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ローゼマリアとアルフレートの出発


 グランマリアは娘を産んだ。


 母子ともに健康。


 よかった。


 命名、ローゼマリア。


 名付けは俺ではなく、グランマリア。


 ティア、マルビット、ルィンシァ、と相談した結果だそうだ。


 俺に不満はない。


 ところでクーデル、コローネ。


 ローゼマリアが可愛いのはわかったから、そろそろ俺に抱っこさせてくれないかな。




 グランマリアが育児に慣れ始めた頃、シャシャートの街までグラップラーベアを運んでくれたケンタウロス族たちとガルフが戻って来た。


 予定より遅かったけど、何かあったのかな?


 ガルフに事情を聞いた。


「すみません。

 実はシャシャートの街でイベントが行われ、それに付き合っていました」


 イベント?


「まず、迷宮ポルチーニの試食会です」


 なかなか楽しそうだが、カゴ一つ分しか渡してないだろ?


 どれぐらいの規模でやったんだ?


「街全体です。

 そして、負傷者が続出しました」


 え?


 なんでも、ゴロウン商会が迷宮ポルチーニを入手したという情報がすぐに流れたそうだ。


 ガルフたちが周囲の目を気にせずにマイケルさんに迷宮ポルチーニを渡したことが原因。


 ゴロウン商会に直接的な圧力をかける者はいなかったが、マイケルさんが独占はよくないと試食会をすることにしたらしい。


 迷宮ポルチーニをこれでもかと細かく切って、大鍋で煮てスープを作った。


 それを無料で配ったら、奪い合いが起きてしまったと。


 ……


 迷宮ポルチーニを大鍋で煮るのはやってないな。


 その食べ方が美味いのか?


「すみません。

 俺たちは村で食べてますから、試食会では遠慮したので味は……」


 そうか。


 まあ、あとでマイケルさんに謝罪をして、味の感想を聞いておこう。


「試食会の次は、グラップラーベアの品評会とオークションが行われました」


 品評会とオークション?


 オークションはわかるが、品評会ってなんだ?


 いや、品評会の意味は知ってるぞ。


 同じ系統の品を集めて、評価することだろ?


 彫り物とか、鉄器とか、武具とか、ジャンルは色々だろうけど。


 グラップラーベアの品評会って、俺たち以外にもマイケルさんにグラップラーベアを渡した者がいるのか?


「いえ、そうではなく。

 村長の狩ったグラップラーベア一頭だけで、品評会が行われました」


 えーっと……


 それは品評会ではないのでは?


「そうですね。

 シャシャートの街にいる偉い学者とか先生とかが、本物のグラップラーベアかどうかを調べる会でした。

 あのサイズなので持ち逃げは無理でしょうけど、一部だけでもと暴挙にでる者がいるかもしれないので、俺たちが警備しました。

 あと、見物客が押し寄せたので、列整理も」


 た、大変だったんだな。


「ええ、ですが本当に大変だったのは、グラップラーベアが本物だと認定されたあとで……」


 なにかあったのか?


「いえ、俺が退治したと思われたようで……すみません。

 倒したのは村長だと何度も言ったのですが、信じてもらえなくて」


 ははは。


 気にするな。


 それに、ガルフならグラップラーベアぐらい倒せるだろう。


「そ、そこまで俺に期待を…………

 ありがとうございます!

 いつか、必ず倒してみせます!」


 た、頼もしいが、なにやら受け取り方のニュアンスが違う気がする。


 無理は駄目だぞ。


 それで、マイケルさんの反応はどうだったんだ?


「ああ、そうでした。

 その前に確認です。

 グラップラーベアと迷宮ポルチーニ、マイケル殿への販売なのですか?

 それとも贈り物で?

 代金の話を聞いていませんでしたから」


 基本、贈り物のつもりだぞ。


「そうですか。

 マイケル殿は喜んでいました。

 それで、ゴロウン商会が所有する大型帆船を一隻、村長に進呈しんていすると言付ことづかっています」


 え?


 なんで?


「贈り物にしては、高額過ぎるからかと。

 大型帆船、見せてもらいましたが最新型でした。

 必要なら船長、船員も付けるそうです」


 えーっと……


 そうか。


 まあ、じゃあ受け取っておこう。


「マイケル殿のお言葉、確かに伝えました」


 ところで、さっきの質問だが販売だった場合はどうなったんだ?


「大型帆船の物納でお願いしますと」


 ははは。


 マイケルさんに気を使わせてしまった。


 迷宮ポルチーニの件と合わせて、謝っておこう。


 その時は、ブラッディバイパーの卵でも渡そうかな。



 とりあえず、運んでくれた者たちを集めて宴会だ。


 気にするな。


 俺のためでもある。


 俺の心の負担を軽減するためにも、参加してほしい。


 うん、お願い。





 ガルフたちが戻って来て数日。


 褒賞メダルをアルフレートとティゼルが獲得できるように、ハウリン村に荷物を運ぶ仕事のお手伝いを頼んだ。


 お手伝いと言っても、俺の名代みょうだいとしてハウリン村の村長に挨拶しなければいけない。


 航程こうていは、余裕を持って三泊四日。


 できるだろうか?


 ルーが大丈夫と言っているが、俺は少し不安だ。



 ハウリン村までの移動は、万能船。


 ハクレンかラスティのほうが速いのだけど、グラップラーベアの輸送の時の埋め合わせだ。


 この移動には、船員の悪魔族と夢魔族、荷物運び要員のリザードマンたち、アルフレートとティゼルの身の回りの世話をする鬼人族メイド二人以外に、ガット、ガットの弟子二人、ガルフの息子が同行する。


 ガットは、ハウリン村の村長の息子なので、俺が頼んだ。


 アルフレート、ティゼルが失敗したときのフォロー要員だ。


 いや、アルフレート、ティゼルを信頼してないわけじゃないぞ。


 ハウリン村の村長に迷惑をかけられないからだ。


 ガットの弟子たちは、ハウリン村に行く機会があるならと同行を申し出てきた。


 ハウリン村で何か発注するらしい。


 ガルフの息子は、妻の両親に妻からの手紙を届けに行くのだそうだ。


 内容は知っている。


 ガルフの息子の妻が妊娠したのだ。


 おめでとう。


 ガルフの息子は行きたくなさそうだが、向こうの両親に妊娠したら教えると約束してしまっているらしい。


 頑張れ。


 ちなみにだが、万能船の船長にはマーキュリー種の一人が就任予定なのだが、まだ就任していない。


 なので、今回はアルフレートが船長。


 ティゼルには副船長を任せた。


 頼んだぞ。


 ……


 あ、出発は少し待て。


 船室と船倉をチェック!


 はい、ウルザ発見。


 ナート発見。


 マルビット発見。


 三人を回収、屋敷に戻す。


 アルフレートたちは遊びに行くんじゃないからな。


 信じて待っていてやってくれ。


 マルビットは万能船に乗りたかっただけだろう。


 アルフレートたちの邪魔はしないように。


 帰ってきたら、いくらでも乗っていいから。


 これ以上抵抗するなら、ルィンシァを呼ぶぞ。


 わかればよろしい。


 では、出発。


 頑張ってくるように。




 ……


 船倉にルーとティアが隠れていたけど、俺は見逃した。


 気持ちはわかる。


 やっぱり、心配だよな。


 頼んだぞ。


 そして、帰って来た時にはアルフレートとティゼルの勇姿を教えてほしい。


 ルィンシァが隠れてなかったのは、ティアからオーロラを預かったからだろうなぁ。


 ルプミリナは、アンが預かっている。



 さて、俺はルーとティアの不在を、子供たちにどう誤魔化すかだな。


 子供たちにルーとティアが同行したことがバレると、アルフレートとティゼルにもバレる。


 それはよろしくない。


 避けたい。


 なので、頑張って誤魔化そうと思う。




 ルーとティアのこと、ほとんど話題にならなかった。


 ハクレン、妖精女王、ヨウコ、グランマリア、キアービットが人気だと知った。


 アルフレートとティゼルがいないからかもしれないが、二人が帰ってきたら子供たちともう少し触れ合うように言っておこう。


 あと、俺も子供たちと触れ合う機会を増やそう。


 そう思った。





 アルフレート  ルーの息子。

 ティゼル    ティアの娘。

 ルプミリナ   ルーの娘。

 オーロラ    ティアの二人目の娘。


 ウルザ     ハクレン、村長の養女。

 ナート     ガットの娘。

 マルビット   キアービットの母親。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 相変わらず、謝る前提なのがねー。 ティアの母があれだけ言っても、暖簾に腕押し
[良い点] やっぱりガルフでもグラップラーベアはまだ無理なのか…
[一言] ナートは許してあげて。 親の故郷に里帰りみたいなものだから
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