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魚の頭と落下した島


 俺は秋刀魚さんまの頭を台車に積んで、犬エリアにもっていく。


 クロの子供たちが欲しがるからだ。


 身の部分も当然欲しがるが、秋刀魚の数が限られているのを知っているので無理は言ってこない。


 言ってきたのは、食事のあとに残った秋刀魚の頭部分がほしいとのこと。


 秋刀魚は八十センチぐらいあるので、頭もそれなりに大きいのだが……


 本当に秋刀魚の頭を食べるのかと思いながら与えたが、苦もなく食べた。


 そして、目をキラキラさせながらおかわりを要求してくる。


 以後、秋刀魚の頭はクロの子供たちに与えることになった。


 しかし……


 秋刀魚の頭だけが大量にある状況は、それなりにグロテスク。


 まあ、クロの子供たちは気にせず、尻尾を振って秋刀魚の頭にかぶりついている。


 こらこら、秋刀魚の頭で遊ばない。


 転がさない。


 食べ物には敬意を払うように。


 おっと、サイズで揉めない。


 喧嘩は駄目だぞ。


 そこ、穴を掘って秋刀魚の頭を埋めようとしない。


 腐るぞ。



 俺が秋刀魚の頭を与え終えたあとにやってきたのは、鬼人族メイドが数人。


 俺と同じように台車を押しているが、積んでいるのは秋刀魚の頭ではない。


 しゃけの頭だ。


 鮭も一メートル五十ぐらいのビッグサイズなので、頭も大きい。


 マグロの頭みたいだ。


 鬼人族メイドたちは、その鮭の頭をクロの子供たちに与えていく。


 秋刀魚の頭よりも、食いつきが悪いのは俺に遠慮しているからかな?


 ははは、気にするな。


 そうだ、遠慮なく……秋刀魚の頭のときも思ったが、む力が凄いな。


 鮭の頭の骨を気にせず、シャクシャク食べてる。


 鮭の頭の骨って柔らかくは……ないよな。


 かなり硬い。


 おっと、悪かった。


 鮭の頭を横取りするつもりはないから、寂しそうな目でみないでくれ。



 クロの子供たちが鮭の頭を食べ終わったら、クロの子供たちを牧場エリアの水場に誘導。


 注意して食べてても、魚臭くなっているからな。


 洗ってやろう。


 ははは。


 山羊に突撃され、俺は水場に突き落とされた。


 油断していた。


 クロの子供たちが、本気で山羊を追いかけている。


 俺は怒っていないから、ほどほどにな。




 クロの子供たちを洗い終わったあと、俺は風呂に入る。


 濡れてしまったからな。


【健康な肉体】で風邪はひかないだろうけど、だからと言って無茶をしていいわけじゃない。


 温泉地に行くことも考えたが、獣人族の女の子たちが早々にお湯を用意してくれたので風呂になった。


 ありがとう。


 だが、一緒に入ろうとしないように。


 まだ日は高いぞ。



 湯船に浸かりながら、温泉地に新しく増えた死霊魔導師のことを考える。


 なんでも彼女は、数ヶ月前まで人間の国のとある場所で生活していたらしい。


 とある場所というのがちょっと変わっていて、なんと空に浮かぶ島。


 太陽城のように移動することはなく、同じ場所に浮いているだけの島だそうだ。


 その島で誰にも邪魔されずに魔法の研究を続けていた死霊魔導師だったのだが、なにが原因なのかその島が落下。


 しかも、落下した先には大きな川があり、その川をき止めてしまった。


 その地域では大事な川だったらしく、急に川の水位が下がって川の下流の街や村は大混乱。


 原因を究明しようと大勢の冒険者が落下した島に送り込まれた。


 そして、落下した島で生活していた死霊魔導師が、島の落下の原因と断定されてしまった。


 このままでは滅ぼされると慌てた死霊魔導師は転移の魔法を使って逃亡。


 ただ、未熟な転移の魔法だったらしく、行き先はまるっきりの運任せ。


 死霊魔導師が転移した先は、温泉地の北にある山。


 その山の中腹に、身体を半分ほど地面に埋めてしまったそうだ。


 さらに最悪なのは、埋まっている部分に頭部があったこと。


 魔法を使うことができず、このまま朽ちていくのかと絶望に暮れているところ、ライオン一家の一頭に発見され、死霊騎士たちによって救助されたそうだ。


 そして、救助のお礼というわけではないが、温泉地で働くことを決意。


 頑張っていたそうだ。


 色々、大変だったんだなと慰めておいた。


 もちろん、そのまま働くことを改めて許可。


 後々、彼女が魔法の研究する施設を作ってあげないとなと思ったりする。



 死霊魔導師が転移したあとの話があり、実はそれを俺は知っていた。


 死霊魔導師を取り逃がした冒険者たちが、落下した島を調査する際に大きな魔法を使い、島を破壊。


 それによって、堰き止められていた川の水が解放された。


 当然、川の下流にあった街や村が大きな水害にあう。


 冒険者は馬鹿なのだろうか?


 それとも魔法で島が壊れるとは考えなかったのか。


 一応、直前に川の水が堰き止められたことで、その後に続く水害をおそれた人々は事前に逃げていたので人的被害はほとんどなかったのだが、建物の被害が凄まじいことに。


 この救助、救援にあたったのがコーリン教。


 始祖さんが死ぬほど忙しかった原因はこれ。


 始祖さんは温泉地で死霊魔導師を見かけたが、見なかったことにしたらしい。


 色々とあるのだろう。


 でも、島が落下した原因を追求するためには、声を掛けたそうだ。


 浮遊島は他にもいくつかあるらしく、それらが落下するかもしれないとなると放置はできないそうだ。


「冒険者が落下した島を破壊しなければ、もう少し詳しく調べられたのですが……」


 島を破壊した冒険者たちは捕まり、投獄されている。


 調べようとした行為の結果だからと許すには、被害が大き過ぎるらしい。


「悪意がないのは判明しているので、半年ほどで釈放されます」


 始祖さんの説明。


 釈放時には、コーリン教と冒険者ギルドが共同で身元を請け負うことになると教えてくれた。


 どこも大変だ。



 俺は風呂から出ると、屋敷に戻って始祖さんのもとに。


 水害のあった地域への寄付を渡す。


 あ、鱗のままじゃ駄目?


 じゃあ、現金で。





ちょっと短いですが。


感想欄、その他。

500話、お祝いコメントありがとうございます。

これからも頑張ります。


あと、レビューもらいました。

こちらもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 壁に転移したら、即死ですからね。 地面で良かった。
[一言] 現世でいろいろ天候とか体質とか社会とか時代に翻弄されてる農家 現在は 自家消費分の稲作や野菜を作ってます。  政令指定都市の郊外で周りは 農家が絶滅してますが出来る限り家族には誰が作ったか見…
[良い点] >鮭の頭の骨って柔らかくは……ないよな。 氷頭なますという郷土料理があってですね まあ決して食べられないものではないようです
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