ルーとティアの報告
アルフレートとティゼルが戻って来た。
一緒にルーとティアがいるから、見つかったようだ。
アルフレート、怒ってる?
大丈夫?
よかった。
ティゼルは……怒っているな。
すまなかった。
どうして俺が謝るのかって?
ルーとティアがお前たちに同行したのを知っていたからだ。
ははは。
怒ったティゼルもかわいいぞ。
怒るな。
悪かった。
さて、疲れているだろうが報告を頼む。
俺はアルフレートとティゼルから、無事に荷物の輸送を終わらせたことを聞いた。
特に問題らしい問題はなかったようだ。
よかった。
「よくやった。
あとで褒賞メダルを渡す」
一応、俺が勝手に決めたルールで、褒賞メダルは周囲に人が揃っている時に渡すと決めている。
そうしないと、俺が好き勝手に渡せてしまえるからだ。
なので、夕食のあとにでも渡すことになるだろう。
ウルザたちがアルフレートとティゼルの解放を待っているので、最後に二人の頭を撫でて解散にした。
アルフレートとティゼルの話では問題無かったが、ルー、ティア、ガットの報告ではそうではなかった。
まず、ガットの報告。
ハウリン村ではアルフレートとティゼルを村長と同格として扱い、丁重に持て成した。
アルフレートとティゼルの応対も問題なく、宴会も順調に経過。
問題は夜。
アルフレートの寝所に潜り込もうとする若い女性たちが出た。
ガットは夜を徹し、その若い女たちをアルフレートに気付かれないように排除したと。
よくやった。
素晴らしい働きだ。
感謝する。
……
ところで、ティゼルのほうは?
鬼人族メイドが見張っていたし、村長の怒りを買うのが怖いから近付く者はいなかったと。
なるほど。
しかし、それならアルフレートにも同じように考えてほしかった。
息子が男になるのはまだ早い。
え?
あ、女性が近付くと言っても添い寝ぐらいの感覚ね。
すまない。
考え過ぎてしまった。
ルーとティアの報告は、アルフレートとティゼルの頑張りを報告してくれている。
たぶん、少し大袈裟に言っている部分もあるだろうけど、概ね問題なし。
そう思ったのだけど。
万能船には、ルーとティア以外にも実はもう一人というか……もう一頭、密航者がいた。
クロの子供だ。
うん、アルフレートとティゼルが心配だったのはわかるが、密航はよくないぞ。
そして、俺の捜索から隠れとおしたのか。
凄いぞ。
でも、アルフレートとティゼルを見るのに夢中になって、ハウリン村の者にいることがバレて大騒ぎになったと。
そんなに怖くないのになぁ。
よしよし。
え?
その騒ぎはアルフレートとティゼルが収めたのか?
それは凄いな。
あとで褒めておこう。
しかし、アルフレートとティゼルからその話は出なかったのはなぜだ?
この疑問に答えてくれたのはガット。
ハウリン村の村長が、アルフレートとティゼルにクロの子供を見て大騒ぎになったことを伏せるようにお願いしたそうだ。
俺が怒ると思ったと。
なるほど。
……
なんだか俺、想像以上に怖がられてないか?
気のせいか?
ガットの弟子は無事に発注を終えたし、ガルフの息子も妻の両親に歓迎されたと。
こんなものかな?
……
よし、問題はなかった。
そういうことにしよう。
アルフレートとティゼルが戻ってきたので、俺はルーとティアと相談して、子供たちとのコミュニケーションを増やす案を考えた。
子供たちの話題に俺とルー、ティアがあまり出ないのを気にしてだ。
そして結論。
一緒に遊ぶのが一番。
人気のハクレン、妖精女王、ヨウコ、グランマリア、キアービットは、なんだかんだと子供たちと遊ぶ機会が多いらしい。
ハクレンと妖精女王はわかるし、グランマリアは妊娠発覚後から子供たちの相手をよくしていた。
ヨウコとキアービットは遊んでいるイメージがないと思っていたのだけど、違った。
ヨウコは夜、五村から帰って来たあとで子供たちと遊んでいるそうだ。
キアービットはなんだかんだと面倒見がいいらしい。
反対に、ルーとティアは子供たちと遊ぶことは皆無。
何か仕事をしているか、部屋に篭って研究をしているので、自分の子供たち以外との接点は食事の時ぐらいしかない。
まあ、ルプミリナとオーロラの世話があるから、仕方がないと言えば仕方がないのだが。
なんにせよ、子供たちと一緒に遊んで人気者になろう作戦、開始だ!
まず、ルーとティアが行った。
……
ハクレンの人気には勝てなかった。
そうだよな。
一緒に遊ぶ大人はそんなにいらないよな。
ハクレンと一緒にいるところに行ったのが間違いだった。
だが、俺には秘策がある。
「一緒に料理を作ろうか」
うん、凄い食いつきだった。
ルー、ティア、ハクレン、手伝ってくれ。
母親たちの甘味禁止期間も終わったので、俺はお菓子を作ろうかと思っていたのだけど、子供たちは普通の料理を望んだ。
時間が夕食が近いからかな。
子供たちの料理技術は皆無。
なので、料理入門としてまずは簡単な鍋料理を。
出汁を取り、食材を切って放り込めばいいだけだからな。
よーし、ルーとティアの班に分かれるように。
ハクレンは俺と一緒に全体を見てくれ。
あと、アンに今日の夕食の変更を忘れずに伝えておく。
今日は子供たちが作った鍋だ。
味?
美味しかったよ。
大根おろしを大量に使った、みぞれ鍋。
冬にぴったりだ。
うん、まあ、ちょっと具材が大きかったりするぐらいは愛嬌だ。
大丈夫、砂糖と塩を間違えるようなことはなかったから。
ただ、考えてみればルーもティアもそれほど料理しないんだよな。
そこを考慮すべきだった。
一番活躍したのは、ナート。
家で母親のナーシィに教えられているらしい。
包丁捌きが見事だった。
……
もう少し、子供たちが料理をする機会を増やそう。
アンたちがいるから料理はしなくても大丈夫だけど、何があるかわからないしな。
できないよりは、できたほうがいい。
俺はデザートのアイスクリームを食べながら、そんなことを考えた。
春まであと少し。
遅くなりました。