大樹の村の様子
死霊騎士のために、新しい盾を作る。
死霊騎士は、盾の可変ギミックはとても有効だったと言ってくれた。
特に初見の相手には、かなり効果があると。
ただ、対人専用のギミックなので魔物や魔獣退治ではほとんど使わない。
武闘会のみ。
そして、武闘会に出てくる者たちは、この可変する盾の存在を知っているので効果半減。
うーむ。
まあ、盾の大きさを理解して行動してくる者の不意をつくギミックだからな。
次は可変ギミックはやめておくか?
かっこいいから継続採用で?
子供たちの人気もある?
そうかそうか。
では、可変ギミックは継続採用の方向で。
しかし、まったく同じでは芸がない。
前回は盾の裏に隠されていた刃が盾の周囲に飛び出し、相手の剣を受ける、刃で相手を攻撃するギミックだったが……
うーん。
グーロンデの鱗を削って作った小さい刃をたくさん作り、それを繋いでチェーンのように。
この刃のついたチェーンを盾の周囲で稼働させる……には動力が無いか。
山エルフ、その手に持っているのは?
ルーが作った魔力で動く装置?
ほほう。
このサイズなら、こう組み込んで……
スイッチ一つで、盾の周囲に刃が飛び出して回転!
……
すっごく危ない。
中止。
結局、前回と同じ盾を作った。
残念。
代わりに、死霊騎士の鎧を新しくしようと思う。
これまでは温泉地でも錆びないように木製だった。
だが、グーロンデの鱗を削って作った粉を混ぜた鉄なら錆びない。
ガットにお願いしたら、数ヶ月の仕事だと言われた。
まあ、そうだろうな。
木製でも大変だったのを鉄で作るわけだから。
暇なときで構わないと言ったら、ハウリン村から人手を借りていいかと聞かれた。
時間短縮が名目だが、目的はハウリン村の者たちにも大樹の村の鍛冶場を見せびらかしたいそうだ。
問題ないと返事。
万能船のスケジュールを確認しておこう。
秋の収穫まで、まだ時間がある。
本来なら、冬の準備を少しずつ始めるのだが……
俺が頑張らなくても大丈夫な状態。
つまり、暇だ。
……
天使族のマルビット、スアルロウ、ラズマリアの三人が引っ張り出したコタツに入ってまったりしている妖精女王に、フルーツを与えてみる。
まず、ライチ。
妖精女王はもぐもぐとライチを食べた。
手が汚れるのがライチの弱点だな。
はい、濡れたタオル。
でもって、次は少し凍らせたライチ。
ははは。
驚いている驚いている。
同じ果実だぞ。
だが、食感の違いがここまで味を変えるのだ!
おっと、三つぐらいにしておきなさい。
飽きるから。
わかったわかった。
じゃあ、別のフルーツ。
メロンとマンゴーでどうだ?
モモ?
皮を剥くのが大変なんだが……まあ、いいか。
そろそろ子供たちも勉強が終わってやってくる時間だしな。
……
数が多かったので、鬼人族メイドたちに手伝ってもらった。
ありがとう。
外に出て空を見ると、フェニックスの雛のアイギスと鷲が飛んでいた。
並んで飛びたいのだろうが、飛ぶ速さが違うので鷲は忙しなく何度も同じ場所をぐるぐると飛んでいる。
微笑ましい。
微笑ましいが、アイギスは自分の遅さを再認識させられているようで、しばらくすると飛ぶのを止めて拗ねた。
ははは。
頑張らないと、いつまでたっても世界樹の蚕に勝てないぞ。
ため池では、ポンドタートルがゆっくりと泳いでいる。
水面に飛び出しているポンドタートルの甲羅の数を数えると、ちょうど二十匹。
増えたな。
いやいや、邪魔じゃないぞ。
ため池が狭く感じたら言ってくれ。
拡張するか、新しい池を作るから。
ところで、全員で揃って水を噴き出したのはなんだ?
綺麗だったが。
芸?
練習中?
なるほど。
冬になる前に、村の住人たちに見てもらう機会を作ろう。
居住エリアから女性の悲鳴が聞こえた。
悲鳴の主はマルビットだ。
続いてスアルロウとラズマリアの悲鳴が響く。
となれば、そのあとに続くのはルィンシァの怒声だろう。
あ、やっぱり聞こえた。
マルビットたちは、別荘として作られた家で仕事に励んでいる。
邪魔はできないので、スルー。
……
マルビット、服を掴まないでほしい。
ははは。
ルィンシァにマルビットを渡す。
頑張れ。
そして、仕事が終わるまでは屋敷のほうには来ないように。
食事は届けさせるから。
クロの子供たちと共に畑を見回り、北の花畑に到着。
妖精たちが賑やかに飛んでいる。
……
数、増えたな。
おっと、わかっている。
ちゃんと持ってきた。
俺は短くカットしたサトウキビを台の上に並べる。
そのサトウキビに、妖精たちが群がった。
時々、こうやって持ってきてやるから蜂の巣にちょっかい出すのは止めてくれよ。
ちょっと前、蜂から相談されたときは驚いた。
果樹エリアに行き、蜂たちの様子を確認する。
うん、問題はなさそうだ。
ただ、数体の女王蜂が丸々と太っているのが気になる。
太りすぎではないだろうか?
まあ、安心できる環境ということかな。
冬がくる前に、蜂小屋のチェックをしてやろう。
万が一、傷んでいたら雪の重みで潰れる可能性があるからな。
牧場エリアで馬に乗る。
昔と違って、素直に乗せてくれるようになった。
ただ、俺はまだ上手く乗れているとは言えないが。
上手くないだけで、下手ではないと思う。
馬に乗って、牧場エリアを見回る。
クロの子供たちもついてきた。
うん、山羊、羊、牛の数も増えたな。
特に山羊。
俺を見つけて、集団で突撃してきた。
だが、馬は素早くかわしてダッシュ。
あっという間に山羊を引き離す。
ついてこられたのはクロの子供たちだけだ。
引き離された山羊たちは俺に興味ないですよーといった態度を取っているが、俺を乗せた馬が近付くとまた突撃してきた。
馬はかわすが、本当に危ないときはクロの子供がガードしてくれる。
山羊たちもそれがわかっていて、じゃれているだけだ。
だから、山羊たちは俺に恨みがあるわけではない。
たぶん。
大丈夫だよな?
馬の数もなんだかんだと増えた。
みんな元気だ。
子馬たちは……俺には懐いていないな。
代わりに、ユニコーンの雌が俺に懐いている。
まあ、懐いていても乗せてくれないけどな。
ユニコーンだから、仕方がないのかな?
ははは。
わかったわかった。
今日の夜の食事にはニンジンを増やそう。
馬がニンジンを好きなのは迷信と聞いたことがあるが、この村にいる馬やユニコーンは喜んで食べる。
もちろん、リンゴやハクサイなども喜んで食べるが。
ああ、子馬たちが俺に懐いていないのは、生まれて数ヶ月のころに畑に侵入したのを叱ったからかな。
子馬たちは、クロの子供たちが止めるのを聞かずにハクサイ畑を荒らした。
叱るのは当然だ。
ただ、ザブトンの子供たちの糸で縛られていたのを俺が助けたのは、忘れているのかな。
うーん。
どこかで仲直りしたいものだ。
夜。
夕食には海の魚が並ぶ。
ゴロウン商会から仕入れた魚だ。
メインは当然、秋刀魚と鮭だ。
秋といえば、これだよな。
季節的にはちょっと早いらしいが、気にならない。
秋刀魚は大きいので半分に切って、焼く。
鮭は解して、ご飯と一緒に炊いた。
うん、美味しい。
秋の味覚だな。
そうそう、果樹エリアを歩いたときに栗がそろそろ収穫できそうだった。
キノコも収穫しないと。
今日はのんびりしたけど、考えればやれることは色々とあるな。
よし、明日は頑張ろう。
今日は風呂までの時間、子供たちと遊ぶ。
武器の携帯禁止を言い渡してから、ウルザはお淑やかにしている。
反省しているのだろう。
俺以外にも、ハクレンやザブトンからも叱られたからな。
ただ、お淑やかなのは女の子らしいが、ウルザらしくない。
甘いと言われるかもしれないが、秋の収穫が終わったぐらいで武器の携帯を許そう。
当面は駄目だぞ。
少なくとも、死霊騎士が完全回復するまでは駄目。
当面はお淑やかな態度を続けるように。
ウルザが剣を持ち出してまで騎士の部に出たがったのは、早く大人として認められたいかららしいが……
時間が経てば嫌でも大人になるんだ。
慌てて大人になる必要はないぞ。
500話。
登場人物一覧とか地図とかで稼いでいるから正確には違うけど、ここまでこれました。
ありがとうございます!
これも読者あってこそ。
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これからも頑張りますので、よろしくお願いします。
あと、3億PV達成!
こちらも、ありがとうございます!
書籍の煽りとかに書けるかな。
私信)
歯痛は解消しました。
ご心配をお掛けしました。
仕事は山積みです。
なんとか今週の三連休中に解消しなければ。