収穫祭にむけて
本日、二回目の更新になります。
一回目は03:55の更新です。
秋の収穫が終わったあとに行う予定の収穫祭。
各種族や希望団体での出し物を中心とした穏やかな祭りにすると通達している。
なので、各所で練習したり、小道具を作っている姿がみられる。
屋敷の中で一番目立つのがザブトンの子供たち。
一階チーム、二階チーム、三階チーム、屋根裏チーム、地下室チームと五つのチームに分れ、練習している。
ちなみに、レッドアーマーとホワイトアーマーは一階チーム。
一階チームは演劇をするのを知っているが、他のチームが何をするかは知らない。
聞けば教えてくれるだろうが、当日まで楽しみにしておこう。
屋敷の外では、クロの子供たちが行進の練習をしている。
何頭かは衣装をつけるらしく、ザブトンが仮縫いをしている。
なかなか似合っている。
クロの子供たちも誇らしげだ。
ため池では、ポンドタートルたちが水芸の練習。
ほほえましい。
“世界樹”の木の近くでは、巨人族と鷲が何か相談している。
何をする気かしらないが、危ない真似は駄目だぞ。
さて、お祭り前の空気が蔓延しつつある村だが、大事な収穫を忘れてはいけない。
収穫祭は、収穫が無事に終わったあとのお祭りなのだから。
……
まあ、本格的な収穫までまだ少し時間があるから、今はお祭り前の空気でも構わないか。
空をみると、ルィンシァが村に戻ってきた。
妊娠中のグランマリアの代わりに、村の周辺を警戒してくれていたのだ。
助かる。
ルィンシァに対して、マルビットは屋敷の客間のコタツに入って不動の構え。
「遊んでいません。
ちゃんと仕事してます」
鬼人族メイドたちが収穫祭で出す新作料理の試食や、ドワーフたちの新しいお酒の試飲だそうだ。
その証拠に、コタツの上には無数の料理皿とお酒。
フェニックスの雛のアイギスと、酒スライムも一緒に楽しんでいたようだ。
別に構わないけどな。
「ところでマルビット。
背中の翼、子猫たちにガジガジと噛まれているが、大丈夫か?」
俺の言葉にマルビットは背中の翼をパタパタさせて子猫たちを追い払うが、翼の動きが収まると子猫たちは戻ってくる。
「翼、出し入れ自由なんだろ?」
「さっき、そう思って翼を消したら背中を引っかかれたの」
それは申し訳ない。
半纏で背中をガードするか?
警戒の報告を終えて戻って来たルィンシァに、甘やかさないでくださいと注意されてしまった。
屋敷の客間の一角では、グラッファルーンが笑顔でラナノーンを抱きかかえていた。
ラナノーンが大きくなったので、ラスティもラナノーンにべったりではなくなりつつある。
いいことだ。
グラッファルーンに限らず、これまであまりラナノーンの世話ができなかった鬼人族メイドたちも喜んでいる。
もう少しすれば、ラナノーンもヒイチロウのようにドラゴンの姿になれるのかな。
あまり急いで大人にならなくていいんだぞ。
ははは。
それでドライムはそこで何を?
ラナノーンの順番待ち?
あの様子だと……たぶん、グラッファルーンは離さないと思うぞ。
ドライムの両腕が寂しそうだったので、誰か……
ティアがオーロラをドライムに預けた。
ドライムは困った顔をしているが、まんざらでもなさそうだ。
しかし、その背後でルィンシァが睨んでいる。
教えないほうが平和だろうか。
それとも、教えたほうが……
困る。
数日後、本格的な収穫作業を開始。
ハクレン、ライメイレン、グラッファルーンに子供たちを任せ、村の住人総出で……
マルビットはルィンシァとキアービットが引っ張り出した。
ご苦労様。
春の収穫、夏の収穫と違い、秋の収穫は一村、二村、三村なども自分たちの村で収穫があり、応援が見込めない。
だが、今年は武闘会から残ってくれたラミア族や巨人族、それにドライムたちがいる。
戦力としては申し分ない。
頑張ろう。
全ての収穫に、二週間掛かった。
うん、頑張った。
特筆すべきことは……
ドライムがダイコンを収穫する様子をみて、ハクレンが私にもできるとダイコンの収穫にチャレンジしたら、葉っぱだけ毟って、ダイコンの白い部分がそのまま残った。
その様子にドライムが吹き出し、姉弟喧嘩が始まったことかな。
その時はまだ収穫の途中だったので、思わず【万能農具】の槍を投げてしまった。
反省。
でも、収穫は真面目に。
収穫が終わると収穫祭。
他の村の収穫状況を確認し、三日後に行うと決定。
マイケルさんを招待するための時間も必要だったので、丁度いい。
一応、収穫を始める前にも連絡しているので大丈夫だと思いたい。
収穫祭までの間も遊んでいるわけではない。
文官娘衆が収穫物を、貯蓄分、ハウリン村への販売分、ゴロウン商会への販売分、魔王、ビーゼルへの販売分、ドースたちへのお裾分けと分けていく。
作物の種類が多いので、管理が少し大変そうだ。
だが、今年は武闘会がないので少し楽になっているはずだ。
武闘会の代わりに収穫祭を行うのなら一緒じゃないか?
ははは。
収穫祭の仕切りは、実は始祖さんが担当することになっている。
なので少し前から頻繁にやってきては色々と準備をしている。
その始祖さんの手足となって動いたのが、リザードマンたち。
慣れない作業だったので一部、文官娘衆に助けてもらいながらも頑張っていた。
ご苦労様です。
収穫祭のメイン会場は武闘会を行った場所だが、大事な場所は大樹にある社。
始祖さんのスケジュールでは、ここで一通りの収穫祭の儀式をやったあと、メイン会場に移動となっている。
「村長、これは……焚き火台ですか?」
ハイエルフの一人が、俺が作っている物に興味を持った。
「ああ、始祖さんに言われて作ったんだ。
駄目そうか?」
収穫祭中は、ずっと燃やしておきたいということだったので、キャンプファイヤーのように大きな薪を組み上げてみたのだが……
「いえ、問題はないと思います」
ハイエルフは何か言いたそうだったので、聞いてみた。
「サ、サイズがちょっと……大き過ぎるのではないかと」
……
確かにちょっと大きいかな。
俺が組んだ薪は、三メートルぐらいの高さになっている。
……
小さいよりは、大きいほうがいいと思う。
さあ、もうすぐ収穫祭だ。




