表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
431/978

魔黒竜


 俺が一村いちのむらの各家を訪問する前に、大樹の村に新顔の来客があった。


 三頭のドラゴンだ。


炎竜フレイムドラゴン族のオージェスだ」


風竜ウィンドドラゴン族のハイフリーグータ」


大地竜アースドラゴン族のキハトロイです」


 三頭とも……人間の姿になっているから三人かな。


 三人とも女性。


 炎竜、風竜、大地竜は前に教えてもらっていた混代竜族だな。


 三人の目的は暗黒竜ギラル。


 なんでも、ギラルから“魔黒竜デーモンドラゴン”の称号を与えてもらいたいらしい。


“暗黒竜”よりも“魔黒竜”のほうが強そうに思えるけど、気にしてはいけない。


 そういう伝統なのだそうだ。


 この伝統、数千年ほど廃れていたのだが、近年になって混代竜族の中で最強は誰だとなり、その証明として称号が求められた。


「“魔黒竜”って、最強の称号なのか?」


「混代竜族の中ではそうなります」


 俺の疑問に答えてくれたのはライメイレン。


 彼女が三人を案内してきた。


 当初、この三人は称号のことを知らず、最強である証明をライメイレンにお願いしにきたそうだ。


 称号のことを知っていたライメイレンは、勝手に決められないとギラルにパス。


 ギラルも称号のことを知っていたので、仕方なく三人と面接することになった。


 三人の中から一人を選び、称号を与えるそうだ。


「それはわかるが、どうして大樹の村で面接するんだ?」


「称号を得る為には試練を乗り越えなければなりませんから」


 この村に試練があるのだろうか?


 ともかく、俺が応対する必要がないのでギラルに任せる。


 俺は一村の各家を訪問しなければならない。


 この段階で、三人は意気揚々とギラルから与えられる試練を待っていた。




 俺が一村、二村にのむら三村さんのむら四村よんのむらの各家庭を訪問し、大樹の村に戻って来たとき、三人は膝を抱えて落ち込んでいた。


 五村ごのむらの一部の家庭を訪問し、大樹の村に戻って来たとき、三人は壁に向かって何かを呟いていた。


 大樹の村の各家庭を訪問し終わったとき、三人は……フェニックスの雛のアイギスに人生相談をしていた。


 アイギスに肩を叩かれ、涙している。


 なにがあったのか?


 この村に来たときは、俺を無視していたのに今では深々と頭を下げているし。



「結果はどうだったんだ?」


「駄目だ。

 あの三人の今の実力では、誰にも称号を与えられん」


「厳しいな。

 そんなに酷かったのか?」


「うむ。

 簡単な試練にしたつもりなのだがな」


 本来は混代竜族たちで選んだ一人に“暗黒竜”の称号を持つギラルが試練を与え、クリアしたら“魔黒竜”の称号を与える内容。


 なので試練もそう難しい内容にはならない。


 儀式的な内容になるらしい。


 だが、今回は三人の候補から一人を選ぶ必要があった。


 それゆえ、ちょっと競う内容になったそうだ。




 ギラルの与えた試練。


 直径一メートル、長さ五メートルぐらいの丸太を用意。


 それを森の中に投げるので、持って帰ってきた者に称号を与えるとした。


 三人とも、ドラゴンの姿になって丸太を追い掛けた。


 直後、ザブトンたちの糸に引っ掛かり、行動不能。


 その際、暴れたので近くにいたラスティに殴られたそうだ。


「ラナノーンが寝たところなの!

 騒がしくしない!」




 ギラルの与えた試練、その二。


 クロの子供たちに協力してもらい、クロの子供たちが守る丸太を持ち帰った者に称号を与えるとした。


 最初、クロの子供たちは三十頭だった。


 しかし、三十頭が相手では三人は手も足も出ず、少しずつ数を減らして最終的に一頭になったが、三人は丸太を持ち帰れなかった。


 最後の一頭は、ウノだった。


「三人は人間の姿だったのか?」


「いや、ドラゴンの姿で」


 ドラゴン三頭を相手に、守り抜いたのか?


 凄いな。


 よしよし、頭を撫でてやろう。



「しかし、三頭でかかってウノに勝てないって……森に入ったら、ウサギにやられるかもしれないぞ」


「さすがにそれはない……と思いたいが、怪しい。

 ただ、そのインフェルノウルフは歴代最強だと思うぞ」


 よかったな。


 最強と褒められたぞ。


 ははは。


 クロ、クロイチ、クロニ、クロヨン、ゆらりとこないように。


 義理でも親、兄弟だろ。


 仲良く、仲良くな。


 ほら、お前たちも撫でてやるから。




 ギラルの与えた試練、その三。


 リア、ダガ、ガルフに協力を頼み、一頭ずつ一対一で三回戦う。


 一番勝ち数の多い者に称号を与えるとした。


 対戦順で不公平がでるので、クジで対戦相手を決めて三つの試合を同時に行う。


 以後、対戦相手を代えて戦う。


 対戦相手を代えるときに、回復魔法を使ったそうだが……


 三頭とも、全敗。


「武闘会が近いですから。

 油断はありません」


「もう少し歯応えがあると……」


「ブレスはズルい。

 尻尾の先が少し燃えてしまった」


 リア、ダガ、ガルフは互いに反省点をあげながら、訓練を続行。


 その姿に三人の心が折れてしまったそうだ。




「ウサギが倒せない疑惑があるレベルなら、騎士の部に参加している者は厳しいんじゃないか?」


「そう思ってな。

 戦士の部、一般の部の参加者とランクを落としたのだが……」


 心が折れているからか、勝てず。


 最後は、一村から来ていた者に対戦をお願いしたら、雷の魔法で瞬殺されてしまったそうだ。


 ……


「あれ、ウサギでも避けるそうだぞ?」


「らしいな。

 避けるだろうと思っていたのに直撃して、ビックリしていた。

 悪いことをした」


「しかし、弱すぎないか?」


「俺もそう思う。

 あの中から、一人を選べと言われても困るだろ」


「確かにな」


 一人は選べないだろう。


「だが、誰かを選ばないと試練が延々と続く。

 困った」


「全員駄目とは言えないのか?」


「あれでも、各種族の面子を背負っているからな。

 誰か一人が選ばれたならともかく、全員駄目だと……種族に戻れんだろう」


「そうか。

 ……じゃあ、三人に与えたらどうだ?」


「どういうことだ?」


「“魔黒竜”の称号を三人で持つんだ」


「ははは。

“魔黒竜”は一人に決まって……いや、そんな決まりはないな。

 なるほど。

 あ、いや勝手には決められないな。

 ドースとライメイレンに相談する」


 もうすぐ武闘会だ。


 ドースはそろそろ来るだろう。


 もうちょっとだけ、あの三人は村で過ごすことになった。



「ところでどうだ?

 久しぶりに飲まないか?」


「そうしたいが、まだ家庭訪問が残っているんだ」


「大樹の村の家は回ったんだろ?

 まだあるのか?」


「ああ、大事な場所がな」


 俺が指差す場所には、クロ一家が勢ぞろいしている犬エリア。


 そろそろ準備はいいかな?


 もう少しね。


 そんなに綺麗に整列しなくてもいいんだぞ。


「それと、あそこ」


 ザブトンの子供たちによって飾り付けられている大樹の木。


 ザブトンの子供の一匹が俺の視線に気づき、もうちょっと待ってとジェスチャー。


 それを見て、ギラルは大笑いした。


「確かに大事な場所だな」





混代竜族は 306「竜族の話」にてちょっと出てます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
パレードでクロの代役任される当たり、少なくとも子世代以降ではウノが最強格なのは種全体で認知されてるんだろうな
[良い点] 混代竜族が予想以上に弱い…! んでもってクロ一族とザブトン一族にも家庭訪問するの律儀だなぁ
[気になる点] クリアしたら“魔黒竜”称号を クリアしたら“魔黒竜”【の】称号を
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ