ウルザの料理
秋の収穫が始まった。
村、総出で収穫。
天使族のマルビット、ルィンシァ、スアルロウ、ラズマリアも参加。
ドースたちも手伝ってくれる。
今回、率先して頑張っているのはグラッファルーン。
ドライムのダイコン収穫に影響されたのか……あ、違うな。
うん。
これはあれだ。
少し前のドラゴンの集団飛行での失敗。
火球を霧散させなかったのって、グラッファルーンか。
ライメイレンが怒ってるから、言い出せないんだろうな。
なので、そのことは言わない。
収穫の手伝い、その調子で頑張ってくれ。
南のダンジョンのラミア族や北のダンジョンの巨人族も手伝ってくれる。
そう言えば、東のダンジョンのゴロック族はどうしているかな?
以前、俺との会談を調整したが、ゴロック族が村に向かっている最中に巨大な猪に襲われ負傷。
流れてしまった。
ゴロック族が回復したら、俺のほうから会いに行く予定だが……
そろそろ回復しただろうか?
今度、確認しておこう。
今は収穫に集中。
妖精女王、柿の収穫を手伝ってくれるのは嬉しいが、カゴに入れる量より食べている量のほうが多くないか?
硬い柿より、柔らかい柿が好き?
俺は柿は硬いほうが好きだな。
……
そうじゃなくて、食べないように。
クロの子供たちや、ザブトンの子供たちも羨ましそうにみているだろ?
いや、分けろってことじゃない。
収穫が終われば、油や砂糖、干し芋や干し柿など、作物の加工を行っていく。
小麦も挽いて小麦粉に。
収穫したキャベツとハクサイの一部は、ため池に持っていく。
ポンドタートルたちの冬眠前の食事だ。
冬眠前には食べないとな。
ポンドタートルたちは、目をキラキラさせながらキャベツとハクサイをムシャムシャと食べていく。
それなりの量があったのに、すぐになくなった。
おかわり、いるか?
ポンドタートルたちは遠慮しつつも、俺が追加で持ってきたキャベツとハクサイを平らげた。
気持ちのいい食べっぷり。
世界樹の蚕たちも、冬の準備を始めていた。
世界樹の木の枝の下に、枝と同じ色の糸で繭を作っている。
蚕たちは、この越冬用の繭の中で、冬を過ごす。
また来年。
そう挨拶した俺の横で、怒っているのはフェニックスの雛のアイギス。
ははは、勝負は次の春までお預けだな。
アイギスは鷲に任せ……いない?
珍しいな。
そう思っていたら、鷲は遠くの空にいた。
同じ場所をグルグルと旋回したと思ったら、急降下。
おおっ、なかなか大きい牙の生えたウサギを仕留めたようだ。
鷲はそのウサギを足で掴んで、村まで運んできた。
最近の鷲の食事は、村で用意しているので狩りをする必要はないのだが、こうやって手伝ってくれている。
ありがたい。
本来なら、そのウサギはハイエルフたちに渡すのだが、今回はアイギスの前に置いた。
アイギスはそのウサギに登り、ウサギの毛を毟る。
毟る、毟る、毟る。
ほとんど毟れてないが、毟る!
そして、ウサギの上でアイギスは、満足気な顔をした。
アイギスの機嫌が直ったようだ。
さすがは鷲だな。
その後、ウサギはハイエルフたちが回収。
少し傷んだウサギの皮は……これぐらいの傷みは普通?
アイギス、頑張って毟ったんだけど……
イタズラじゃないから、叱らないでやって。
ウルザの腰に、新しい剣があった。
今のウルザにあわせたサイズの剣。
武器の携帯禁止の解除と同時に、プレゼントした。
大事にしてほしい。
ウルザの武器の携帯禁止の解除は、アンを満足させる料理を完成させたから。
実はこれ、俺がアドバイスした。
ウルザは食材を切ることや、炒めること、混ぜることにはそれほど難はない。
難があるのは、火の調整。
どんな料理のときでも、火力が強過ぎるのだ。
なので、火力が強くても作れる料理を俺が教えた。
チャーハン。
最初に食材を切って準備し、熱したフライパンに順番に投入して炒めていくだけ。
火力は高ければ高いほどいい。
ただし、手早くしないと焦げる。
これがウルザに合った。
チャーハン用に作った中華鍋を巧みに操り、ウルザはチャーハンを完成させた。
たぶん、俺が作るより美味しい。
そして、アンも認めた。
「ご主人さまは、娘に甘いですね」
アンは笑顔だが、俺は知っている。
これは俺を責めている言葉であるということを。
責めているのは、ウルザにアドバイスをしたことをではなく、チャーハンの存在を今まで教えなかったことかな?
そうらしい。
いやいや、昔は米の収穫量が少なかったし、炊いた米をさらに調理するのは手間だったから。
はい、今から教えます。
中華鍋も用意します。
数日の間、昼食と夕食がチャーハンだった。
ギラルが帰ることになった。
ほんとうはもっと前に帰る予定だったが、延期が続いていたからな。
色々とすまない。
それと収穫を手伝ってくれてありがとう。
ドラゴン姿のギラルの背中には、それなりの量の作物が積まれている。
お土産だ。
ギラルはグーロンデ、グラルと別れを二時間ほど惜しんだあと、帰っていった。
続いてスイレン一家、セキレン一家、ドマイム一家も帰った。
もう少しのんびりしたそうだったが、それぞれ仕事があるらしい。
無理に引き止めることもできないので、お土産を渡して見送る。
残るはドース、ライメイレン、ドライム、グラッファルーン。
グラッファルーンは、ライメイレンの機嫌がいいところを見計らって、集団飛行時のミスを謝罪したようだ。
すっきりした顔で、孫であるラナノーンをあやしている。
ドライムは、ラスティに言われて干し柿作りの助っ人。
ライメイレンはドースとなにやら話し合っている。
本格的にここに移住……とか聞こえるが、正式に話が決まるまでは聞かなかったことに。
ライメイレンは、ヒイチロウに甘いが、厳しい面もある。
ただ甘いだけじゃない。
叱るべきところは、きっちりと叱っている。
そして、それは他の子供たちに対しても。
なのでヒイチロウ以外の子供たちからは、いまいち人気がない。
人気がないというか、怖れられている。
だが、大人たちからは人気がある。
なにせ、ハクレン、スイレン、ドライム、セキレン、ドマイムと五人を育てた母親でもあるからな。
なので、色々と頼られている。
ライメイレンも満更でもなさそうだ。
ただ、その様子をみて始祖さんが変な顔をしていたけど。
「子供が最近、反抗的になったとかならなかったとかは、神代竜族の重鎮にする相談じゃないと思う」
遅くなりましたが、レビューありがとうございます。
これからも頑張ります。




