小さい事件
修正)見物しているメンバーに、ラナノーンの名前を追加。
クエンタンによる代弁と補足で、死霊魔導師の生活していた島のことが少しわかった。
あの島は人工の島。
太陽城のようなものだそうだ。
製作者は不明。
未起動品を死霊魔導師が発見し、起動させたとのこと。
この辺りは死霊魔導師よりも、クエンタンのほうがよく覚えていた。
あの頃は世の中を壊してしまいたいほどの恨みによって、わけのわからない行動を繰り返していたという死霊魔導師の供述。
ちょっと怖い。
それほどの恨みの対象はなんだったのかと思うが、今は綺麗さっぱり忘れてどうでもよくなっているそうだ。
無理に思い出させることもないか。
クエンタンを製作したのは、これまた不明。
クエンタン曰く、少し変な魔法使いのグループが作ったそうだ。
ただ、詳しくは覚えていないというか記憶が消されているらしい。
製作された時代も、よく覚えていないそうだ。
死霊魔導師と出会ったのは、こちらも詳しくはわからないが、だいたい千年ぐらい前とのこと。
うーん、時間の概念が変になる。
死霊魔導師が、どうして剣と出会ったのか少し気になった。
魔導師なのだから魔法使い。
剣とは無縁のように思える。
素直に聞くと、死霊魔導師は懐かしそうな顔で教えてくれた。
「私の生きてた時代では、魔法使いも剣術や格闘術を使いこなしていましたよ。
魔法だけで生き残れるのは極少数で」
なるほど。
実際、死霊魔導師の剣の腕はかなり上だ。
死霊騎士には敵わないが、ガルフやダガ相手には苦もなく勝利する。
凄い。
俺も教えてもらおうかな。
ちなみに、クエンタンが持ち手の意識を乗っ取らない場合は、ただの喋る剣でしかない。
……
喋る意味あるのかな?
「ある!
アドバイザーだ!」
おおっ、剣の構えで相手の流派を見抜いたりとか?
「いや、出かける間際に忘れ物がないかとか、そういう……
た、戦いの最中に余計なことを言っても、気を散らすだけだろう!」
すまない。
クエンタンは一度折れてから……いや、俺の【万能農具】をみてからかな?
俺には丁寧に喋るようになった。
ただ、時々喋り方が戻る。
俺は気にしないから、喋りやすいほうでいいぞ。
喋りと言えば、クエンタンは死霊騎士の代弁ができるのかという疑問。
結論、できた。
これまでジェスチャーを解読していたが、すっごく便利。
しかし、クエンタンに頼り過ぎてもいけないので注意だ。
現在、死霊騎士のジェスチャーは、芸の域にまで達している。
この芸を失うのは惜しい。
個人的にそう思う。
転移門を管理するために温泉地に常駐している、マーキュリー種のアサも頷いてくれている。
ライオン一家、お前たちもそう思うよな。
クエンタンが複数あれば常時携帯させることも考えるのだが、一本しかないし。
クエンタン本人は、死霊魔導師の傍を離れたくないと主張。
なので、死霊騎士の代弁は時々ということになった。
大樹の村の上空を、ドラゴンが並んで飛んだ。
ドース、ギラル、ライメイレンが少し前を飛んでおり。
ハクレン、スイレン、マーク、ドライム、グラッファルーン、セキレン、クォルン、ドマイム、クォン、ラスティ、ヘルゼが続く。
天使族の集団飛行のように綺麗ではないが、迫力がある。
それを見て大きな口を開けているのがヒイチロウとグラルとラナノーン。
その三人の様子を見て、グーロンデがニコニコしている。
グーロンデは並んで飛ぶことに自信がないので、参加は辞退したそうだ。
ドースたちも天使族の集団飛行のように、フォーメーションをチェンジ。
天使族ほどの機敏さや優雅さはないが、妙な格式の高さがある。
大樹の村の住人も、大空を見上げている。
たぶん、一村や二村、三村の住人も見上げているだろう。
事前に連絡しておいたから、混乱はないだろう。
そう思っていたら、ドースたちは一塊になって、一斉に火球を吐き出した。
……
それは連絡していない。
うおおおおおおい!
なにやってるの?
サプライズ?
いや、確かにびっくりしたけど!
火球はやりすぎだろ!
え?
あ……火球はどこにも落下せず、空中で霧散した。
な、なるほど。
演出ね。
よかった。
……
火球、一つ消えてないけど。
森に落ちてドーンってなってるけど?
中止!
降りてくる!
犯人探しをしない!
誰か、俺を火球の落ちた場所に。
火を消しに行くから!
ちょっとドタバタした。
大樹の村では、各種族の代表が集まる種族会議以外にもう一つ、大きな会議がある。
俺と、俺の子供を産んだ者だけが参加できる母親会議だ。
子供は参加できない。
ここで話し合われるのは、主にローテーションと子供の教育に関して。
ローテーションに関しては黙秘したい。
今回、大事なのは子供たちのほう。
前々からウルザが急いで大人になろうとしていると思っていたが、その理由がわかった。
「お父さんの部屋に入りたいから」
確かに俺の部屋は、昼も夜も子供たちは立ち入り禁止。
理由は察してほしい。
意地悪ではなく、子供たちの教育を考えての処置だ。
そんな俺の部屋に入りたくて、早く大人になりたいというのは……
ウルザの答えを耳にした大人たちの内心はパニックだった。
そして、さらに追い討ち。
「入ってどうするって?
それは秘密」
今回の会議召集となったわけである。
最初に言っておこう。
ウルザは俺の娘だ。
以上。
その後、俺が怪しい行動をしていないかを精査。
みんな、どうして俺よりも俺の行動に詳しいのだろう?
クロの子供、ザブトンの子供にも情報収集。
結果、俺にかけられた不名誉な疑念は晴らされた。
よかった。
しかし、それならどうしてウルザは……
ハクレンが、ウルザから答えを聞き出してくれた。
「お父さんの部屋、隠し通路があるって聞いたから」
だそうだ。
ウルザはまだまだ子供と一安心。
母親会議は解散。
俺の部屋がもう一つ、用意されることになった。
子供たちが入れる俺の部屋が。
もちろん、隠し通路付き。
ハイエルフ、山エルフたちが頑張ったから隠し部屋、隠し窓、隠し棚なども完備。
……
忍者屋敷かな?
子供たちが喜んでいるなら、構わないか。
これで、ウルザが急いで大人になろうとしなくなってくれれば、嬉しいのだけど……
子供は、あっという間に育つって聞くしなぁ。
レビュー、頂きました。
ありがとうございます。




