男爵領と猫のお見合い
俺はビーゼルに、グルーワルドとフカの爵位を返上することを相談した。
勝手な言い分だと思うが、なんとかならないだろうかと。
結論、なんとかなった。
事前にラッシャーシがビーゼルに話を通していたらしい。
さすが文官娘衆。
ありがとう。
でも、それなら先に一言、欲しかった。
ビーゼルとしては、俺が許可すれば問題なしの姿勢だった。
手間をとらせて申し訳ない。
はいはい、フラシアと遊んでてください。
ん?
お爺ちゃんよりパパのほうがいい?
ははは、そうかそうか。
……
ビーゼル、睨むんじゃない。
純粋な娘の気持ちを優先するのだ。
あ、こら、ビーゼル。
無理矢理に仕事の話を続けるな。
くっ、フカの話か……仕方がない。
フラシアはホリーに任せる。
「それで、フカの話って?」
「ポロ男爵領の話になります。
戦場になっていたのは知っていますね?」
「ああ、知っている」
ビーゼルは完全に仕事モードだ。
「その領地なのですが、実は先年に戦線が西に移動し、奪還いたしました」
「そうなのか?
それなら、フカたちに伝えてやれば戻りたがるんじゃないのか?」
「ラッシャーシからすでに伝わっているかと。
その上で男爵位の返上という流れになったと思います。
領地に拘れば、再編成の邪魔になりますから」
「再編成?」
「ええ。
長年、戦場になっていましたので……
男爵が領地に戻ったところで独自の力では復興できないでしょう。
国で一括管理し、復興するための再編成です」
「それじゃ、男爵領は?」
「そのまま消滅です。
目立つ功績があれば、新しい領地を与えられることもありますが……」
フカに目立った功績はないと。
「その話を俺に聞かせたのは?」
「ポロ男爵は、魔王国の領主の一人であることよりも、三村の住人の一人であることを望んだようです。
魔王国の王政に関わる者として不甲斐なさを謝罪します。
そして、どうかポロ男爵のことをよろしくお願いします」
「もちろんだ。
フカはすでに村の住人だ。
しかし……」
この話は、別に今じゃなくてよかったよな?
そんなにフラシアが俺を選んだことが気に入らなかったのか。
俺、父親だぞ。
勝って当然。
あと、謝罪するのはビーゼルじゃなくて、あっちで猫と遊んでいる魔王がすべきじゃないだろうか?
魔王が簡単に謝罪するわけにはいかないから、ビーゼルが代わりに謝ってくれたのかな?
魔王、猫に謝っているけど。
あれ?
ビーゼルは?
ビーゼルの姿が消えた?
俺の近くにいたラッシャーシの指す方向をみると、ホリーからフラシアを受け取ろうとするビーゼル。
……
ラッシャーシ、俺は全力でフラシアのもとに行こうと思うが、どうだろう?
「クローム伯にとっては、ここでしか会えない孫ですから。
少しはお譲りしてあげてください」
「君はビーゼルの側につくと?」
「今回、グルーワルドさん、フカさんの件で骨を折ってもらいますので。
それに、男爵領周辺は当主不在の領地も多く、継承問題も含めて大変だそうです」
そう言われると、少しは譲ろうと思わなくもない。
……
十数えるあいだは譲ろう。
「せめて百で」
ラッシャーシは優しいなぁ。
そんなラッシャーシに仕事だ。
「戦地の復興に関して、寄付をしたい。
その手配を頼む」
「承知しました」
魔王は子猫たち……正確にはミエル、ラエル、ウエル、ガエルの四匹の姉猫たちのパートナー候補を連れてきていた。
とある村でネズミ退治で大活躍している若い雄猫だそうだ。
とりあえず一匹を連れてきて様子見とのこと。
上手く行きそうなら、数を連れてくるそうだ。
水を抜いたミニプールをお見合い会場とし、その中に雄猫を入れ、続いて姉猫たちを入れる。
いやいや、まてまて。
姉猫たちにパートナーは早いんじゃないか?
そんなことはない?
確かに体は母猫のジュエル並のサイズになっているけど、まだまだ子供。
パートナーはまだ早い。
とりあえず、プールから姉猫たちを出すんだ。
姉猫たちが苛められたらどうするんだ。
いや、それどころか乱暴に……
ああっ、考えたくないっ!
「村長。
そんな心配は必要なさそうですよ」
お見合い会場を用意したであろう鬼人族メイドに促がされてみると……
雄猫は完全に仰向けで降伏姿勢。
その雄猫を、四匹の姉猫たちが取り囲んでいた。
……
カツアゲの現場かな?
雄猫の情けない鳴き声が聞こえる。
姉猫たちのお見合いは失敗だった。
雄猫は元の村に戻された。
心に傷を負っていなければいいが。
いや、姉猫たちのほうも……こっちは普段通りみたいだな。
あと、お前たち。
俺よりも魔王の言うことを聞くのはなんだ?
飼い主は俺だぞ。
あんまり世話をしていないが。
ん?
猫……姉猫たちの父親、ライギエル。
お前だけだな。
魔王がいる時でも、俺に懐いてくれるのは。
よしよし。
ライギエルを撫でていると、姉猫たちがダッシュでやってきて俺の手とライギエルの間に入ろうとする。
はいはい、ライギエルよりもお前たちを撫でろと……ライギエルを撫でるのをやめたら、また魔王のところに戻るのか!
……
ライギエル、娘の教育って難しいな。
ライギエルの優しい鳴き声の返事に、ちょっと癒された。
ちょっと仕事が詰まってきたので、今週は更新速度が落ちます。
すみません。




