冬のある日
俺は目を覚ました。
昼食後、寝てしまったようだ。
しかもコタツで。
……
いかんな。
風邪をひいてしまう。
いくら【健康な肉体】があるからって、油断はいけない。
注意しなければ。
というわけで、クロ、ユキ、起きるように。
クロはともかく、ユキが仰向けって珍しいな。
油断しすぎだぞ。
ああ、クロはヨダレがたれてる。
アンにバレたら怒られるぞ。
でもって、ザブトンの子供たち。
コタツの中にみっちり入るのはやめて。
ちょっと怖いから。
……
酒スライム、お前もコタツの中に入っていたのか?
ああ、ザブトンの子供たちに邪魔されて動けなかったのね。
すまなかった。
熱くなってるぞ、冷やしてこい。
外は駄目だぞ、凍るから。
地下が涼しいぞ。
もうコタツの中には……毛玉?
これは、ヒトエか。
拗ねているのか?
どうした?
ヨウコと喧嘩した?
ヨウコがアイギスを褒めて、ヒトエを褒めない?
ああ、魚の食べ方か。
いや、アイギスのは名人芸というか、アイギスにしかできない食べ方だからな。
お前はまだ子供なんだから、気にせずに食べていいんだぞ。
わかった、ヨウコには俺から言っておいてやる。
それでいいか?
じゃあ、コタツの中からでるように。
次からは、潜り込まずに顔はだすんだぞ。
でもって、ザブトンの子供たちが出たスペースに潜り込む姉猫と子猫たち。
追い出すのが遅いって、俺に文句を言うのはどうなのかな?
魔王がいないからって、荒れないように。
ん?
アイギスと鷲もきたのか。
あ、こらヒトエ、アイギスに当たらない。
アイギス、高い場所に避難だ。
鷲、待て!
アイギスを攻撃されて怒る気持ちはわかるが、待て。
ヒトエを攻撃すると、ヨウコが怒る。
うん、わかる。
ヒトエが悪い。
しかし、子供のことになると道理がひっこむのが親だ。
そう、むずかしいんだ。
まあ、事情を詳しく説明すれば、ヨウコならヒトエを叱ると思うけどな。
俺はヒトエを抱え、食堂に。
甘い物でも食べるか?
だったら人の姿に……なったな。
よしよし。
ちょっと待ってろ。
……
わかってる。
妖精女王の分も用意するから、ヒトエを頼むぞ。
甘い物……善哉の作り置きがあるな。
これでいいか。
ヒトエ、妖精女王、モチはいくつだ?
ははは、そんなに食べられるのか?
わかったわかった。
ただ、ヒトエは小さく切ったモチだからな。
大きいのは喉に詰まる危険性がある。
俺は火鉢でモチを焼きつつ、善哉の追加を作る。
すぐに足りなくなるだろうから。
予想通り、モチを焼く匂いにつられ、グランマリアがやってきた。
クーデル、コローネの調子はどうだ?
大きい問題はなし?
小さい問題はあるんだな。
ああ、味覚の変化ね。
できるだけ希望通りにしてやってくれ。
善哉は……大丈夫ね。
了解、二人にも持っていってくれるか?
すまない。
俺もあとで様子を見にいくから。
まずはヒトエと妖精女王の分の善哉。
モチも希望通りの数。
次にグランマリア、クーデル、コローネの善哉を……姉猫、子猫たちが走っていった。
魔王が来たようだ。
じゃあ、魔王とビーゼルの分も用意するか。
はいはい。
マルビット、ルィンシァ、スアルロウの分もね。
見回り、ご苦労さま。
問題は?
なしね。
ラズマリアはどうした?
見回り中に仕留めた獲物を、ハイエルフたちのところに持っていってる?
じゃあ、すぐにくるな。
ラズマリアの分も用意しよう。
おっと、この足音は……子供たちだ。
勉強、終わったのかな?
たしか、礼節の勉強だったよな……
ははは、俺の前だけ静かに歩いても駄目だぞ。
見えていないところでも、静かに歩くように。
善哉、食べるか?
モチだけでいい?
わかった、ウルザ、アルフレート、みんなの分を焼いてやってくれ。
一人二つまでだぞ。
夕食、食べられなくなったら俺が叱られる。
……モチがもうすぐなくなる?
あれ?
そんなに食べたかな?
あ、ギラルと混代竜族がお土産で持って帰ったからか。
空を飛ぶクジラの肉のお礼にと、気前よく配ってしまった。
とりあえず、今回の分は大丈夫だな?
よし。
明日、モチを搗こう。
ははは、いまからは無理だ。
モチ米を水に浸けたり、蒸さないといけないからな。
準備が大変なんだぞ。
そうそう、鬼人族メイドたちに感謝だ。
夕方。
転移門を使って、温泉地に向かう。
ドラゴンの姿で入れる巨大な温泉は、ドラゴンたちが交代で利用するようになった。
人の姿で入るのも悪くないが、ドラゴン姿で入ると解放感があるのだそうだ。
現在、グーロンデが入っている。
女性が入浴中なら近付かないのがマナーというか常識なのだが、ドラゴンの姿なのでセーフという扱い。
ただ、万が一を考えて、近付くときは鐘を二回、鳴らすようにしている。
人の姿で入浴していないとも限らないからな。
うん、ドラゴン姿だ。
仰向けじゃなくて、ちょっと安心した。
「村長、どうしました?」
グーロンデは頭の一つを持ち上げ、聞いてくる。
俺の目的は、グーロンデが温泉に入る前に狩った魔獣。
パニックカリブー。
ドラゴンの姿じゃなかったらしいから、パニックカリブーも油断していたのだろうな。
グーロンデの指示する場所に行くと、うーん。
心臓が弱い人には見せられない現場。
手を合わせたあと、角を確保。
残りは【万能農具】で耕しておく。
「グーロンデ、やりすぎ」
でも、パニックカリブーを逃がさなかったのは褒めておく。
夕食は期待してもいいぞ。
ああ、夕食はここで食べるか?
それとも戻るか?
「もう少ししたら、戻ります」
了解。
夕食後、まったりと客間に。
最近、魔王とビーゼルはルーとよく話をしている。
ウルザとアルフレートが魔王のいる王都の学園に行くからだろう。
だろうけど……時々、三人して沈痛な顔をしているのはなぜかな?
ウルザもアルフレートも、そんなに不安に思うほど酷くはないと思うが?
それに、子供たちだけで送らず、お目付け役を用意することにもなった。
最初はガルフが候補だったが、顔見知りだと甘えるとのことでルーから却下された。
そして選ばれたのが、温泉地の転移門を管理しているアサ。
執事っぽい格好からもわかるが、もともと太陽城では城主の執事を勤めていたらしい。
ベル、ゴウの推薦もあり、ウルザとアルフレートが学園に行く間のお目付け役となった。
必然的に温泉地の転移門の管理を別の者が引き継ぐことになり、その候補を四村から派遣してもらうことを相談中。
アサ以外に、お目付け役はあと二人。
一人はウルザの土人形、アース。
絶対にウルザについていくとの主張を一回も曲げなかったので、了承。
ただし、ウルザだけでなくほかの子供もみるように。
現在、アースは子供たちと一緒に学園生活で必要なことを学んでいる。
もう一人は、混代竜族から派遣してもらうことになっている。
空を飛ぶクジラの件でここに来たとき、なにかできることはありませんかと言ってくれたので、素直に甘えてみた。
数年、学園に拘束されても大丈夫な者を用意してくれるそうだ。
ありがたい。
このお目付け役三人に加え、ゴール、シール、ブロンの獣人族の男の子たちがいるわけだから、そんなに心配する必要はないと俺は思う。
そう魔王、ビーゼル、ルーに伝えたら、声を揃えてこう言われた。
「甘い」
……甘いかなぁ?
お久しぶりです。
更新、遅れめで申し訳ありません。
今年もあと少しですが、年内にあと数回は更新したいと思います。
よろしくお願いします。
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これからも頑張ります。
感想欄、色々な感想ありがとうございます。
批判、先読み、予想、考察も感想の一つとして受け入れておりますが、不特定多数が目にする場所であることをご了承ください。
覚えておいてほしいのが、世の中には色々な人がいて、価値観は人それぞれということ。
「赤」と言われて連想する「赤」は、他人が考えている「赤」とは別の色の可能性もあるのです。
色でわかりにくければ、「美味しいラーメン」でもかまいません。
人によって「美味しいラーメン」でイメージする味、内容は違うでしょう。
拘る場所も違うと思います。
そのことを忘れずにいてください。
まとめ。
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数名の方から、感想欄の謝罪をメッセージでいただきました。
お気になさらず。
更新(ネタ提供)しない作者が一番悪いのです。