日常に戻る
大樹の村に戻ってきた翌日。
子供たちは謹慎が解けたので、屋敷内を元気に走り回っている。
外は寒いから、屋敷から出ちゃ駄目だぞ。
あの猛吹雪の日ほどではないが、外は凄く寒い。
屋敷が大きくてよかった。
ルィンシァに言われた子供たちへの褒美は、褒賞メダルで渡すことにした。
色々考えたが、子供扱いをしないのが一番の褒美だと思ったからだ。
なので、戦いに参加した子供たちには褒賞メダルを三枚ずつ渡すことに。
現場にいなかったアルフレート、ティゼルには渡さない。
怒るかなと思ったけど、納得顔だった。
よかった。
二人には、どこかで褒賞メダルを獲得できる機会を作ると伝えておいた。
五村にいなかったヒイチロウ、グラルにはドライムの巣の防衛を手伝ったということで二枚ずつ渡すことに。
甘いかなと思ったけど、ヒイチロウからはデッカイ熊をもらったしな。
そしてドライム、ハクレンから頑張った二人を褒めてやってほしいという言葉もあったからな。
それはかまわないが、俺としては二人は見学かなと思っていたのだが?
戦いに参加させるのはどうなんだ?
まあ、ドライム、ハクレンがいたら大丈夫だろうけど。
ちなみに、あのデッカイ熊はキングベアという冬場に大暴れする凶暴な熊らしい。
屋敷の玄関のところに飾ったら、ウルザが羨ましそうにしていた。
勝手に森に入っちゃ駄目だからな。
子供たちへの褒賞メダル授与は、昨日の夜に終わらせている。
冬のあいだに、じっくりと褒賞メダルの使い道を考えてほしい。
考えてほしいんだ。
わかった。
はっきり言おう。
交換は武具と酒以外に制限する。
大きなブーイングだな。
自分の武具がほしいのはわかるが、お前たちはまだまだ成長するだろ。
今、交換するとすぐに身体に合わなくなるぞ。
武具は俺が用意したのを使うように。
褒賞メダルを俺が取り上げることはないから、じっくりと使い道を考えるように。
昨日のことを思い出しながら、俺は台所に向かう。
五村でマイケルさんから買った海産物を使った料理を考えるためだ。
まあ、考えると言っても、刺身にするか、焼くか、揚げるか、鍋に放り込むかの分類をするだけだ。
正直、見たことがない魚もあるので、鬼人族メイドたちと相談しながら決めていく。
これはタラっぽいな。
鍋で。
これは……どう見てもヒラメだな。
二メートルぐらいあって、エイみたいだけど。
刺身でいってみようか。
あとはムニエル……小麦粉をつけてバターで焼くと美味いはずだ。
たぶん。
ウナギは蒲焼で。
アンコウっぽい魚があるな。
これは味に期待してもいいだろうか?
調理方法?
もちろん、鍋だ。
こっちの小さいのは干して使いたいな。
ルーに乾燥機みたいな魔道具を作ってもらおうか。
おっと、今のルーは研究禁止中だった。
禁止させておいて、誘惑するのはよろしくない。
頼むのは禁止期間が終わってから。
それまでは……日干しだな。
さっそく、日干しをやってみる。
板を用意。
板の上に干したい魚を並べる。
板に太陽がよく当たるように角度調整。
以上。
……
アイギス、これはお前のためのエサ台じゃないんだ。
すまない。
ザブトンの子供たちの数が揃っていれば、網を作ってもらうのだけど。
今は冬なので無理はさせられない。
姉猫のミエルとウエル、屋敷の中からこっちを見ているがなにかな?
外は寒いから屋敷から出てこないのだろう?
干している魚を興味津々で見ないでほしいな。
ちゃんとお前たち用に、魚を確保しているんだぞ。
盗み食いは別?
なるほど。
気持ちはわかるが、盗んだらジュエルに言いつけるからな。
ははは。
では、見張りを頼んだ。
魚の次は、モヤシとアスパラ。
大樹のダンジョンの中に作っているモヤシ畑、アスパラガス畑に向かう。
最初は俺が【万能農具】で作っていたが、今は大樹のダンジョンで生活するアラクネのアラコたちが育てている。
なので畑というには少し変なのだが、最初にそう名付けてしまったから仕方がない。
モヤシ畑から、モヤシを少し分けてもらう。
アスパラガスは少しタイミングが悪かったようだ。
なにかよくわからないキノコ畑のキノコは遠慮しよう。
色が毒々し過ぎる。
アラコたちは食べても大丈夫なのか?
ピリッとして美味しい?
そのピリッという部分が怖い。
ルーに調べてもらうから、サンプルに一つもらおう。
ルーに調べてもらうまでもなかった。
鬼人族メイドが凄い顔をしていた。
「迷宮ポルチーニです。
別名“魔王殺し”」
凄い名前だな。
魔王すら殺すのか?
「美味しくて、食べ過ぎで倒れたことからその別名がつけられたようです」
あれ?
毒キノコじゃないの?
「毒ではありませんが、とても貴重で……それ一本だけですか?」
ダンジョンの中に、びっしり生えていたけど。
鬼人族メイドたちが数人、カゴを抱えて飛び出していった。
アラコたちの分は残すようにお願いしたい。
夕食に出た迷宮ポルチーニの炒め物は絶品だった。
確かに魔王が食べ過ぎで倒れるというのもわかる。
ただ、毒々しい色がネックだな。
赤と青と黒のマーブル模様のキノコって……
俺は食べ過ぎで倒れることはなさそうだ。
一緒に炒められたモヤシのほうが好み。
夜。
一人でベッドに入る。
ルーたちが子作り禁止中なので、他の者も遠慮しているのだ。
この件に関しては不用意なことは考えない。
無心だ。
俺がベッドに入ってしばらくすると、姉猫のラエルがやってきた。
どうした?
珍しいな。
一緒に寝るか?
違う?
俺を呼びに来た?
……
俺はバッと起きた。
日干しにしていた魚、出しっぱなしだった。
回収しないと。
寒いが、仕方がない。
起きている鬼人族メイドに手伝ってもらい、日干しにしていた魚を回収。
……
干してた魚の数が足りない。
姉猫たちをみるが、私たちじゃないとジェスチャー。
じゃあ、誰が?
姉猫たちの案内に従うと、干した魚を火鉢で炙っているマルビットを客間で発見した。
近くのコタツの上にはお酒がある。
……
俺はマルビットに近付き、ゲンコツ。
これで許す。
寝るつもりだったが目が完全に覚めてしまった。
マルビットに付き合って酒でも飲もう。
だが、さすがに夜、マルビットと二人で飲むのは色々とまずいだろう。
起きてる者を……フローラ、ヨウコを発見。
誘う。
四人で飲んでいたら、ルー、ティア、ハクレン、ライメイレン、ルィンシァもやってきて、ちょっとした宴会になってしまった。
まあ、楽しければいいか。
そしてそのまま寝て朝を迎えてしまい、子供たちに見つかった。
すまん。
大人だけで遊んでいたわけじゃないんだ。
いや、確かにダーツとかミニボウリングとか、麻雀とかやったけど。
わかった。
今日の夜は子供たちのためのパーティーをするから、それで許してくれ。
ははは。
ちょっとぐらいの夜更かしは構わないぞ。
徹夜は駄目だけどな。
そしてドノバン。
悲しそうな目で俺をみないでくれ。
いや、別に誘わなかったわけじゃなくてだな、夜遅かったし……
すまん。
わかった。
ドノバンたちのためのパーティー……いや、宴会をやろう。
今日の夜は子供たちのため。
明日の夜は大人たちのために。
そういうことになった。
指摘を受け、迷宮カエンタケを迷宮ポルチーニに改名しました。
すみません。