王都での生活 ティゼル編 食事会のあと
ゴロウン商会の問題が解決。
よかったよかった。
お父さん、マイケルのおじさんと仲がいいからね。
まあ、契約の詰めが甘いというか口約束がそのまま進んだのが問題なのだけど……
それに、ゴロウン商会というか魔王国は現金重視だから、信用での取引に関しては取り決めが甘いのよね。
お父さんがこの辺りを突っ込まないのは、何か考えがあるに違いないわ。
どんな考えか、楽しみ。
話し合いが終わったので、今はそれぞれが談笑中。
アサとミヨが情報交換をしている。
今回の話し合いで、ミヨには損をさせちゃうから何かで償わないとね。
お父さんにミヨのことを褒めた手紙を出しておこう。
あっと、リドリー。
代表さんがランダンのおじさんのところに向かったよ。
代表さん、候補者が二人減ることをまだ知らないんじゃないかな?
止めないとまずくない?
リドリーがトップに立つためなら黙っているのが一番だと思うけど、ダルフォン商会もダメージを負う可能性が高いからね。
私が村やお父さんを大事にしているように、リドリーもダルフォン商会を大事にしているみたいだから止めるように指摘する。
あれ?
代表さんを止めたの、ホウ姉さんだ。
「レグ大臣」
「貴方から娘の立場を借りているコネギットとして、忠告するわ。
今回の件、ダルフォン商会に損はないはず。
これ以上、関わる必要はないでしょう」
「たしかに損はありません。
しかし、こちらにも面子があります。
こちらに損がないからと、すべてが頭ごなしでは立つ瀬がありません。
それに、補填の話でこちらに影響があるかもしれないでしょう」
「あら、ダルフォン商会はいつも頭ごなしで他の商会を指導していたと思いますが?」
「全て魔王国のためです」
「では、今回の件も魔王国のためです。
それで納得しなさい」
「…………村長とは何者なのですか?」
「魔王国にダンジョンイモをもたらした人です。
大恩人と覚えておけば問題ありません」
「ダンジョンイモを……それで魔王さままでが」
ホウ姉さんと代表さんが会話して、リドリーが加われないでいるところに、ランダンのおじさんとマイケルのおじさんが加わった。
まずはランダンのおじさんが代表さんに。
「デリンテッド代表。
先ほどの話し合いでは、こちらのマイケルの言葉が荒かった。
そのことを謝罪したいそうだ」
そう言って、マイケルのおじさんが前に。
「話し合いに熱が入り、つい言葉を荒げてしまった。
申し訳ない」
代表さんは言いたいことはあるだろうけど、ランダンのおじさんを介しての謝罪だから受け入れるしかない。
「お気になさらずに。
商人として、お互い常に冷静でありたいですね」
だから、これぐらいの嫌味は含ませる。
まあ、この程度の嫌味ならマイケルのおじさんは流すだろう。
それより、リドリー。
そろそろ代表さんに候補者が二人減ることを教えないと、ランダンのおじさんから聞くことになっちゃうよ。
そうそう、代表さんの横にならんで……肘打ち?
しかも、鳩尾に?
ま、まあ、多少強引でも仕方がないね。
代表さんを守るためだもの。
家の外では、グラッツのおじさんたちのバーベキューがまだ続いている。
魔王のおじさんと学園長が、そちらに足を運んだ。
おおっ、グラッツのおじさんの部下たちのテンションが上がってる。
奥のほうにいる生徒たちも。
さすがのカリスマ。
この辺りは、お父さんでも敵わない部分だと思う。
お父さん、あまり前に出ないから。
でも、前に出なくていい体制なのよね。
だから張り合わなくても問題なし。
負け惜しみじゃないわよ。
バーベキュー会場の一部では、アースとメットーラによってトンカツが揚げられている。
余った分の処分とも言う。
それでも、大人気だ。
ご飯は品切れだから、パンに挟んで食べているのね。
キャベツも挟んだほうが……あ、ビーゼルのおじさんがキャベツを持ってきた。
でも、持ち帰りを注文するのはどうなのかな。
余った分、それほどないよ。
え?
料理人としてアサを貸してほしい?
王城で他国の偉い人を接待しなきゃいけない?
アサの料理の腕は、温泉地で知ってると。
私はかまわないけど……一応、アル兄やウル姉に確認しないと返事できないかな。
あと、本人にも。
わかった、私が確認してきてあげる。
「駄目」
「駄目」
アル兄、ウル姉の返事。
あれー?
別にいいと思うけど?
「いや、アサを貸すのはかまわないけど、そうしたらティゼルは学園から出られないぞ」
「え?」
「え?
じゃない。
学園の外に行くのは、アサに縛られていることが条件なんだ。
アサがいないなら、そうなるのは当然だろ」
えーっと……
アサ本人は?
「必要とされているのであれば、出向くことを拒否するつもりはありませんが……
ティゼルさまを誰にお預けするかで、揉めるかと」
なるほど。
まあ、私としてはアサを貸さないのもありなのだけど、今回の件でビーゼルのおじさんは頑張ってくれたし、なんとかしてあげたいところ。
うーん。
数日後。
アサは料理人として王城に出向した。
誰を接待するのか知らないけど、頑張ってほしい。
そして私は、魔王のおじさんの執務室にいた。
「この書類、私が見たらまずくない?」
「かまわんさ。
それより、その書類をわかりやすくまとめてもらえると……」
「仕方がないわねぇ」
私は魔王のおじさんの仕事を手伝っている。
もちろん、魔王のおじさんに繋がるロープ付きで。