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苗木


 武闘会が終わって、村の様子に少し変化がみられる。


 まず、武闘会に参加していた南のダンジョンのラミア族と、北のダンジョンの巨人族の何人かが村に残った。


 秋の収穫まで村で仕事をするらしい。


 ラミア族は、酒造りの手伝い。


 巨人族はガットのところで鍛冶の手伝いだそうだ。


 頑張ってもらいたい。



 武闘会の最中にやってきた天使族の長のマルビットと補佐長のルィンシァ。


 二人は武闘会が終わっても帰らず、このまま村に滞在する予定だ。


「冬の間はこちらでお世話になろうと思いまして」


 マルビットはそう言って、俺の屋敷に。


 すぐに戻って来た。


「コタツがないけど!」


「まだ秋だからな」


 そんなマルビットを無視し、ルィンシァが手土産を渡してくれる。


「遅くなりましたが」


 羊皮紙で作られた本と、一メートルぐらいに育っている苗木だ。


「代々、天使族の里で育てている木です。

 この村でもよろしければ」


「ご丁寧にどうも」


 天使族の里で育てている木なら、ティアやグランマリアも喜ぶかもしれない。


 しっかり育ててみよう。


 しかし、何の木かな?


 実がなってくれたら嬉しいが……


 ルィンシァがティゼル、オーロラのところに行ったあと、キアービットが慌ててやってきた。


 そして俺が持っている苗木を凝視している。


「うわぁぁ、うわぁぁぁ……」


 ……


 危ない木なのだろうか?


 俺の質問に、キアービットは答えてくれなかった。


 目を逸らし、見てませんと言って飛んでいった。


 仕方がないので、ティアに聞いた。


「これ、なにかわかる?」


「え?

 え?

 それ?

 え?」


 ティアも見なかったことにした。


 ……


 俺は苗木を隠し、グランマリアに聞いた。


「グランマリア。

 天使族の里で育てている木があるって聞いたのだけど、知ってるか?」


「知っていますが、普通の村と同じで実がなる木を育てているだけで……あ、ひょっとしてあの木のことでしょうか?」


「変わった木があるのか?」


「変わった木というかシンボルですね。

 説明しましょうか?」


「頼む」


「昔、天使族が神人族しんじんぞくと名乗っていた時代に、大地の神と契約して頂いた木があるのです」


「大地の神と契約?

 仰々(ぎょうぎょう)しいな」


「ですね。

 本当かどうかはわかりません。

 ただ、その木は天使族のシンボルとして崇められ、大事に育てられています。

 と言っても、何もしなくても勝手に育つらしいのですけどね」


「そうなのか?」


「ええ、灼熱の地や極寒の地に置かれても、枯れないそうです」


「それは凄いけど、そんな環境に置いたのか?」


「神人族を名乗っていたころの天使族は、無茶をしていたらしいので。

 恥ずかしいです」


「いや、まあ、うん」


 天使族の黒歴史だな。


「ごほん。

 話を戻しまして、その木が凄いのは枯れないことだけじゃありません。

 凄いのは、その葉の効用。

 葉を一枚、潰してればあらゆる怪我が治り。

 葉を二枚、せんじて飲めばあらゆる病気から回復します。

 そして、葉を三枚、焼いて食べれば失った四肢すら再生すると言われています」


「それは凄まじいな」


「はい。

 ですが、全て噂です。

 本当に怪我が治ったりするかは、わかりませんよ」


「ははは。

 そうだな。

 そんな便利な木があったら驚く」


「ですね。

 ただ、その話と合わせて天使族のシンボルになっています。

 もちろん、門外不出。

 村長に頼まれたとしても、マルビットさまは……見せるかもしれませんが、ルィンシァさまがはばむでしょう。

 それほどの木です」


 なるほど。


 そんな木の苗木を俺がもらったから、キアービットやティアは困ったのか。


 ただ、別に見なかったことにするほどじゃないと思うけどな。


 まあ、シンボルらしいから、木の扱いに対する感じ方が俺とは違うのかもしれない。


 グランマリアには……妊娠中だし、今は黙っておこう。


「ところで、その木の名前は?」


「大袈裟だと思うのですが、天使族の里では“世界樹ユグドラシル”と呼ばれています」


「確かに大袈裟だ」




 グランマリアの部屋から出て、苗木を隠していた場所に行く。


 さて。


 この苗木、どうしよう?


 まあ、ちゃんと育ててやろうという気持ちに変わりはない。


 ただ、天使族の大事な木のようだから、そこらに植えて終わりというわけにもいくまい。


 子供たちが遊んでいる時にぶつかって折ったりするかもしれない。


 ……


 村で一番安全な場所となれば、俺の屋敷か居住エリア。


 植えるのは居住エリアの真ん中にしよう。


 そして、壁を作る。


 木を植えた場所の四方を取り囲むような壁。


 ハイエルフたちに頼んで、あっという間に完成。


 ……


 見栄えが悪い。


 ただの壁だもんな。


 屋根のない小屋のように加工する。


 いいね。


 では、さっそく小屋の中央に苗木を植えよう。


 苗木が育てば屋根になるかもしれない。


 いや、屋根になってほしいな。


 俺はそう願い、【万能農具】で地面を掘って苗木を植える準備をした。






 離れた場所。


 クーデルがグランマリアをみつけた。


「グランマリア、動き回って大丈夫なの?」


「少しは動いたほうがいいのよ。

 それより、村長知らない?」


「ああ、あっちで何か作ってたかな。

 用事なら伝えてくるけど」


「いいわよ。

 大した話じゃないから」


「だったら尚更なおさらよ。

 大した話じゃないのに、妊婦が動き回らない」


「心配症ね。

 じゃあ、二人で行きましょう」


「わかったわ。

 それで、その大した話じゃない話ってのは?」


「さっき、“世界樹”の話を村長にしたのだけど、伝え忘れがあって」


「伝え忘れ?」


「ええ。

“世界樹”のサイズ。

 育て始めてから二千年ぐらい経過しているけど、まだ一メートルぐらいしか育ってないって」


「ああ、たしかどこに置いても枯れないけど、相応しい場所じゃないと成長しないのよね」


「そうそう。

 それも伝えないと。

 しかし、村長はどうして急に“世界樹”の話を聞きたがったのかな?」


「マルビットさまやルィンシァさまが来ているから、そこから話を聞いたんじゃない?」


「だったら、詳しい話も二人に聞くと思うんだけど」


「確かに。

 あ、いたいた……相変わらず、建てるのが早い。

 もう完成したみたい」


「大きな木をそのまま屋根にしているって、お洒落ね」


「うん、いいね。

 ところで小屋の周りにニュニュダフネたちが集まっているけど……」


あがめてる?

 村長がまた何かしたのかな?」


「かもね。

 しかし、あの屋根の木、どこかで見たような………………ま、まさかね」


「……お腹の子に影響があるといけないから、しばらくは見なかったことにするわ」


「そ、それがいいと思う」






グランマリア      天使族。三人組のリーダー。

クーデル        天使族。三人組の一人。急降下爆撃が好き。

コローネ        天使族。三人組の一人。今回、出番なし。


ティゼル        ティアの長女。(7年目秋生誕、現在8歳)

オーロラ        ティアの次女。(14年目秋生誕、現在1歳)


ニュニュダフネ     木の精霊みたいなもの。



更新、遅くなってすみません。

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― 新着の感想 ―
多分だけど、グランマリアとかクーデルは、村長と話す時と親しい人と話す時で口調わけてるんじゃない?
グランマリアとクーデルの口調が変わってる…
ハイエルフやエルフでなくて天使族なのが本作品の味わいなのか?
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