458/978

父親になったと改めて実感する

最後、二行追加。

　一村（いちのむら）、二村（にのむら）、三村（さんのむら）と連絡を取り、無事を確認。

　建物も大丈夫だったらしい。

　除雪作業を一旦、他の者に任せて俺はアルフレートの部屋に行って謝罪した。

「さっきはすまなかった」

　正直、五村（ごのむら）の件ではアルフレートは問題ないと思っている。

　周囲もそうなるように動いたのだろう。

　実際、村長としてアルフレートを叱る理由はなかった。

　だが、周囲に庇（かば）われて、アルフレートだけ何も悪くない状態が健全とは俺は思えない。

　だから、親として叱った。

　リリウス、リグル、ラテ、トライン、お前の弟たちが危ないことをするのを見逃したのだ。

　兄として反省するように。

　俺が謝ったのは、その辺りの説明を省（はぶ）いたことだ。

　その辺りを噛み砕いてよく説明しておく。

　ああ、しょんぼりする必要はないぞ。

　俺が叱った理由をちゃんと理解して、次に活かしてくれればいいんだ。

　お前の謹慎は少しやりすぎだと思うが、除雪作業中に子供たちがうろうろするのは危ないからな。

　見ただろ？

　あの凄い雪。

　ただ、まだ建物の上や木の上に雪があるからな。

　落ちてきたら危ないんだ。

　謹慎は三日と言ったが、除雪が終わったら出すから。

　今は部屋でじっとしていてくれ。

　ん？

　ああ、これから他の子供たちのところにも個別訪問。

　もちろん、ウルザやナートのところにも行くぞ。

　心配するな。

　アルフレートは来年九歳。

　俺が親になって九年ということだ。

　まだまだ新米。

　子供を育てるのって大変だ。

　子供たちの部屋を回ったあと、休憩。

　疲れた。

　アルフレート以外、アルフレートが謹慎になったことが不満だったようだ。

「兄として、弟たちが危ないことをするのを見逃したのが悪い」

　そう言っても納得してくれなかった。

　俺が困っていると、見かねたアンがやってきて言い換えてくれた。

「アルフレートさまは、兄として弟たちの失態の責任を取ったのです」

　その言い方はどうかと思ったが、それで子供たちは納得していくので訂正しにくい。

　子供の前で、大人が何度も言葉を翻（ひるがえ）すのはよくないって聞くしな。

　おっと、“失態”の言葉を重く受け止め過ぎるな。

　気楽に、気楽にだ。

　ははは。

　一番の難敵はウルザだった。

　ハクレンがいないからな。

　いたらハクレンに任せるのだが、いないのだから仕方がない。

　俺が父親として受け止める。

「大樹の村のことを思っての行動なのはわかっている。

　だが、それをお前たちだけで対処しようとしたのが駄目なんだ。

　近くにいる大人に相談する。

　どうして、それができなかった？」

「……ごめんなさい」

　ウルザの謝罪の言葉を聞くのに一時間ぐらいかかった。

「ゴール、シール、ブロンの三人がいなくなって、急にお前がみんなの姉の立場になったからな。

　お前は頑張った。

　よくやったぞ。

　ただ、次からは周囲の大人に頼るようにな」

　俺はウルザを強く抱きしめた。

　……本当に大変だった。

　任せっぱなしにしているつもりはないが、母親たちに改めて感謝だな。

「村長、除雪の第一段階が終了しました」

　ハイエルフの一人が報告に来てくれた。

　少しのあいだ抜けるだけのつもりだったのに、長時間任せる形になってしまって申し訳ない。

　除雪の第一段階は、居住エリアである程度の移動ができるように除雪することだ。

「ご苦労様。

　今日はこれぐらいにして、残りは明日にしよう」

　そろそろ日が暮れる。

「承知しました。

　牧場エリア、果樹エリアに行っている者たちに連絡してきます」

「よろしく。

　滑らないようにな」

　夜。

　五村に避難していた母親たちを集めた。

　今回の一件、完全に母親たちの監督不行き届き。

　確かにルーが子供たちの監督ではある。

　なのでルーには監督責任として研究十日の禁止を言い渡している。

　ルー、アルフレートたちを信頼したのかもしれないが、慣れない場所だ。

　誰かが常に見張るか、誰かの目の届く場所にいさせるべきだった。

　言葉は悪いが、アルフレートたちを信用してもいいが、信頼してはいけない。

　まだ子供だ。

　これは子供たちのいる場では言えないからな。

　今回の一件、全員の連帯責任とする。

　ただし、妊娠中のグランマリア、グランマリアについていたアン、その場にいなかったハクレンの三人はセーフ。

　ハクレンはまだ戻って来てないしな。

　残りの者に罰を与える。

「子作り禁止、一ヶ月」

　場がどよめいた。

　うんうん、酷い罰なのはわかる。

「安心しろ。

　俺も一緒に罰を受ける」

　母親だけが悪いわけじゃない。

　村のためとは言え、一緒に避難しなかった俺も悪い。

　だから、俺も罰を受ける。

　俺も子作り禁止、一ヶ月だ。

　そう伝えたら、俺は母親たちに囲まれて、その場で正座させられた。

「母親の連帯責任、父親の責任も納得しました。

　ですが罰の内容に納得ができません。

　話し合いましょう」

　あれ？

　セリフの練習したの？

　全員が声を揃えてそれだけのことを言えるのっておかしくない？

　え、ご、誤魔化しているわけじゃ……

　話し合われた。

　母親たちの罰、子作り禁止十日、甘味禁止三十日。

　父親の罰、五村出向三日。

　俺は五村で知名度が低すぎるそうだ。

　頑張ります。

罰の説明

　五村出向　　　　　　五村に行って働く。