武闘会予選
大樹の村の武闘会は秋の収穫のあと。
収穫祭のイメージで行っていた。
しかし、武闘会の規模が大きくなるにつれ、その時期では厳しいと判断された。
主に文官娘衆から。
「収穫後の忙しい時期に、武闘会を仕切るのはとても厳しいです」
フラウの通訳。
「例年通りの時期だと、開催が無理です」
それが去年。
反省して、今年から秋の収穫前に武闘会が行われることになった。
収穫祭は収穫祭でなにかやればいいだろう。
連絡はしているので、いつものメンバーが集まる。
魔王と四天王一行。
それに獣人族の男の子三人とハイエルフのリグネが同行してきた。
魔王は娘のユーリと再会を喜び……頻繁に猫に会いに大樹の村に来ているからそれほどでもないか。
四天王はランダン、ビーゼル、グラッツ、ホウの四人が勢ぞろい。
あれ?
獣人族の男の子の一人が、妙にホウと距離が近い気がするが……どうしたのだろう?
気のせいかな?
久しぶりに見た獣人族の男の子三人は、一気に体が大人になったように思える。
たくましくなったというやつかな。
あ、ウルザに体当たりされて転がってる。
どうした?
昔は正面から受け止めていたのに?
油断か?
「いや、ウルザが大きくなって威力が……」
そうか?
ウルザはあまり大きくなって……なっているな。
ずっと一緒にいるから気づかなかったが、成長しているのか。
……
感慨深い。
始祖さんとフーシュ。
後ろに一人、新顔の同行者がいる。
綺麗な装備でガッチガチに固めた騎士だ。
フーシュが紹介してくれた。
「こちらは、教会で働いている聖騎士のシュナイダー=イフカという者です。
武闘会に参加したいと強く要望したので、連れてきました。
身元は私が保証しますので、入村と武闘会への参加の許可をお願いします」
ちゃんと村の入り口前で言われたので、許可する。
そして始祖さんに確認。
「彼、何か問題があるの?」
始祖さんがいきなり見知らぬ人を同行させたのだから、何かしらの理由があるのだろうと推察したのだけど……
「問題はないよ。
ただ、自分より強い人を探すタイプで……このままだと教会から飛び出して暴れそうだから、同行させたんだ。
本来なら先に許可を取るべきなのに、申し訳ない」
丁寧に謝られると何も言えない。
まあ、別に新顔が少数増えても問題はないから文句を言うつもりもないが。
今回は許可を取る暇がなかったのだろう。
「あと、彼じゃなくて彼女ね。
鎧でシルエットがわかりにくいけど、女性だから」
「それは失礼……女性でシュナイダー?」
「本当の名前はチェルシー。
彼女、自分が女ってことにコンプレックスがあって指摘しないでやってくれるかな」
了解。
まあ、そのあたりは注意しよう。
「あと、彼女は教会が確認している勇者の一人。
偽者じゃなく本物のほうの」
「……魔王がいるけど、大丈夫なのか?」
「一応、私の目の届く範囲にいる教会の聖騎士だから、何がなんでも魔王を倒すべしという思考はないよ。
まあ、魔王に斬りかかっても返り討ちだろうし、いざとなれば私が止めるよ」
問題がないようにお願いしたい。
……
そのシュナイダーは、クロの子供やザブトンの子供を見て悲鳴と気絶を繰り返している。
うん、大丈夫そうだ。
ドース、ライメイレン、ギラル、ドライム。
ギラル、ライメイレン、ドライムは少し前から村にいて収穫を手伝ってもらった。
混代竜族の三頭は、ドラゴンの姿でドースに完全平伏。
微動だにしない。
ドースはそんな三頭に一言。
「お前ら、ダンダジィに勝てるのか?」
微動だにしなかった三頭がビクッと体を震わせた。
俺は近くにいたハクレンに聞く。
「ダンダジィって誰だ?」
「混代竜族の中で最強として君臨している竜よ。
氷竜族だったかな」
「最強?
え?
あの三頭が最強を競っているんじゃないのか?」
「“魔黒竜”の称号が欲しい混代竜族の中で、最強ってことでしょ」
「……な、なるほど」
あの三頭だけをみて、混代竜族の力を見誤るところだった。
「そのダンダジィはどれぐらい強いんだ?」
「ダンダジィなら、ドライムと殴り合えるかな。
ドライムが勝負から逃げないところから、察してもらえると」
「すまない。
ドライムってどれぐらいの強さなんだ?」
「あはは。
村長からすれば、ドライムもダンダジィも三頭も同じようなものよ」
さすがにあの三頭よりドライムのほうが強いと思うぞ。
五村から元四天王の二人が到着。
温泉地から、死霊騎士。
南のダンジョンからラミア族、北のダンジョンから巨人族もやってきた。
うん、いつものメンバーだ。
一村、二村、三村、四村からも人が集まってきた。
これまでは、クロの子供やザブトンの子供たちだけが自主的に予選を行っていたのだけど、今年からは全体的に予選を行うことにした。
参加希望者が増えたからだ。
一般の部、戦士の部もトーナメント方式を採用し、ある程度人数が絞れたところで本戦出場という形式。
……
一般の部の予選にあの混代竜族の三頭が出てるけど、いいのか?
ギラルに聞くと、あそこが妥当らしい。
いや、参加しちゃ駄目ってことはないが、人間の姿限定な。
混代竜族の三頭は、予選敗退。
三頭ともウルザに殴られ、負けていた。
トーナメントに不正はない。
運。
完全に運だから。
一回戦でウルザに当たった炎竜族のオージェスを、フェニックスの雛のアイギスが慰めている。
あと、もう一人。
聖騎士のシュナイダー。
リザードマンの子供に関節技を極められ、泣かされていた。
今は……酒スライムを抱き締めて癒されている。
別に構わないが、顔を埋めるのはやめたほうがいいぞ。
酒の匂いで酔うから。
遅くなってすみません。
昨日は、携帯電話からスマホにしようと昼からショップに行ったのですが、終わったのは夜でした。
店員さんは悪くありません。とても丁寧でした。
悪いのは携帯を忘れて取りに戻った私と、土曜だったのでお客がメチャクチャいたことです。
「絶対に今日、買い換える」と意地になってしまった判断ミス。
日を改めればよかったのかもしれない。