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チェスのコマと討伐成果 49日目


 酒スライムを揉み揉みしながら、俺はため池の近くでぼーっとする。


 俺の横にいるのは、クロの子供の一頭、マサユキ。


 俺と一緒に遠くを見ている。


 ポンドタートルたちが、大丈夫かという顔で俺たちをみてくる。


 ふふ。


 大丈夫さ。


 そう、大丈夫。


 酒スライムを揉んで癒されてるし、マサユキもいるから。


 あ、酒スライムは聖女セレスに、マサユキはマサユキのパートナーたちに連れていかれてしまった。


 ……


 そうだ、神様の像を彫ろう。




 俺が彫った神様の像は、始祖さんがお金や宝石を置いて持っていくので、十体ぐらい彫ったところでチェスのコマに切り替えた。


 普通のコマを四セット。


 変わりコマとして、神様バージョンも作成。


 こういった変わりコマは、チェスのコマとしてわかりにくかったりするのを解消する工夫として、台座に差をつけた。


 チェスはキング、クイーン、ビショップ、ナイト、ルーク、ポーンの六種類しかないから、それほど難しくなかった。


 うん、いいできだ。


 でも、さすがにこれで勝負するのは罰当たりかな?


 飾るだけにしよう。


 いや、始祖さん。


 これは非売品。


 額の問題じゃないんだ。


 コーリン教の秘宝っぽい物を持ち出されても困る。



 村でチェスといえばクロヨンとマルビットなので、クロバージョンと天使バージョンも作ってみた。


 クロがキングで、ユキがクイーン。


 これらも台座で差をつけているが、わかりやすく冠を載せておく。


 天使バージョンのキングはティアにしようかと思ったがマルビットで。


 クイーンをルィンシァにした。


 なかなか、かっこいい。


 ザブトンがやってきて、ザブトンたちのバージョンもほしいとジェスチャーするのでザブトンバージョンを作る。


 ザブトンの子供たちは種類が豊富なので配役には困らない。


 キングはザブトンとして、クイーンは……アラクネのアラコにしよう。


 こうして作業に没頭していたら、五村ごのむらにガルフたちが戻ってきたとの報告を受けた。




 ガルフたちによるウォーベア討伐は大成功。


 十日間の討伐期間で、倒したウォーベアの数は二十七頭。


 その他、魔物、魔獣は数えきれず。


 ガルフによると異常な密集具合で、放置していたら五村や周辺の村、さらにはシャシャートの街などに被害があったかもしれなかったそうだ。


 運がよかった。


「予兆がトレントによる被害だけであったからな、油断していた」


 ヨウコが安堵している。


 五村の防衛に不安はないが、周辺の村には不安がある。


 さらには、周囲の村には五村やシャシャートの街での消費を見込んで、牛や豚、にわとりの畜産を勧めていた。


 それらには少なくない額が投資されているのだが、危うく駄目になるところだったからな。


 まあ、村人たちに被害がないのが一番だ。


「用心のため、冒険者たちに各村を回らせよう」


 ヨウコの提案に俺は賛成。


 反対する理由がない。


「それと、今回討伐された魔物、魔獣だが……」


「なにかあるのか?」


「いや、商人たちが販売を待ってる」


 ガルフたちによって討伐された魔物、魔獣は冒険者たちによって五村に輸送され、解体されている。


 まあ、商人なら見逃さないか。


「好きにしたらいいと思うが……どうして俺に確認するんだ?」


「本来なら、獲物の権利は倒した者にあるのだが、今回は村長の命令での討伐だ。

 しかも、獲物単位で報酬を約束している。

 こういった場合は、獲物の権利は村長にある」


「命令というか、お願いな」


「一緒だ」


「わかった。

 ガルフたちに必要な部位がないか確認して、余った部分を販売しよう」


「助かる。

 すでにオークションの準備が始まっていたからな」


「確認、急ぐよ」



 討伐から戻ったガルフたちは、酒肉ニーズで宴会をしていた。


 誰も大きな怪我はしていないようだが……


 青銅騎士が落ち込んでいるな。


 どうしたんだ?


 ウッドキラーに三回も騙されたと……


 えーっと、駄目だ。


 どうなぐさめていいかわからん。


 誰か。


「未熟者、油断するからだ。

 トレントと違い、よく見ればわかるであろうに」


 白銀騎士、追い討ちをしてどうする。


 いや、確かに慰めても成長にならないかもしれないが……


 まあ、武人のことは武人に任せよう。



 ガルフたちに確認。


 必要な部位はないらしい。


 俺が約束した討伐報酬で十分だそうだ。


 俺に同行していたヨウコの部下が、それを伝えるために戻った。


 商人たちの圧力は、すごいのかな?


 ヨウコには感謝だ。


 俺は宴会に参加し、討伐の様子を聞く。



 ガルフとダガによれば、ピリカとチェルシーがかなり強くなっているらしい。


 とくにピリカは、大樹の村の武闘会に参加させたいぐらいだそうだ。


 ちなみに戦士の部。


 騎士の部はまだ早いらしい。


 本人が希望するなら、別に参加しても問題ないぞ。


 チェルシーは……本人が拒否している。


 前は一般の部の優勝争いまでしたが、ウルザに一撃で沈められたのだったな。


 ウルザはいま不在だぞ。


 それでも不参加と。


 それよりも、五村で武闘会の開催を希望するか。


 自主的に開かれる小さい大会はあるが、俺主催の大きい武闘会はないからと。


 かまわないぞ。


 ヨウコに言っておこう。


 あ、でもヨウコは怒るかな。


 今、地下商店通りの開発と、周辺の村への畜産推進、学園建設にレース場建設が進んでいるからな。


 全部をヨウコが抱えているわけじゃないから大丈夫だと思うが……


 ヨウコに言うのは酒とさかなを差し入れたあとにしよう。


 あと、安請け合いは駄目。


 反省。




 翌日。


 ヨウコから怒られることはなかった。


「武闘会はこちらから提案しようと思っていたところだ」


「そうなのか?」


「うむ、シャシャートの街では月単位で武闘会をしているから、そちらに行くと読んでいたのだが甘かった。

 全部、ガルフが悪い」


「ガルフが?」


「武神ガルフを倒そうと、腕自慢がこの街に集まって野良のら試合を挑むものだから、各所からクレームが出ているのだ」


「その対策として、武闘会か」


「そうだ。

 シャシャートの街ほど派手にはできないが、発散する場を作れば治まるだろう。

 ガルフも野良試合を断る口実ができる」


「勝負は武闘会でと言えばいいと。

 なるほど」


「あと、純粋に五村で武闘会を開いてほしいという希望者が多い。

 シャシャートの街への対抗心だな」


「対抗心って……」


「馬鹿にはできんぞ。

 将来的には、シャシャートの街と合同で何かするのもいいかもしれない。

 まあ、五年、十年先の話だろうが」


 五村とシャシャートの街の合同イベント。


 五村は、問題ないだろう。


 シャシャートの街は……イフルス代官の仕事を手伝っているミヨがいるから、なんとかなるか?


 となれば、現実味を帯びる。


 五村とシャシャートの街の合同イベント。


 何をするかは全然予想がつかないが……


「悪くないと思う」


「であろう。

 とりあえず、武闘会の開催には賛成だ。

 全面的に進めたい」


「わかった。

 開催はいつぐらいを目指す?

 来年か?

 それとも再来年ぐらいか?」


「来月」


「……え?」


「ほんとうに希望者が多くて……」


 チェルシーが俺に言ったのって、希望者の声の代弁だったのかな?






次回からアルフレートの話に戻ります。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] シソさんはどうやって村長が神像彫ってるのがわかるのですか?(´・ω・`)
[良い点] 酒肉ニーズ、いいなぁ 料理ってのは、人生豊かにしてくれる
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