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森での騒動



 村の中で魔法が使えないのは、俺と獣人の男の子だけだという事実に打ちのめされた。


「え?

 マジで?」


「ええ」


 獣人の男の子は、俺の感覚で幼稚園児。


 魔法を使う使えないの前に、学んでない年齢。


 他の獣人の女性陣が使っているので、成長すれば使えるようになるだろう。


 実質、使えないのは俺だけ。


「勉強します?」


「うぐっ……」


 前に魔法の実力は無いとルーに断言された。


 一応、十年単位で努力すれば小さな火ぐらいは起こせるとも言っていたが……


「魔法ってのは使えるのが普通なのか?」


「どうでしょう。

 天使族や吸血鬼は全員が使えます」


 俺の疑問に、ティアが答えてくれる。


「ハイエルフも、ほとんどの人が魔法を使いますね。

 使えないと森での生活は苦しいですから」


 リアの答えに頷く。


 確かに魔法がなければ、森で生活するのは大変だろう。


「鬼人族は、火と水の魔法との相性は良い者が多いですね」


「私たちリザードマンは、水の魔法を得意とします。

 逆に火は苦手ですから、両方を使いこなせる鬼人族が羨ましい」


「いえいえ、水の魔法に関しては敵いませんから、一芸に秀でた方が良いと考えることもあります」


 アンとダガが、それぞれの魔法を褒めあう。


 むう。


 やはり、魔法が使えるのが普通なのだろうか。


「あ、あの、獣人は魔法を得意とする人は少ないと聞いています」


「セナ達は全員、使えているのに?」


「村の環境が環境でしたから、使えないと困るというか使えるように鍛えられます」


「ハイエルフたちと同じか」


 必要に迫られてか。


 ……


 まあ、俺には【万能農具】があるからな。


 あれが魔法みたいなものか。


 無い物を欲しがるのは良くない。


 できることを頑張ろう。



 後日、クロとザブトンが魔法を使っているのを見た。


 ……


 蜂も使っている。


 ……


 スライム……お前もか。


 俺の友は牛と鶏だ。


 裏切らないよな。


 頼んだぞ。


 頼んだからな。


 暇な時、ちょっとずつでも魔法の勉強をしようと思った。



 後日、人間だと十人に一人ぐらいが素質を持っていて、百人に一人ぐらいが魔法を使う感じと聞いて、少し気が楽になった。


 上を見ず、下を見て安心する小さな自分を実感。


 魔法の勉強、頑張ろう。




 冬直前、森で大きな異変があった。


 村からかなり離れた場所で、大きな爆音が上がったのだ。


 イメージとしてはガス爆発?


 大小の爆発が連続して起こったような感じだ。


 そんな震動と音が村に伝わってきた。


 俺と同様に慌てている者を見て、少し落ち着いた。


「この震動はなんだ?」


「グラップラーベアです」


 グラップラーベア?


 ベアだから、熊をモデルにした魔獣なんだろう。


 ここに来た当初、熊が居るとは思っていたが、これまで遭わなかったので忘れていた。


 しかし、その熊は移動するのにここまで震動を出すのだろうか?


「戦っているのかと」


「戦っている?

 誰と?」


「グラップラーベアがここまで本気を出して戦っているとなるとブラッディバイパーでしょうか。

 冬前ですから、共に冬眠前の食料確保かと」


「なるほど」


 バイパー、蛇ね。


 熊も蛇も大変だ。


 ……


「そのグラップラーベアとブラッディバイパーって、どれぐらいのサイズなんだ?」


「グラップラーベアは五~六メートルぐらいの大きさですね。

 ブラッディバイパーは、直径が一メートルぐらいで長さが二十メートルぐらいが平均だったと思います」


 俺の質問にリアが応えていると、グランマリアが戻ってきた。


「北でグラップラーベアとブラッディバイパーが戦っています。

 どうしますか?」


 どうすると言われても……


「グラップラーベアとブラッディバイパーって、美味いのか?」


「え?

 ……私は食べたことがありません」


 グランマリアが俺の質問に答えた後、リアを尋ねるように見た。


「私も食べたことはありませんが……両者が食料として相手を攻撃していることを考えれば、食べられるとは思います」


 リアの言葉に、俺は頷く。


「なるほど。

 食べられるのか。

 なら、狩ろうか。

 村に来て被害を出されても困るし」


 俺は【万能農具】を出して、騒ぎのある方を見る。


 遠いな。


「グランマリア。

 俺を二匹が居る場所に運べるか?」


「それは可能ですが……私と二人で行くのですか?」


「そうだけど……何か問題があるのか?」


「い、いえ。

 承知しました。

 精一杯、努めさせていただきます」


「リアたちは歩きで悪いんだけど、何人かで来てもらえるかな」


「わかりました。

 急ぎます」


「急がなくて良いよ。

 獲物を運ぶだけだからね」


「獲物を運ぶだけ?」


「ああ。

 狩った獲物をここまで運ばないと駄目だろ。

 一匹ならともかく、二匹だとさすがに厳しいからさ」


「……そ、そうですね」


「じゃあ、グランマリア。

 頼む」


「はい」


 俺はグランマリアに後ろから羽交い絞めにされるような格好で、空に持ち上げられ、現地に向かった。


 現場では怪獣決戦のような様子だったが、【万能農具】で首を狩って終わった。


【万能農具】様様だ。




「周辺の森がグチャグチャだな」


「そうですね」


「森にしておくか」


 自然は大事。


 リアたちが来るまで、俺は地面を耕しておいた。


 俺の耕す速度も速くなっているのだろうか。


 リアたちが到着する前に終わってしまった。


「じゃあ、俺は先にでっかい方のクマを持って帰るから、リアたちが来たら蛇の方をよろしく」


「は、はい。

 承知しました」


 俺はグランマリアに残った蛇の見張りを頼み、先に帰ることにした。


 方向は……少し困ったところで、クーデルとクロたちが来てくれた。


 クーデルはグランマリアと共に残し、クロたちに道案内を任せた。




「クーデル。

 グラップラーベアとブラッディバイパーって、簡単に倒せる魔物でしたっけ?」


「私の記憶だと違います」


「ですよね」


「簡単に倒していたのですか?」


「あっと言う間でした」


「……さすがはティア様の夫ですね」


「それぐらいでなければ、あのルールーシーが懐いたりはしませんか」




 俺は【万能農具】で引っ掛けて運んだので疲れは無かったが、距離があったので村に辿りついたのは二日後になってしまった。


 リアたちには申し訳無いことを頼んでしまったのかもしれない。


 俺は村に到着後、リアたちを手伝うために引き返した。


 考えれば、細かく切った後でグランマリアたちに往復してもらった方が良かったのかな?




 クマ肉。


 食べてみた。


 悪くない。


 悪くないが……臭味を感じる。


 調味料を大量に消費するが、食べられないことは無い。



 ヘビ肉。


 最初の一口目に度胸が必要だったが、食べてみれば悪くない。


 あっさりしていた。


 知らなければ、鳥肉と勘違いしたかもしれない。


 鳥肉っぽかったので、カラアゲにしてみた。


 村中で奪い合いになった。



「次はヘビだけで良いな」


「グラップラーベアの毛皮は、ザブトン殿も喜んでいたのでそう言わずに」


「お肉もクロさんたちに好評ですから」


 なぜか周囲にクマも狩るように強く勧められた。


 まあ、出会ったら狩るけど。




 リザードマンの卵が孵った。


 孵ったばかりの子供たちが元気に泳いでいる。


 ……


 冬前に孵るのって、生物的にどうなんだ?


 そういや、リザードマンって冬眠とかするのかな?


 しないそうです。


 冬前に孵るのは、強者の動きが鈍いうちに大きくなるためだそうだ。


 食べ物が入手し難くても、強敵から逃げる方を選ばないといけないハードな環境で生きてきた種族ということなのだろうか。


 ともかく、この村で産まれたからには元気に育ってもらいたい。




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― 新着の感想 ―
[一言] あの時、創造神にお願いさえしていれば……
2022/04/30 10:00 みなづきじゅん
[良い点] 火楽氏のオリジナル魔法は【万能農具】行使による作物創造に、集約されているような気がする。 なので、普通の魔法や魔術が使えないのではないでしょうか。
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