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怨念炉

スイレン    ライメイレンの娘。ハクレンの妹。ドライムの姉。

マーク     マークスベルガーク。スイレンの旦那。

ヘルゼ     ヘルゼルナーク。スイレンとマークの娘。


 久しぶりにスイレン、マーク、ヘルゼの一家がやってきた。


 久しぶりだ。


 三人の人の姿は……あまり変わらない。


 人の姿は自由自在らしいから、気にしなくていいのか。



 スイレンたちがやってきた理由は、ライメイレンに呼ばれたから。


 本気でドラゴンによる集団飛行を計画しているようだ。


 ヒイチロウがこれでもかと期待していたからな。


 ライメイレンは、帰ろうとしていたギラルまで引き止める力の入れようだ。


 なので、邪魔はしない。



 とりあえず、スイレン一家にギラルとグーロンデを紹介する。


 ……


 うん、俺を盾にしないで。


 ギラルとは前に村であったよな。


 違う場所でも何度か会ってる?


 よかった。


 え?


 ギラルはマークの憧れのドラゴン?


 そうなんだ。


 妻と娘に甘い普通のドラゴンだが……


 とりあえず、マーク。


“憧れのドラゴン”の部分で、向こうにいるドースの耳がピクッとしたから、あとでフォローしておくように。



 でもって、俺を盾にしているのはグーロンデが対象かな?


 グーロンデは……あー、マークは昔、一回やられたと。


 じゃあ、今日は仲良くなるチャンスだな。


 頑張れ。


 スイレンとヘルゼもグーロンデに怯えているのか?


 噂しか聞いてないんだろ?


 大丈夫だ。


 彼女も、旦那が大好きなドラゴンの女性。


 グーロンデ、照れるのは構わないがギラルを殴るのは止めてやって。


 ギラルは喜んでいるけど、スイレンとヘルゼが怯えるから。



 このあと、スイレン一家を軽いお茶に誘って近況報告。


 お茶のつもりだったのに、しゃけご飯を希望されてしまった。


 ドースやライメイレンが自慢していたらしい。


 別に構わないけど。


 余談だが、世間一般では鮭の卵であるイクラを食べる者は少ない。


 昔やったシャシャートの街での食事会……ではなく、海の種族との揉め事の解決のための試練に、イクラを食べるというのがあったぐらいだ。


 なので、この村でもイクラを食べる者は少ない。


 最初から喜んで食べたのは俺と鬼人族メイド、山エルフぐらいだ。


 俺と鬼人族メイドはイクラに忌避感はなく、山エルフたちはイクラを知らなかった。


 まあ、苦手な物を無理に食べろとは俺も言わない。


 食べたい者だけが食べればいいと思う。


 だから、スイレン一家がイクラ丼を要求しても、素直に出した。


 最近、ドースやライメイレンもイクラを食べるようになったからなぁ。



 スイレン一家との近況報告時に、死霊魔導師が生活していた空に浮かぶ島に関しての話題になった。


 正確には、空に浮かぶ島が一つ減ったという話。


 あの辺りには大小二十の空に浮かぶ島があったが、それが一つ減って十九になった。


 スイレンたちは、どこにいったのかなと話し合っていたそうだ。


 ただ、その話題中に聞きのがせないセリフが二つ。


 一つはマークのセリフ。


「あそこは昔から十九で、いつの間にか二十になっていたって爺さんが言ってたな」


 もう一つは、スイレンのセリフ。


「最近、あの辺りを飛んでいたときに攻撃されたわ。

 避けただけで、反撃はしてないわよ。

 急いでいたから」


 俺は見逃したけど、イクラ丼に釣られてやってきた始祖さんが聞きのがさなかった。



 そして詳しい話を聞くと導き出される結論。


 死霊魔導師が生活していた空に浮かぶ島は、普通の空に浮かぶ島じゃなかった。


 ……


 俺はスイレン一家から話を聞く始祖さんから離れ、ルーに質問する。


 普通の空に浮かぶ島ってなんだ?



 世の中には、空に浮かぶ物質というのがあるらしい。


 その塊が、空に浮かぶ島。


 一定の高度で安定し、ほとんど動かない。


 台風などで移動させられたとしても、時間が経てば元の場所に戻るらしい。


 それが一般的な空に浮かぶ島。


 その数が増えるのは、大きな地震や火山の噴火などで新たな島が地中から出たとき。


 その数が減るのは、ドラゴンなどによって破壊されたとき。


 普通は落下で減ることはない。



「つまり、落下した島は、太陽城のように人工的な何かで浮かんでいた島ということになる」


 始祖さんが断言する横で、俺は頷いておいた。


 そうか、そうなるのか。


 ということで、始祖さんは死霊魔導師にさらなる話を聞きに行くことに。


 え?


 俺も同行するの?


 まあ、いいけど。




 スイレン一家をハクレンに任せて、俺と始祖さんは温泉地に。


 まず、死霊魔導師はいつから空に浮かぶ島で生活をしていたのか?


 詳しく覚えていないらしい。


 ただ、記憶にある出来事を始祖さんが分析し、だいたい千年ぐらい前と推測。


 あそこで何を研究していたのか?


 怨念炉おんねんろだそうだ。


 俺は聞き覚えがないが、怨念炉の名前を聞いた始祖さんはすっごい嫌そうな顔をしていた。


 なんでも、人の怨念を力に変える装置だそうだ。


 そして、とても危険な装置。


 ルー、興味深そうに聞き耳を立てない。


 俺としては、その怨念炉とやらが暴走して、島が落下したのかなと思ったけど違った。


 なんでも死霊魔導師は、すっごい恨みを持って、その復讐のために怨念炉の研究に埋没していたそうだ。


 しかし、今から六年~七年ぐらい前にその恨みがすーっと消えてしまったらしい。


 それからはのんびりとした研究をしていたそうだ。


 例えば、花の色をもっと鮮やかにする研究とか。


 ルー、興味なさそうな顔をしない。


 なので、島の落下には怨念炉は関係無いというのが死霊魔導師の主張。


 始祖さんもその主張に納得した。


「怨念炉をちゃんと封印してたら暴走はないか。

 では、いったい何が落下の原因なのか……」


 ……


 んー?


 始祖さんの呟きに、死霊魔導師がすっごく動揺したぞ。


 何かを思い出したみたいに。


 まさか、ひょっとして……




 怨念炉、放置したままだったそうです。






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