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麦わら帽子とラズマリア


 ため池にはなんだかんだで魚が入り込んでいるのは、リザードマンたちから聞いている。


 巨大な魚はいないにしても、十センチクラスがそこそこいるのは確認している。


 なので、俺はため池に小船を浮かべて、釣り道具を持って乗り込んだ。


 まだ暑いので麦わら帽子を忘れずに。


 この麦わら帽子は一村住人が作ったものだ。


 ずいぶんと上手くなった。


 一緒に小船に乗ってきたクロにも麦わら帽子をかぶせる。


 クロに被せた麦わら帽子は、俺が作ったもの。


 一村産に比べて、ちょっと不恰好な麦わら帽子だが許してくれ。




 二時間ぐらい経過しただろうか。


 反応がピクリともない。


 ……


 ため池に住むポンドタートルが、魚を追い込みましょうかと言ってくる。


 いや、その気遣いは無用。


 魚はいるんだな?


 よし。


 それを教えてくれただけで十分だ。


 一緒に小船に乗っているクロは、スヤスヤ眠っている。


 うん、それでいい。


 起きて待たれているほうがプレッシャーだからな。




 夕方。


 釣果ちょうかは聞かないでほしい。


 リフレッシュ。


 そうリフレッシュできたからいいんだ。


 悔しくはない。


【万能農具】を使わない俺なんて、こんなものだ。


 とりあえず、新しい竿を作ろうと思う。


 釣り針も、もう少し工夫したほうがいいのかもしれない。


 一切、反応がなかったけど。


 エサは問題ないんだよな。


 ポンドタートルが言うには、釣り針がついていないエサには魚は食いついているそうだ。


 うーむ。


 糸か?


 いやいや、糸はザブトン製の糸だ。


 問題ないはず。


 なにせ使用前にザブトンが糸に釣り針とエサを付けて、簡単に一匹を釣り上げていた。


 とりあえず、ずっと寝ていたクロは元気だ。


 おっと、麦わら帽子を回収だ。


 ははは。


 ツノが麦わら帽子に刺さってるな。


 直して……いや、この麦わら帽子はクロ専用にしよう。


 屋敷の玄関に飾っておくから、日差しのきつい日には被るように。


 と言っても、自分では被れないか。


 ん?


 屋敷の門番をやっているレッドアーマーとホワイトアーマーが、任せろと足をあげてくれた。


 うん、任せた。


 今度、お前たち用に小さい麦わら帽子を作って……………………視線を感じる。


 クロの子供たち、ザブトンの子供たちからの視線を感じる。


 全員分は……無理だな。


 材料はあるが、時間がない。


 夏、もうすぐ終わるし。


 仕方がない。


 クロの子供たち用、ザブトンの子供たち用にいくつか作るから、共同で使うように。


 喧嘩は駄目だぞ。


 ははは。




 夜。


 ルーとティアから、子供たちの分の麦わら帽子を求められた。


 いやいや、一村産の麦わら帽子があるだろ?


 俺が作ったのがいい?


 ……


 悪い気分ではない。


 頑張ろう。






 五村で、祭りを行うことになった。


 建国祭ならぬ、建村祭だそうだ。


 ヨウコの説明だと、村長である俺をたたえる祭りとのこと。


 五村住人の自主的発案なので、止めずに許可を出したそうだ。


 俺の像を作り、それを神輿に乗せて交代で担いで五村を練り歩くそうだ。


 ……


 俺ではなく、創造神とか農業神でお願いできないだろうか。


 俺が彫るからさ。


 頑張って彫るよ。


 始祖さん、ちょっと向こうへ行ってて。



 結果。


 俺の像は五村住人が作る。


 俺は、それが目立たないように創造神や農業神の像を作ることになった。


 俺の像だけよりはマシだが……


 これって、俺と神様が同列に並べられるってことじゃないかな?


 不敬ふけいではないだろうか。


 聖女のセレスは問題ないと言ってくれるが、神様のほうが上の扱いにするように。


 担ぐ神輿に差をつけてもらう。


 あと、俺以外にもヨウコの像を作った。


 人の姿で座っているヨウコを背後から覆うように、九尾狐バージョンのヨウコがいる姿。


 それを見て、ヨウコは大笑いしていた。


 美化し過ぎだそうだ。


 ヨウコの娘、ヒトエは興奮していたけど。


 まあ、このヨウコの像。


 大きくなり過ぎて神輿に乗らなかった。


 くっ。


 計算ミス。


 人の姿のヨウコを等身大にしたのがよくなかった。


 九尾狐バージョンのヨウコも、ほぼ等身大になってしまったからな。


 せっかく作ったので、祭りの間は五村のヨウコ屋敷の前に飾ることに。


 祭りのあとは、五村の転移門の近くに飾られる予定。



 祭りでの俺の出番は最後だけ。


 ザブトンコーディネートの服を着て、締めの挨拶。


 文章は文官娘衆が考えてくれたので、そう難しくはない。


 凄い数の住人に挨拶するのは緊張するけど、無難に終わらせる。


 一応、俺の挨拶で祭りは終わりなのだが、夜はそのまま後夜祭になる。


 賑やかでなにより。






 村で夏の収穫を開始したころ。


 来客があった。


 天使族のラズマリア。


 第一印象、髪の毛ゴージャス、胸もゴージャス、落ち着いた物腰、柔らかい笑顔と言葉。


 天使族というより、女神っぽい。


 彼女がグランマリアの母親だ。


 そして、俺への挨拶が終わると同時にスアルロウと殴り合いを始めた。


 その姿は……女神っぽくはないな。



 春にマルビット、ルィンシァを送りつつ、母親にローゼマリアを生んだことを報告に行ったグランマリアから、会って挨拶はできたと聞いている。


 一緒に来るかなと思ったけど、来たのはスアルロウだった。


 スアルロウのインパクトに圧倒されて、その辺りを詳しく聞いていなかったが……


「お母さまが、ラズマリアさまに用事を押し付けたようです」


 スアルリウ、スアルコウから説明してもらった。


 その用事はどこかの国の祭事への出席で、当初はスアルロウも参加していた。


 祭事の途中で、スアルロウが脱走。


 天使族の里でマルビットの仕事を手伝っていたグランマリア、キアービットを連れて大樹の村に向かった。


 残されたラズマリアは祭事に最後まで付き合わなければならず、さらには大樹の村への案内人もいなくなっていた。


 だから、スアルロウとの殴り合いを終えたラズマリアの矛先は、グランマリア、キアービットに向けられた。


「二人していなくなると、わたくしが困るとはお思いにならなかったのかしら?」


 殴り合いにはなっていないが、怖い笑顔でグランマリア、キアービットを見ている。


 とりあえずだ……スアルロウ、無事か?


 ティアの前に最強だったんじゃないのか?


“孫が見たいパワー”に負けた?


 そうかもしれないが……ちゃんと謝っておくように。


 グランマリア、ラズマリアにローゼマリアを抱かせてあげて。



 でもって、ラズマリアを案内してきたマルビット。


 来るの早いよな。


 いい笑顔だが、あとでルィンシァに叱られないか?


 あとのことは考えない?


 構わないが、その時に助けを求めるなよ。


 ははは。


 とりあえず、収穫の手伝いをするように。


 文句を言わない。


 ドライムだって、ダイコンの収穫を手伝ってくれているんだぞ。


 スアルロウ?


 彼女も収穫を手伝ってくれているぞ。


 ほら、あそこのニンジンはスアルロウが収穫したんだ。


 嘘じゃないって。


 ほら、スアルロウ。


 回復したなら言ってやれ。


「村長は神」


 いや、それじゃなくて。


 マルビット、何を納得したのか知らないが頷かない。





書籍四巻の発売日情報を、活動報告に書いてます。

よろしくお願いします。

(活動報告には、作者名をクリックで)


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― 新着の感想 ―
戦闘狂が生産的なことをしてる…!
[気になる点] ここでは他人様のコメに返信しない主義なんだが 明らかに間違ってる部分があるので >等身大は・・・「人間と同じくらいのサイズに拡大縮小したもの」の意味で使う場合があります ありませんよ…
2023/06/01 17:51 主題歌も耳に残って良い感じだったのに
[良い点] 作品が読みやすく楽しいので何度も読んでしまいます。 [気になる点] 「人の姿のヨウコを等身大にしたのがよくなかった。  九尾狐バージョンのヨウコも、ほぼ等身大になってしまったからな。」の部…
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