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グーロンデを迎えた数日


 グーロンデを村に迎えて三日が経過した。


 最初は緊張していたグーロンデだったが、いまではかなりリラックスしてもらえている。


 グーロンデがやってきた初日の晩に、歩くのがまだ苦手なグーロンデ用に山エルフたちが車椅子を作った。


 室内用と野外用。


 両方とも、ちょっと重いのだけどギラルが押すので問題なし。


 その車椅子を使ってギラルと一緒に行った温泉も、かなり気に入ったようだ。


 今朝も二人で温泉に行っていた。


 食事では、森で狩ってきた牙の生えた兎、巨大な猪を使った料理が好まれた。


 肉が好きなようだ。


 野菜は……ギラルに言われて、キャベツを食べている。


 他にダイコン、キュウリ。


 味噌を付けて食べている。


 酒はあまり飲んでいない。


 酒が嫌いなのかなと思ったら違った。


 グーロンデは酒が好きらしいのだが、酔うと人の姿を維持できなくなるかららしい。


 なのでグーロンデが酒を飲めるように、ドラゴン姿になっても大丈夫な野外に酒席を用意。


 酒スライムとドワーフたちが常に待機している。


 グーロンデは、ドワーフたちが驚くほど飲むそうだ。


 そして明け方、ドラゴンの姿で酒樽を抱えて寝ているグーロンデをギラルが優しい顔でみていた。


 長く怪我をわずらっていたしな。


 世界樹があってよかった。



 その世界樹関連だが。


 まず、ドース。


「ギラルよ。

 すまなかった。

 お前の妻が怪我をしたのは知っていたが、世界樹の葉を必要としていたとは思わなかった」


 ドースは大樹の村に世界樹があるのは知っていたので、そのことを謝罪。


「いや。

 俺も妻の怪我のことは隠していたからな。

 知らなくて当然だ。

 気にするな」


 ギラルが大きく笑う。


 グーロンデは巣の奥に引き篭もり、ギラルとグラル以外には声も聞かせなかったそうだ。


 そのギラル、グラルにも、グーロンデは姿をほとんど見せていない。


 潰された頭が腐敗していたからだ。


 ドラゴンの再生力のお陰か、腐敗は頭で止まっていたそうだが、夫や娘に見せたい姿ではないそうだ。


 グーロンデは笑いながらそう話をしてくれたが、重い話だ。


 返事に困る。



 続いて天使族のマルビット、スアルロウ、ラズマリア。


 天使族は世界樹を神聖視しており、その世界樹を燃やしたグーロンデを敵としていた。


 過去、凄惨な戦いが何度もあったらしい。


 しかし、どうやってもグーロンデに勝てないので、天使族はグーロンデには関わらない方針に転換。


 それを明言していたのだが、五百年前の勇者が攻めたときに武器供与をした。


 しかも、ドラゴンに対して特に効果のある魔法の武器を。


 グーロンデの怪我の原因でもある。


 その件を、天使族のおさとしてマルビットが謝罪。


 グーロンデも世界樹を燃やしたことを謝罪した。


 たがいに賠償ばいしょうは求めない。


 俺は謝罪の場を整え、提供したことで役目が終わったと思ったのだけど、マルビットが俺の服を離してくれなかったので参加。


 長年のわだかまりがそう簡単に消えるとは思わないが、謝罪は歩み寄るための大事な一歩目。


 双方の今後に期待する。


 なぜか俺が偉そうなことを言って、場をまとめることになった。



 謝罪のあと、マルビットと同席していたスアルロウ、ラズマリアから感謝の意を伝えられた。


 天使族に長々と刺さっていたとげを抜いてくれたと。


 三人は天使族では派閥が違うらしいが、そんなことを感じさせない仲のよさだった。


 そして最後に一言。


「グーロンデが冷静でよかった」



 同様に、グーロンデからも感謝の意を伝えられた。


 世界樹を燃やした自分が悪いのだが、なんだかんだと絡んでくる天使族は面倒だったそうだ。


 その天使族に謝れたことは、確実に心が一つ軽くなったそうだ。


 そして最後に一言。


「天使族が冷静でよかった」



 ……


 ま、まあ、互いに歩み寄れたことを喜ぼう。


 主義主張は違うかもしれないが、大樹の村では喧嘩しないように。


 議論は構わない。


 暴力をともなう喧嘩が駄目。



 世界樹関連の話はこんなもの。





 さて。


 グーロンデに対しては歓迎ムードの大樹の村。


 特に文官娘衆の一部と、子供たちが大喜び。


 文官娘衆の一部は、武勇伝だらけのグーロンデから話が聞けるから。


 細かく話を聞いて、歴史的発見だと騒いでいる。


 子供たちは、素直にグーロンデのドラゴン姿に興奮していた。


 凄い!


 かっこいい!


 子供たちはその興奮をどう表現していいのかわからず、大声を出しながら小躍りしていた。


 特にウルザとヒイチロウ。


 目をキラキラさせていた。


 その様子にギラルは大満足。


 グーロンデは少し照れていた。


 が。


 ここで問題が発生。


 ヒイチロウがあまりにもグーロンデのことを褒めるので、気分を害した者が二人いた。


 ヒイチロウの祖母ライメイレンと、妻候補のグラル。


 ライメイレンは最初、グーロンデに驚くヒイチロウを微笑ましくみていたのだが、いつの間にかドラゴン姿になってヒイチロウの気を引こうとしている。


 そしてグラルは最初、自分の母親が褒められることを喜んでいたが、いまでは母親を怖い目でみている。


 それ、母親に向けていい視線じゃないから。


 恋敵に向ける視線だから。


 ヒイチロウの母親、ハクレンは大丈夫なのかな?


 俺がいるから大丈夫?


 それは嬉しいが、ヒイチロウは……最後は母親に戻ってくる。


 なるほど。


 万が一、戻ってこなかったら凄くねるだろうな。


 いやいや、不吉なことは考えない。



 なんにせよ、グーロンデ対ライメイレンとグラルの変則タッグバトルに発展しそうになって、ちょっと困った。


 ドラゴン姿での戦いはやめてほしい。


 色々と壊れるから。


 ドースとギラルの二人に頼まれたので、俺が両者の真ん中に【万能農具】の槍を投げることで落ち着いた。


 落ち着いた証拠に、三人は並んで肩を組んでいた。


 いや、それを俺に見せなくてもいいから、仲良くね。


 あと、ヒイチロウ。


 まだ子供だから仕方がないが、異性を褒めるのは時と場合が大事だぞ。


 色々とトラブルを起こしちゃうからな。


 もう少し大人になったら、俺が色々と教えてやろう。


 ああ、大事な。


 本当に大事なことを。


 もちろん、アルフレートやリリウス、リグル、ラテ、トラインにもだ。


 ……


 ウルザ、努力しているところ悪いが、どうやっても首を八つにはできないぞ。




 グーロンデと話をしたので、色々と疑問が解消できた。


 気になっていたのはグーロンデがドラゴン姿のとき、頭が八つあるけど人格も八つあるのかな?


 という疑問。


 人格は八つ、あるそうだ。


 ただし、メイン人格は一つであり、残りの七つはサブ人格。


 サブ人格はメイン人格によって統制され、場合によっては統合される。


 人の姿のときも同じ。


 ただ、これまで人格一つで、残りの人格が休んでいた状態だった。


 その休んでいた人格が復活したことによって、体が上手く動かせないらしい。


 この村まで飛んでくるのも大変だったそうだ。


 まあ、十年もすれば慣れるとのこと。


 ギラルとの馴れ初めは、ギラルにブロックされてしまった。



 そして、グーロンデと話をすることで一番、収穫があったのが魔王。


「グーロンデ殿は、言葉だけでは不満だったと?」


「もちろんです。

 あそこの景色は綺麗だった、あれは美味しかったと話をしてくれるのは嬉しいですが、やはりそんな話をされると行きたくなるものです」


「むう。

 では、やはり私の妻も……」


「表立って不満を言うことはないでしょうが、そう思っているかと」


「そ、そうか」


 魔王は、自分の奥さんと結婚するときに政治に関わらせないと約束したらしい。


 なので、いまだにこの村には連れて来ていない。


 ……


 村に連れてくるのが、政治になるのかな?


 まあ、魔王の妻となれば王妃。


 王妃がおとずれるとなれば、政治になってしまうのかもしれない。


「何度か誘ったのだが、いい返事はもらえなかったから」


「断ってはいても、ときには強引に連れ出してもらいたいものです」


 グーロンデの言葉に、魔王は深く考えた。


 そして、村に奥さんを連れてくる計画をビーゼルと考え始めた。


 俺は魔王国の学園に行っている獣人族の三人から、魔王の奥さんの人となりは聞いているが……


「政治は関係ない、暇なときに一緒に遊びに行こう」


 これで大丈夫そうだけどな。



 グーロンデの言葉で魔王は考え始めたが、横で聞いていたギラルは動揺していた。


 そしてギラルはグーロンデに小声で話し掛ける。


「つ、連れ出すほうがよかった?」


「ふふ。

 こうして、連れて来てくれたではありませんか」


「そ、そうだな。

 ははははは」


 夫婦の仲がいいのは、いいことだ。


 グラルも遠慮してないで行ったらどうだ?


 お父さん、お母さんの邪魔はしない?


 子供が邪魔なわけないだろ。


 まあ、夜中とかは困るかもしれないけど。


 いや、なんでもない。


 いまは大丈夫だから、行ってこい。





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― 新着の感想 ―
[一言] 八岐大蛇ですね。 あと居ないのは、なんだろ?
[良い点] 分身技とかあったし、ウルザなら首分身とかいう謎技開発しそう。 モテるかどうかは・・・うん。
[一言] 神代竜族すら恐れる、主人公の槍形態【万能農具】の投擲www
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