明されてもわからないから。
勝負はアイギスの勝利。
アイギス、クチバシでの突っつきを寸止めしたのは偉いぞ。
巨大な蚕も、素直に負けを認められるのは偉い。
次、頑張るように。
アイギスは子供たちの前でウイニング飛行をして、ご満悦だった。
子供たちも素直に感心しているようだ。
「属性的に相性の悪い影渡りをあそこまで使いこなすなんて……私も頑張ろう」
ナート、練習しないように。
影渡りって、簡単にできるものじゃ……クロの子供たちやザブトンの子供たちがヒョイヒョイやってる。
簡単なのかな?
ハクレンによれば、それほど難しくないらしいが……まあ、俺には無理だろう。
ただ、影渡りは地面に寝転がるのも同然だから汚れるそうだ。
そうか。
アイギス、風呂に入ろうな。
アイギスはそれほど風呂を嫌わない。
水浴びは好きだし、熱いお湯も問題ない。
温泉にだって入れる。
ただ、長時間、水に触れていると水温を上げてしまうことがある。
リラックスし過ぎたら、そうなってしまうみたいだ。
注意していれば大丈夫なのだろうが……水浴びに夢中になっていると、忘れるようだ。
少し前、風呂に水を張ったところにアイギスが入り、熱湯風呂にしたことがあった。
あのときは、薄めるのに苦労した。
なのでアイギス専用の風呂、水浴び場を作った。
一メートル四方の広さで、十センチぐらいの深さの木製の風呂だ。
設置場を中庭にしたら、鶏たちに乗っ取られてしまった。
鶏が群れているところにアイギスが突入できるわけもなく、二つ目の風呂を製作。
二つ目は、高台も一緒に作った。
三メートルの高さだ。
これなら鶏に乗っ取られることはなく、アイギスがゆっくりと使えるだろう。
鷲も見守れるしな。
水を張るために、専用のポンプを設置しなければならないのはちょっと面倒だったが、悪くないと思う。
「高台から、熱湯を振り撒かれることがあるのはちょっと……」
鬼人族メイドたちによって、アイギスの使用は禁止となった。
ちなみに三メートルの高さをどうやって克服したか知らないが、鶏が高台に登っていた。
なので、アイギスの使用は禁止だが、鶏の使用はOKとなった。
現在、アイギスは俺が使っている風呂で水浴び、入浴をしている。
「お風呂の水を温める手間が省け、冷ます手間がかかるだけです」
風呂の水は獣人族の女の子たちや、子供たちが交代で魔法を使って温めているのだが、慣れが出始めていたので冷やす魔法に切り替えられたのはいいことなのだそうだ。
一番風呂をアイギスが取っている形になることを気にする者もいたが、俺はとくに気にしない。
お湯を汚しているわけじゃないしな。
湯船に入る前に、洗い場で水浴びをするアイギスを俺は信用している。
アイギスが風呂から出ると、日も暮れて夕食。
アイギスは俺と一緒のテーブルで食べる。
クチバシで丁寧に。
ただ、さすがにクチバシだけで食べることに限界があるのか、足も使っている。
そして、手……じゃなくて羽を使うこともある。
器用なことだ。
アイギスの中に小さい人が入っていても、俺は驚かない。
食事を終えたアイギスは、寝室に向かう。
アイギス用の小屋があるのだが、最近はそこでは寝ない。
屋敷の屋根の上にアイギスが自分で作った巣がある。
よくある鳥の巣だ。
正直、アイギスなら小さい小屋を自分で作っても不思議じゃないと思っていたので、普通の鳥の巣に驚いた。
そこで寝るようになったのだが、常にいるわけではない。
雨の日なんかは、絶対にいない。
雨の日の翌日も。
いないときは、俺の布団の中にいる。
……布団の中は危ないから、潜り込まないように。
鷲がいるからわかるけど。
あと、鳥なんだから仰向けはどうなんだろうな。
いや、寝てていいんだぞ。
そのまま、そのままー。
そう思ったのに、鬼人族メイドの一人がアイギスを優しく抱き上げて、部屋の外にいるクロの背中にそっと置いた。
冬だったら、コタツの中にずっといられたのにな。
鷲もアイギスを追いかけて、部屋から出ていく。
俺がクロ、アイギス、鷲にお休みの挨拶をしたら、鬼人族メイドの一人が扉を閉めた。
私信。
寝違えで、右肩甲骨の少し下ぐらいが引き攣った感じになりました。
かなり痛かったです。(現在は元通りです)
その際、苦痛から「ぐぎょっ」なる声を発し、痛みに悶えながらも人間、意識していないと変な声がでるのだなぁと感心しました。
シナリオで「ぐぎょっ」と書いても、苦痛の悲鳴とは思われまい。