挨拶
ザブトンとザブトンの子供たちが冬眠の挨拶に来た。
もうそんな時期か。
寂しくなるな。
また春に会おう。
わかっている。
春のパレードでの衣装、楽しみにしている。
そして、冬眠せずに起きていてくれるザブトンの子供たち、無理はしないように。
外に出るときは保温石を持つのを忘れちゃ駄目だぞ。
レッドアーマー、ホワイトアーマーは寒さに強いのは知っているが、門番は門の中でやるように。
大丈夫だ。
それでも門番だから。
続いて、ポンドタートルたちがやってきた。
お前たちも冬眠か。
一気に冬眠しなくても……いや、止めるわけにはいかないな。
また春に会おう。
村を見回ると、出歩いているスライムたちの数が少ない。
暖かい場所に移動しているのだろう。
いま、出歩いているスライムは寒さに強いスライム。
寒さに強いといっても、雪が降るぐらいの気温になると出歩かなくなる程度だが。
おっと、寒さに震えて動きが鈍くなっているスライムを発見。
回収して、屋敷の中で解放する。
外で放置していても問題はないが、スライムも村の一員だからな。
助けたくなる。
……
ほかにもいるかもしれない。
見回ろう。
本格的な冬が始まった。
寒い。
だが、屋敷の中は暖かい。
外に出にくくなる。
客間に設置されたコタツは三つ。
一つ目のコタツはマルビット、ルィンシァ、スアルロウ、ラズマリアが囲んでいる。
仕事は全て終わったらしく、完全にまったりモード。
それぞれの手にはドワーフたちが作った酒。
そしてコタツの上にはローストビーフ。
いや、ウサギ肉のローストだから、ローストラビットかな?
あと、双六の板とコマがあるから、それで遊んでいたのだろうが……
双六のマスに書かれていた内容に不満があって、途中で放り出したようだ。
ゲームだから、気にしないように。
ただ、誰だ?
“娘に立場を奪われる”とか“孫が悪い異性に引っ掛かる”とかを双六のマスに書いたのは?
二つ目のコタツはドース、ライメイレン、ドライム、グーロンデが囲んでいる。
コタツの上には麻雀用の板が置かれ、麻雀を楽しんでいるようだ。
何かを賭けているのか、全員が真剣な顔。
牌を切る顔が怖い。
グラッファルーンは、さすがにそろそろ帰らないといけないらしく、ラナノーンのところで別れを惜しんでいる。
帰るって聞いたのは二日前なんだけど、まだ帰らないのかな?
最後のコタツは、ドライムの執事であるグッチと、ブルガ、スティファノが囲んでいる。
コタツの上には羊羹とお茶。
羊羹はまだ試作段階なので、俺としては満足度はいまいち。
だが、村の住人たちからの評判は上々。
甘味が強いのは妖精女王や子供たちに。
甘味を抑えたのは一部の大人たちに人気だ。
そして、グッチは甘味を抑えた羊羹を好み、ブルガとスティファノを相手にその良さを語っている。
そんなグッチだが、善哉の時は甘味が強いほうが好みなんだよな。
本人はモチの存在が大きいと言っていたが。
俺の部屋のコタツは、クロとユキが占領している。
俺の姿をみてクロがスペースを空けてくれたので、ちょっとだけ入っていく。
……
反対側に仰向けで寝ている妖精女王がいた。
他人の部屋で仰向けで寝るとは、なかなかの大物っぷり。
その妖精女王の左右には、子狐姿のヒトエと子猫のサマエルが妖精女王に寄り添って寝ている。
ヒトエは、猫たちと仲がいいんだよな。
猫たちも自分たちがヒトエの姉であるように振る舞っている。
それはかまわないが、ヒトエにはもう少し子供たちと交流してほしいと思わないでもない。
しかし、ヒトエは人の姿になっても三歳ぐらいだからな。
あまり無理はさせられない。
年齢的には、俺よりも遥かに年上だけど。
母親のヨウコによれば、時期がくれば一気に大人になるそうだ。
それがいつかは不明。
ただ、子供期間が長ければ長いほど強くなるそうなので、ヨウコはまったく焦っていない。
俺としては、子供の成長が見られないのは寂しいけどな。
そう呟いたのを聞かれたのか、ヨウコは俺の前で年齢を変化させた姿を見せてくれた。
五歳ぐらいのヨウコ、十歳ぐらいのヨウコ、十五歳ぐらいのヨウコ、二十歳ぐらいのヨウコ。
「大人になれば、これぐらいは自由自在。
気にするでない」
そう言って、ヨウコは笑っていた。
そんなものか。
その日の夜、ヨウコが変身する様子を見ていたルーに問い詰められた。
浮気じゃないぞ。
え?
そうじゃなく?
いや、身体の年齢を変えるのって、ハクレンとかラスティもできるし……違った。
ルーの変身が一番!
あのときは大変だった。
そんなことを思い出しながら、俺はコタツで少し温まる。
サマエルがここにいるってことは、魔王はまだ来ていないのか。
近々、魔王の奥さんを村に連れてくるそうで、その相談と準備で頻繁に来ている。
今日も来るはずだが……と、サマエルが目を覚まして部屋から出て行った。
魔王が来たようだ。
俺も行かねば。
俺が立ち上がった場所に、酒スライムが潜り込んだ。
ここには酒はないぞ。
ん?
どうして隠している場所を知っている?!
昨日、隠したところだぞ!
魔王と話し合い、三日後に魔王の奥さんを連れてくることになった。
その時、獣人族の三人、ゴール、シール、ブロンも一緒に来るそうだ。
でもって、さらに十二人。
十二人は五村で俺と会いたいそうだ。
別に村に連れて来ても構わないが?
いやいや、無理にとは言わない。
了解。
それで、五村で会う十二人の目的は?
結婚の挨拶?
誰が結婚するんだ?
獣人族の三人?
……
前に村に戻って来たとき、それっぽいことは言っていたが……
そうか。
小さな子供だったあの三人が。
まあ、詳しい話は三人から直接聞こう。
ところで確認なんだが……
いや、シールの相手が多いのは察しているんだ。
やんわりとアドバイスも求められたし。
そこは追求しない。
本人の口から聞く。
ただ、覚悟をしておきたい。
だから確認だ。
この十二人、全員が結婚相手ってことはないよな?
相手側の親族も含めた数だよな。
四天王のホウの名前もあるし。
ホウの妹か従姉妹が結婚相手なんだよな?
遅くなりました。
再開します。
よろしくお願いします。