プレゼント
追記修正 魔王の様子を追加しました。ドライムの様子を少し変更しました。
俺は竹を切る。
節を利用した簡単な竹コップを大量に作っていく。
竹コップの直径は……二十センチぐらい。
竹コップというより竹小皿かな?
いや、深さが十センチぐらいあるから竹コップで。
……
竹小皿でいいか。
俺が作った竹小皿を鬼人族メイドが洗っていく。
大量に作って、申し訳ない。
客間の片隅では、山エルフがテーブルを組み立てていた。
テーブルは片側に十人、合計で二十人が余裕を持って座れる長テーブル。
その長テーブルの上には幅三十センチ、深さ十センチほどのレーンが設置される。
レーンの形は縦に細長くなったO型なので、競馬コースみたいな形だ。
そのレーンに水を入れ、俺の作った竹小皿を浮かべる。
ちゃんと実験しているから、竹小皿が沈むことはない。
一旦、竹小皿を撤収。
ルーがレーンに魔道具を設置。
水流を発生させる。
数回、水流の調整をした後、ルーはOKサインを出す。
それを受け、俺は改めて竹小皿をレーンに浮かべた。
うん、水流に乗ってほどよく流れはじめた。
次々に竹小皿を入れていき、問題ないことを確認。
完成だ。
「これは何ですか?」
文官娘衆の一人の質問に俺が答える。
「回転レーンだ」
正確には、回転寿司のレーン。
子供たちを喜ばせようと考え、子供たちが好きなことは何だと悩んだ。
そして思いついたのが回転寿司。
発想が古いかもしれないが、山エルフを中心に大人たちが興味津々だから大丈夫だろう。
竹小皿には寿司ではなく、色々な料理を入れる予定だ。
とりあえず可動実験は成功。
鬼人族メイドに料理を頼み、あとは子供たちを呼んでくれば……
テーブルの椅子には、ドース、ギラル、始祖さん、魔王、ドライム、ルー、ティア、妖精女王、ビーゼルが座っていた。
……
夕食にはまだ少し早いけど?
……
期待した瞳に逆らえなかった。
まあ、子供たちが使う前の試験と思えばいいか。
俺は回転レーンのルールを説明する。
一つ、取っていいのは目の前のレーンからだけ。
隣の席に迷惑をかけないように。
一つ、手にした皿は確実に食べる。
お残しはいけません。
一つ、確保できるのは一人一皿。
食べ終わってから次の皿を取りましょう。
お酒は別途、用意します。
以上。
鬼人族メイドたちが料理をはじめたので、やってみた。
「なるほど、料理がこうやって流れていくのか……ほほう。
これは美味そう……いや、次のが」
ドースは流れる料理皿を目で追いかけるが、なかなか手を出さない。
「悩んでいたらいつまでたっても食べれんぞ。
来たのを食べろ」
ギラルは目にした料理皿を取って、食べていく。
「普通のパーティーとは違った味わいがありますね」
始祖さんは、ローストチキン皿、サラダ皿、焼き魚皿、フルーツ皿とバランスよく取っていく。
「見ているだけでも楽しげだ。
子供たちも喜ぶだろう」
魔王は時々流れてくるご飯系の料理皿を中心に取っている。
「好きな物ばかり食べてしまうな」
ドライムは始祖さんとは逆に、ダイコンの煮物が乗った皿だけを集中して取っていく。
と言っても、全ては取れない。
食べている間に流れていくダイコンの煮物を寂しそうに目で追いかけている。
「甘味が五つも連続で流れてくるのって酷いっ!」
ルーは、プリン皿、アイス皿、ハチミツヨーグルト皿、クレープ皿、団子皿を睨みつけ、ギリギリでアイス皿を選択した。
「上流の席が有利ですね」
ティアはプリン皿を迷わず選択。
「席を間違えた」
妖精女王はクレープ皿を取る。
すぐ食べ、団子皿を取る。
早食いだな。
「甘味が全部、お隣で止まるのですが」
最後尾、ビーゼルはお酒をチビチビ飲みながら、流れて来た料理皿を取っていた。
うーむ。
やはり料理を出す位置から一番近い席が有利だな。
ただ、次に何が出てくるかわからないから、判断力が試される。
二番手、三番手ぐらいの席が、次に流れてくる料理をチェックしつつ、先に取られる心配が少ないのでいい席かもしれない。
それはそれとして、時々、料理を出す位置を変えたほうが公平かな。
あと、同じ料理を三つぐらいまとめて流さないと、最後尾まで届かない。
席は、くじ引きで決めるとかどうだろう?
とりあえず、ルールに追加。
一つ、他の人に指示しないように。
他の人にそれを取るなとか、それを食べろとかの指示は駄目。
大人たちが席に座ったのを見た直後から、山エルフたちは新しいテーブルとレーンの製作を開始していた。
「席が足りないと思いまして」
素早く作り上げ、今のレーンと接続。
一気に席が倍になった。
簡単に、しかもレーンの水を抜かなくても接続できたことから、最初から拡張を考えていたようだ。
頼もしい。
そして俺は、竹小皿の追加生産をする。
レーンが広がったからね。
頑張る。
子供たちは回転レーンに目をキラキラさせていた。
座る場所をくじ引きにしようと提案したが、文官娘衆から却下された。
どうしてだ?
「例えば……ビーゼルさまがドースさまの席に座ったとして、料理を取れると思いますか?」
文官娘衆は、最後尾でそれなりに料理を楽しんでいるビーゼルを見ながら、そう言った。
そんなものか。
「そんなものです。
大人には大人の序列、子供には子供の序列があります。
それを乱すことは……」
そう言われると反論できない。
俺としては、子供は子供で仲良くやってくれたらいいが。
席は子供たちに任せた。
子供たちが座る席はビーゼルの隣に。
リリウス、リグル、ラテ、トライン、アルフレート、ティゼル、ウルザ、ナート、ヒイチロウ、グラルの順に座った。
席に座ると、子供たちではレーンの皿に手が届かなかった。
大きな失敗だ。
反省。
子供の横に文官娘衆、ハイエルフ、鬼人族メイドたちが立ち、子供たちの指示で皿を取る。
うん、手間がかかるな。
申し訳ない。
そう心の中で謝っていると、山エルフがさらに新しいテーブルとレーンを持ってきた。
そして接続。
これは……テーブルの幅が短い、子供用のテーブル!
「うっかりしていました。
これで、どうでしょう」
山エルフ、素晴らしい働きだ。
子供たちに席を移動してもらい、食事を再開。
おおっ、やはり指示して取ってもらうよりは自分で取るほうが楽しそうだ。
ははは。
慌てて皿をひっくり返さないようにな。
あと、レーンの水で遊ぶのは駄目だぞ。
回転レーンは大人気だった。
時々、やろうと思う。
ん?
俺も座って食べたらどうだ?
そうだな。
それじゃあ、お邪魔してグラルの横に座る。
うん、自分で作っておいてなんだが、なかなか楽しい。
ただ、一人一皿の縛りは厳しいかな。
三皿ぐらいまでは取ってもいいことにしたい。
程よく楽しんでいる最中。
レーンの竹小皿にザブトンの子供が乗って流れてきた。
ははは。
似合っているが、食事する場所で遊ぶのはよくないぞ。
違う?
遊んでいない?
ザブトンの子供は、俺の前、少しのところで糸を出し、竹小皿を止めた。
?
そんなことをすれば、次の竹小皿がぶつかるぞ。
ザブトンの子供が大丈夫と、足を向けた次の竹小皿には、料理が入っていなかった。
なんだ?
料理の代わりに入っていたのは、大きな鉄のメダルと手紙。
手紙は子供たちからだった。
そこに書かれている内容に、思わず涙してしまった。
大きな鉄のメダルは、ガットに教えてもらいながら子供たちで打ったメダルだそうだ。
危なくはなかったのか?
嬉しいが、危ないのは駄目だぞ。
大きな鉄のメダルには、不恰好ながらも俺の名前と子供たちの名前、それと母親たちの名前が彫られていた。
まだ小さい子の名前もある。
うん、一生大事にしよう。
その日、夜遅くまで子供たちと遊んだ。
深夜。
回転レーンのあるテーブルにはドワーフたちが座っていた。
そしてレーンに流れているのは酒の入ったコップが乗った皿とツマミの入った皿。
「酒のコップに蓋をするのはいいアイディアだ」
「どの酒にするか目移りするの」
「酒は一人三皿までだからな。
取り過ぎるなよ」
「わかっておる。
くーっ、悩む!」
「悩まなくても、村長に言えば好きに飲めるだろ」
「それはそれ、これはこれだ。
この悩むのが楽しいのだ」
「そうかもしれんが、ほどほどにな」
「うむ。
ところで、コップに注がれている酒の量は同じか?
これとこれ、量が違う気がするが?」
「酒の種類が同じなら、同じ量だ。
多少の差はあるかもしれんが、気にするな」
「多少ではないぞ。
明らかに違う」
「だったら、多いほうを選べばいいだろう」
「いや、飲みたい酒はそれじゃないんだ」
「面倒くさいなぁ」
ドワーフたちの酒宴は、明け方まで続けられた。




