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十七年目の春

ガルフの孫の性別を間違えていました。すみません。修正しました。


 春になった。


 いい天気だ。


 風はまだ冷たいが、日のあたる場所は暖かい。


 ため池で、氷が砕かれる音がする。


 ポンドタートルの、目覚めの運動だろう。


 世界樹ではかいこたちがまゆから出て、元気に葉を食べている。


 食べられるそばから、葉が生えるのは不思議な光景だ。


 ちなみに、目覚めたばかりの蚕に勝負を挑んだフェニックスの雛のアイギスは、敗北に悲しんでいる。


 瞬殺だったな。


 敗因は簡単だぞ。


 冬場の食べ過ぎ。


 そのうえ、寒いからってあまり飛んでなかっただろ?


 うん、かなり丸々としてる。


 わし、アイギスを甘やかすのは駄目だぞ。


 勝負はどうでもいいが、太りすぎはよろしくない。


 ん?


 どうした兵隊蜂?


 女王蜂に同じことを言え?


 確かに一回り……いや、二回りほど大きい女王蜂がいたが……


 あれは、あんな感じに成長する種類じゃないのか?


 違う?


 そうなのか……


 わかった。


 あとで蜂小屋をチェックしにいくから、その時にな。


 言うだけだぞ。


 あまり過度な期待はするなよ。


 でもって、次は……猫たちか。


 俺に文句を言われても困る。


 俺の部屋のコタツを片付けたのはアンだ。


 いや、俺もまだ早いとは思うけどな。


 客間のコタツはまだ無事なはずだぞ。


 そっちに行ったら……そっちはマルビットたちが争っているのか。


 確かにコタツに入れる状態じゃないな。


 わかったから、ひっかくな。


 お前たちのために、どこかの部屋にコタツを設置するようにアンに言っておくよ。


 俺にできるのはそれぐらいだ。


 アンが設置するかどうかはわからないけどな。


 俺に文句を言うために外に出るんだ。


 コタツがない環境に慣れたら、すぐに忘れるだろう。


 冬のあいだコタツにべったりだったクロとユキも、今は元気に外を駆け回っている。


 ……


 必要以上に泥だらけになっているのって、コタツを片付けたアンに対する抗議とかじゃないよな?


 大丈夫だよな?


 屋敷に戻るまえに、水浴びをするか温泉に行くように。




 俺は客間に行き、マルビットたちの争いをみる。


 マルビットたちが争っているのは恒例の帰る帰らないではない。


 まだ冬だと言い張るマルビットとスアルロウ、ラズマリアがコタツにこもり、ルィンシァが三人を引きずりだそうとしている争いだ。


「普段は派閥だなんだで争うのに、こういうときは仲がいいのですよね」


 少し離れた場所に、ローゼマリアをかかえたグランマリアがいた。


 ローゼマリア、大きくなったなぁ。


 今は一歳と少しぐらいだ。


 将来はきっと美人になる。


 そのグランマリアの横にいるのが、だらしない顔で孫を抱えているガルフ。


 去年の夏に生まれたのでまだまだ小さい。


 しかし、ガルフのなかでは最強の武人になるとべた褒めだ。


 女の子だぞ?


 それでいいのか?


 あと、連れ出すときに息子か義娘むすめの許可はとったんだろうな?


 ……


 うん、ガルフ。


 その許可は、部屋で抱っこするのは構わないというレベルの許可だ。


 外に連れ出す許可じゃないと思うぞ。


 ちゃんと厚着させているのは褒めるが……ほら、義娘がやってきた。


 かばってくれ?


 俺も怖いんだが……


 こ、今回だけだぞ。



 ガルフはなんとかなったが、マルビットのほうは進展がない。


 いや、ローゼマリアがきたので、ラズマリアが脱落した。


 ああ、グランマリアがローゼマリアを連れて来たのって、ルィンシァの作戦なのか。


 なるほど。


 となると、残り二人にも……


 あ、力業ちからわざだ。


 二対一だから、ルィンシァのほうが不利と思われるが、コタツによって機動力が封じられているマルビット、スアルロウのほうが不利っぽい。


 うおっ、マルビットがミカンの皮を絞った汁でルィンシァの目を攻撃した。


 ひどいっ!


 しかし、ルィンシァはそれを華麗に避けた。


 そして、そのミカンの汁はスアルロウの目に。


 ……


 仲間割れが起こった。


 ルィンシァの勝利は時間の問題だろう。


 とりあえず、ローゼマリアに見せないように避難だ。



 春なので、ザブトンも起きている。


 そのザブトンは、ザブトンの子供たちと協力して衣装を全力で作っている。


 パレード用ではない。


 アルフレート、ウルザ、ティゼルのための学生服だ。


 三人が通う学園には制服はないのだが、魔王から要望があった。


 三人に、一目ひとめで村の出身者とわかる目印が欲しいと。


 魔王の要望を受けた文官娘衆たちは当初、マントに大樹の村の紋章を描く案を進めた。


 俺も許可していたが、試作品ができた段階で俺が反対した。


 だって、真っ黒なマントに金糸で大樹が刺繍されているんだ。


 かっこいいけど、ちょっと派手だ。


 いや、かなり派手だ。


 しかも、このマント。


 三人だけでなく、村人全員分を用意するという予定。


 みんなでければ恥ずかしくないかもしれないが、俺としては遠慮したい。


 そして、反対したからには何か代案を出す必要があった。


 そこで俺が提案したのが制服案。


 男女の差はできるが、統一したデザインなら問題はないだろう。


 俺は知っている限りのブレザータイプの制服の情報をザブトンに伝えた。


 きっと、アルフレートたちに似合う制服を作ってくれるだろう。



 余談だが、試作品で作られたマントは、パレードのときに俺が着けることになった。


 ……


 パレードのあいだだけだぞ。





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