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五村三日目


 五村ごのむらの警備隊はそれなりに大きな組織だ。


 警備主任であるピリカをトップに、千四百人ぐらいで構成されている。


 警備隊は十七の分隊にわかれ、五村の各所に建設されている隊舎に駐在している。


 子供たちと争ったのはピリカ直属の第一分隊と中腹ぐらいを見回る第十六分隊。


 第一分隊は、ピリカの弟子たちの大半が所属しており、他の分隊を指導する立場にある。


 第十六分隊はその指導を受けるというか、第一分隊の森での訓練に同行するタイミングで子供たちと争ったそうだ。


 定数は第一分隊百人、第十六分隊五十人なのだが、分隊が常に一緒に行動しているわけではなく、さらには朝番、昼番、夜番の三交代制なので常に全員が揃っているわけではない。


 子供たちと争ったときは、総勢で四十人ほどだったらしい。


 対して子供たちは倍の八十人。


 子供たちを相手に本気を出して殴ったり蹴ったりすることをためらった結果だとは思うが、警備隊が負けるのはよろしくない。


 なのでガルフがおもいっきり叱っている。


「目的が告白だったからよかったものの、その隊員を狙った暗殺だった場合はどうするのだ!

 敵が子供だろうがなんだろうが、警備隊の職務を妨害する者に対しては容赦なく取り締まる!

 忘れるな!」


 警備隊にはそれだけの権限があるし、責任もある。


 頑張ってほしい。


 場所は五村の近くの森の中。


 警備隊の訓練が行われている場所だ。


 さすがに森の中にヒトエを連れて行くのは遠慮して、ヨウコのもとに置いてきた。


 俺の同行者は、ルィンシァとピリカ、それとエルフの樹王と弓王。


 ちなみに、ピリカはここに来る前に徹底してガルフにしごかれている。


 剣士としてウルザに負けたらしいが、相手が子供だからと油断したのだろう。


 まあ、お互いに怪我がなくてよかった。


 ただ、子供たちに戦術面で警備隊が負けたというのはどうなのだろう。


 陽動に引っ掛かって、横から突き崩されたって……


 この辺りは、まだまだ勉強が必要なのか?


 いや、警備隊は街の警官みたいなポジションだからな。


 集団戦が得意じゃなくても構わないのかもしれない。


 ……


 いや、暴徒の鎮圧とかしてもらいたいから、ある程度の集団戦は必須か。


 今後の課題として頑張ってもらおう。




 ガルフが警備隊を叱っている時、俺は森の中をうろつく。


 大樹の村の周辺にある森と違って、それなりに明るい。


 前は魔物、魔獣が多い場所だったらしいが、今は冒険者たちや警備隊が退治してかなり数が減っているらしい。


 だが、魔物や魔獣がいなくなったわけではないので油断は禁物。


 おっと。


 右からやってきた変な魔物を【万能農具】のクワで土にしておく。


 俺が森の中をうろついているのは興味本位だが、遊んでいるわけではない。


 この辺りでしか採取できない草木をエルフの樹王と弓王に教えてもらっているのだ。


 まあ、冬なので木が中心だけど。


 俺が気になったのは、香木と呼ばれる香りの良い木々。


 おもわずそのまま匂いを嗅いでみたけど、火にくべないと良い香りはしないらしい。


 残念。


 そしてまた魔物。


 それなりに残っているんだな。


 倒した魔物は食用には向かないらしいが、素材として使えるらしいので持ち帰る。


 樹王と弓王が運んでくれた。




 五村に戻ると日暮れ前。


 五村は南にあるが、冬は寒いと感じる。


 大樹の村に比べれば、暖かいけど。


 俺の五村での予定はすべて消化した。


 あとは帰るだけなのだが、帰るにもそれなりの儀式が必要らしい。


 俺は大袈裟にしないようにだけ伝えて、ルィンシァに任せたので詳細は知らない。


 日が暮れるまで五村を視察……と思ったら、周囲が騒がしくなった。


 なにかなと思ったら、周囲は空をみている。


 上?


 ……


 ああ、ヒイチロウだ。


 少し後ろにグラル、ハクレン、ドライムがいる。


 ドライムの巣に来ていた魔物や魔獣は撃退できたのだろう。


 ヒイチロウは、デッカイ熊を掴んで飛んでいる。


 そのヒイチロウが俺に気づいた。


 急降下し、俺の前に着地。


 綺麗な着地だが、着地前にデッカイ熊をほうり投げたのは駄目だぞ。


 続いてグラル、ハクレン、ドライムが着地する。


 全員がドラゴンの姿なので迫力があるが、狭いので人間の姿に戻ってほしい。


 ヒイチロウが子供の姿に戻り、たたっと俺のところにやってくる。


 よしよし。


 かかえてやった。


 大きくなったな。


 グラルが続く。


 ははは。


 子供二人ぐらいならなんとかなる。


 遠慮するな。


 グラルも抱えてやる。


 俺に抱えられて喜んでいるのではなく、ヒイチロウと同じことをされているのを喜んでいるようだ。


 ハクレン。


 さすがに無理だ。


 無理だと言ったのに、無理矢理に俺の背中に乗ってきた。


 甘えているな。


 そんなに長期間、離れていたわけじゃないだろう。


 ドライム。


 私も抱きついたほうがいいだろうかとか、真剣な顔をして言わないでほしい。



 ヒイチロウが運んでいたデッカイ熊は、ヒイチロウが一人で退治したらしい。


 それを俺に見せるために、運んできたそうだ。


 五村じゃなくて大樹の村に持って行けばと思ったが、避難解除の知らせをしていなかったな。


 まあ、転移門で運べば問題ないだろう。


 マイケルさんがデッカイ熊を欲しそうにしているが、駄目だぞ。


 ヒイチロウが俺のために持ってきてくれたんだ。


 大樹の村で三日ぐらい飾って、そのあとは大事に調理する。


 マイケルさんには、別のデッカイ熊を販売してあげよう。


 ははは。




 儀式は村議会場で簡単な立食パーティ。


 たくさんの挨拶が来ると思ったけど、マイケルさん以外は来なかった。


 会場にはそれなりの人がいるが、こんなものなのだろうか?


 遠巻きに、怯えた目で見られているような気がするが?


 俺が目線をやると、さっと首を別方向に向けてるよな。


 首を痛めるぐらいに。


 俺、嫌われた?


 ルィンシァにこの状況は大丈夫なのかと聞いたら、大丈夫と答えてくれた。


 それどころか、最上だと。


 どういうことだろうか?


 なんにせよ楽でよかった。


 大樹の村に帰ろう。





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― 新着の感想 ―
[一言] あー、主人公完全にポンコツ思考かぁ。 ずっとドラゴンは厄災レベルって、聞いているのに。 そんなドラゴンが複数体来たら、国が数個亡くなる話し。
[一言] 樹王狩王達から森での戦いっぷりを聞かされ、目の前では人に変化出来、巨熊を狩るほどの力を持つドラゴンが(多分)父さんと言いながら抱きついて、他のドラゴン達とも気安く会話する……そらアンタ、多分…
[一言] この世界の住人にとってドラゴンは最上の脅威。 そのドラゴンと対等以上に関われる人物を目撃したら、目を合わせることすら烏滸がましいと思うんだろうな...。 しかもそのドラゴンが村長の家族であり…
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