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王都での生活 リドリー編 問題解決

2019/05/30 1:00ぐらい 誤字脱字修正。言い回し修正。


 ダルフォン商会が担っている食糧生産と価格調整。


 食糧生産は、常に生産を推し進めてきました。


 ご存知の通り、長く魔王国は食糧不足だったからです。


 さらには西方の人間の国との戦争があり、食糧はいくらあっても足りない状態が続いていました。


 ですが、食糧の値段は大きく跳ね上がることはありません。


 ダルフォン商会が生産地から高値で買い取り、安値での販売を続けたからです。


 もちろん、損です。


 大赤字です。


 ですが、その赤字分は通行税、土地税などの免除、一部商品の専売によって補填ほてんされてきました。



 魔王国の食糧難が解消されたのは、ダンジョンイモを使った畑の再生が本格化した数年前から。


 市場に食糧が溢れる事態になりましたが、やはり値段が大きく崩れることはありませんでした。


 ダルフォン商会が高値で買い続けたからです。


 ダルフォン商会が買い続けた食糧は、そのまま魔王国に売却されます。


 もちろん、ダルフォン商会もただ食糧を買って売るだけの仲買商会ではありません。


 必要とされる作物を調べ、各地の領主にそれとなく指導して生産量を調整してきました。


 価格も、暴利をむさぼるわけではなく、魔王国のためと常識的な価格設定になっています。


 これがダルフォン商会の担ってきた魔王国での食糧生産と価格調整です。



 今回、問題になっているのはシャシャートの街、五村ごのむらの周辺に大きな影響力を持つゴロウン商会の存在です。


 ゴロウン商会は、ダルフォン商会よりも高値で作物を買っています。


 こうなると、当然ながらシャシャートの街、五村での作物の値段が上がります。


 これだけなら、一つの地域の問題なのですが、シャシャートの街は魔王都から各地へ行くための中継点。


 そこで値が動くと、魔王国全体に影響が出てしまうのです。


 ですので、ゴロウン商会にダルフォン商会と足並みを揃えるように交渉をしているのですが、思わしくありません。


 このまま放置すると、食糧相場に問題が発生し、さらには各地の食糧生産量にも影響がでると予想されます。


 これがダルフォン商会が抱えている、問題です。



「簡単に言えば、ゴロウン商会が高値で作物を買いまくるから、全体に影響が出て困る。

 作物を買うのはいいから、ダルフォン商会が推奨している値段にしてよー、ってことよね?」


 私がわかりやすく三十分ぐらい掛けて食事会に参加した面々に説明したことを、ティゼルさまがさらに簡単にまとめてくれました。


 ありがとうと言うべきなのでしょうか。


「どうして、ゴロウン商会は高値で買うのだ?

 安値で買ったほうが儲かるだろう?」


 魔王さまの疑問。


「作物の売り手もゴロウン商会だからです」


 ゴロウン商会のマイケル会頭が返事しました。


 なるほど、そうだったのですね。


 確かに、それだとゴロウン商会が買取価格を下げることに同意し難いですね。


 売り手である儲けが減るわけですから。


 いや、これはゴロウン商会による攻撃では?


 売り手と買い手を担うことで、値段は自由に操作できるわけなのだから……


 あれ?


 なぜここにマイケル会頭が?


 彼ほどの重要人物が王都に来たなら、即座に連絡が届くはず。


 私は聞いていない。


「さきほど、クローム伯の転移魔法で来たのだが……ここは?」


 私の疑問に答えてくれたのは、ダルフォン商会の代表、デリンテッド。


 見た目は三十代の男性ですが、年齢は百五十を超えている魔族です。


「リドリー、これはお前の仕業か?」


 絶対にそんなことはありません。


 首を全力で左右に振ります。


 私の仕業ではありません。



「とりあえず、座りましょう」


 見覚えのない幼女メイドが、マイケル会頭、デリンテッド代表に椅子を勧めます。


 あれ?


 幼女メイドも座るのですか?


 えーっと……誰?


 私の疑問を感じ取ったわけではないでしょうが、自己紹介を始めてくれました。


「シャシャートの街、イフルス代官の筆頭秘書をつとめさせていただいていますミヨと申します」


 イフルス代官は、有名人です。


 どこに行っても有能と評価される代官で、各地から切望される方です。


 シャシャートの街に就任後は、シャシャートの街が爆発的に発展したことを考えれば、その優秀さがわかるというもの。


 そのイフルス代官の筆頭秘書。


 初対面だったのは私と魔王さまの奥さまだけのようですし、相当な実力者なのかもしれません。


 ……


「ティゼルさまもミヨさまを知っているのですか?」


 私はティゼルさまに聞きます。


 ミヨさまが席に座る前、ティゼルさまとハイタッチをしていたので、そうだと思うのですが……


「村の住人だからね」


「えーっと……ミヨさまは五村の住人と?」


 私の質問に、ミヨさまが答えてくれました。


「私の本来の立場は、村長宅の使用人の一人です。

 そこにいるアサの同僚です」


 な、なるほど。


「ただ、今はイフルス代官の代わりに来ています。

 それに相応しい扱いを希望します」


「わ、わかりました。

 ミヨさま」




 私がダルフォン商会が抱えている問題を説明しているあいだに、クローム伯がシャシャートの街に移動して、ゴロウン商会のマイケル会頭と、ダルフォン商会のデリンテッド代表、それとイフルス代官の筆頭秘書ミヨさまを連れてきたようです。


 そして、三人の他には食事会をしていた面々。


 魔王さま、魔王さまの奥さま、クローム伯、レグ大臣、ランダンさま、ティゼルさま、アルフレートさま、ウルザさま、私。


 どうして、私はここにいるのでしょう?


 何かを言って、注目されるのは困ります。


 だから沈黙です。


 できるだけ沈黙し、この場をやり過ごすのです。


 デリンテッド代表、私を睨まないで。


 食糧生産と価格調整の問題を訴えたのは、私ではありません。


 ええ、違うのです。


 貴方を蹴落とそうとか、そういったつもりは欠片もありませんから。


 私の心情を無視して、魔王さまが話を進めました。


「とりあえず……マイケル。

 売り手と買い手が同じであれば、値段はどうとでもなるであろう?

 協調できない理由はなんだ?」


 魔王さまの質問にマイケル会頭は一切動じず、答えます。


「極秘案件が絡みます」


 答えになってない。


 答えになってないですよ。


 さすがにそれはまずいのではないですか?


 ライバル商会だとしても、さすがにその返事は不敬罪に当たるのでは?


「だったら仕方がないか」


 魔王さま?


 なぜ引き下がるのですか?


「魔王さま。

 仕方がないのは確かですが、何か手を打たねばなりません」


 クローム伯の指摘。


 その通りですが、どうして仕方がないのは確かなのですか?


「うむ。

 そうか。

 では……この場にいる者に命じる。

 ここでの内容は、他言無用。

 結果だけを持ち帰れ」


 魔王さまがそう宣言しました。


 つまり、極秘案件を語れということ。


 そして、他言した場合は問答無用で消される話。


 逃げたいです。


 でも駄目でした。


 マイケル会頭が頷いて極秘案件を話します。


「ゴロウン商会が管理している畑の作物なのですが、全て村長の所有物なのです」


 ……すみません、意味がわかりません?


 村長ってどこの村長でしょうか?


「ゴロウン商会と村長の取引は金銭でやり取りされますが、金貨、銀貨の流出が激しく問題になりました。

 その対策の一つとして、畑の作物などでの物納にしているのです」


 畑の作物を物納にしている?


 いや、それよりも金貨、銀貨の流出が激しくて問題になる取引をゴロウン商会がしていると?


 ミヨさまが続きました。


「つまり、ゴロウン商会が所有するシャシャートの街、五村の近郊の畑の作物の売り上げを全て村長への支払いに当てています。

 問題なのは、販売価格は決められていないことです」


 ミヨさまの言葉に、ランダンさまが確認します。


「販売価格が下がると、ゴロウン商会が不足分を補填しなければならないということか?」


 だから、ゴロウン商会はダルフォン商会の値下げには応じられないということでしょうか?


「そうではありません」


 ミヨさまは否定しました。


「畑の作物の権利は全て村長が持っています。

 ですので、今年の値が下がって損をするのは村長です」


 なるほど、ではどうしてマイケル会頭は値下げに応じないのでしょうか?


「ゴロウン商会が損をしないなら、値下げに応じてもかまわないのではないかと思うのだが?」


 私の思ったことを、デリンテッド代表が言ってくれました。


 それに対してマイケル会頭の返事が衝撃的でした。


「黙れ、ぶっ殺すぞ」


 …………


 魔王国でナンバー2の商会を率いる会頭の言葉とは思えません。


 なんて野蛮な。


 しかも、周囲にいるメンバーをわかっていないのでしょうか?


 魔王さまやその奥さまがいるのですよ?


 荒い言葉使いはやめたほうがいいと思うのですが……


「ダルフォン商会の代表。

 すまないが、少し口を閉じていてくれ。

 これはとても重要な案件なのだ。

 それを私は理解した」


 魔王さまは、マイケル会頭を注意せずにデリンテッド代表に下がるように言いました。


 どこが重要な案件なのでしょう?


 意味がわかりません。


 マイケル会頭は魔王さまに訴えます。


「端的に申し上げて、ゴロウン商会としては値下げに応じて村長に損をさせるわけにはいきません。

 私どもの都合で物納にしてもらい、それで損をさせることなどあってはならないのです」


「村長が損をしないように、契約を変更することはできないのか?」


「私からはそんなことは言えませんし、言ったとしても応じてもらえないでしょう。

 そのまま損を抱える方です」


「無理か?」


 魔王さまは、アルフレートさまを見ます。


「父なら、損を出しても契約は契約だと言うと思う。

 契約の変更には応じないんじゃないかな」


 取引相手はアルフレートさまのお父さま?


 つまり、村長とは五村の村長のこと?


 損を引き受ける相手なら、押し付ければいいのでは?


 そう言いたいのですが、先ほどのデリンテッド代表を思い出して我慢します。


「それに、お父さんは魔王国が混乱するのは望まないと思うわ」


 ウルザさまがそう言って、ミヨさまを見ます。


 ミヨさまは、待ってましたと続けました。


「私もそう思います。

 そこで提案なのですが……食糧相場では村長に損をしてもらいましょう。

 ただ、損させた分の補填をお願いします」


 ミヨさまの提案に、魔王さまが少し考えます。


「大丈夫なのか?」


 魔王さまの質問に、ミヨさまは胸を張って答えます。


「この件に関しては、私が村長に謝罪します。

 大丈夫です。

 私がシャシャートの街で孤軍奮闘させられた体験談を語れば、村長も納得してくれるはずです」


「わかった。

 任せよう。

 補填に関しては……」


「細部に関してはランダンさま、レグ大臣と詰めさせていただきます。

 ということで、マイケルさま」


 ミヨさまがマイケル会頭を促しました。


「ゴロウン商会はダルフォン商会と足並みを揃え、魔王国の発展に寄与したく思います」


 こうして、ゴロウン商会の作物の買い付け価格が下がることになりました。


 よかった。


 でも、長々と交渉していたデリンテッド代表が少し落ち込んでいます。


 えーっと。


 ダルフォン商会は無事なのだから、喜びましょう。






今回の話の要約

ゴロウン商会「値段が下がったら、村長に損をさせる。値下げ無理」

魔王「村長に損をさせるって、魔王国滅ぼす気か?」

アルフレート「父さん、損してもそれほど気にしないと思うよ」

ウルザ「そうそう、魔王国を混乱させるほうを気にする」

ミヨ「私が過去の件を持ち出して村長に謝るから値下げ決行。でも、損させた分は補填しようね?」



ゴロウン商会は「村長」のことを言えないので、ダルフォン商会との話が進まなかったのです。

マイケルさんはマイケルさんで、魔王さまへの直訴を考えていました。(野球に来た時とかに)


まあ、村長がマイケルさんの言葉にのって先物取引したような感じなので、マイケルさんとしては暴言が飛び出すぐらいには必死でした。



感想、ありがとうございます。

返事できていませんが、ちゃんと読んでます。


誤字脱字の指摘、ありがとうございます。

ご迷惑をおかけしてすみません。

助かってます。

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― 新着の感想 ―
ここのマイケルさん、かっこいいよね。
日本は江戸時代初期から穀物の先物取引をしてましたよ。 それでハンギングネックする人も出れば蔵を建てる人も出る。 各藩の会計担当者は常にタイミング観て売却を計ってました。特に関東以北の冷害や火山活動の気…
マイケルさん側からの提案なのに、マイケルさん側からの事情で村長に損をさせるなんて事が起きたら……まぁ周りが黙ってないわな(苦笑) 原因の『直接排除』くらいされそうと警戒するのは当然 実際に船一隻沈めた…
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