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春だけど春は遠い

 もうすぐ、春の収穫。


 今年も豊作のようで、やしろの創造神と農業神にお参りしておく。


 あと、謝罪。


 農業神を女神像に彫ってしまいましたが、不敬なことだったらすみません。


 ……


 しかし、農業神と会ったことがないから男性じゃなく女性のほうが正しい可能性も……


 そうなると、これまでが不敬だったのか?


 ……


 考えても仕方がないな。


 うん。


 大事なのは感謝を忘れないこと。


 今の農業神の横に、女神バージョンの農業神を飾ったのは逃げではない。





 味噌や醤油の生産を五村ごのむらでも始めたので、フローラがよく外出する。


 指導員として、頑張っているそうだ。


 あと、研究。


「大量生産しても、味が均一になるようにするのが目標です」


 混ぜたらいいんじゃないかな?


 なんにせよ、フローラの顔を見る機会が増えた気がする。


「仕事中は、大人の格好なのか?」


 フローラもルーと同じく、外見の年齢を変えられる。


「それなりの年恰好じゃないと、なかなか言う事を聞いてもらえませんから」


「そうなのか?」


 考えてみれば、フローラはあまり五村の者に顔が知られていない。


 しまった。


 何か手を考えるべきだったか。


「大丈夫ですよ。

 ヨウコさんが色々と手を回してくれていますから」


「そうか。

 ヨウコに礼を言っておこう。

 すまなかったな。

 気づかなくて」


「いえいえ。

 それより、生産量で悩んでいます。

 作ったら作っただけ売れると思いますが、量が出回ると価値が下がります」


「価値が下がっても構わない。

 気にせずに量を作って売ってくれ。

 将来的には、誰もが口にできるレベルになるのが望ましい」


「いいのですか?」


「美味い物は独占せず、広めよう」


「……承知しました。

 最善を尽くします」


 よろしく。





 ハクレンは、いつも通りに子供たちに勉強を教えている。


 子供たちはアルフレートとウルザがまとめる形に落ち着いているようだ。


 ウルザは年齢的に魔王国の学園に行かせる案も出たのだが、去年の武闘会の時に戻ってきた獣人族の男の子たちからストップが掛かった。


 学園に通わせるなら、誰かが一緒に通える状況を作ってからにしてほしいそうだ。


 ウルザを一人で学園に放り込むのは危険すぎると。


 お前たちがいるじゃないかと言ったら、勘弁してくださいと返された。


 ウルザ、どれだけ恐れられているんだ?


 まあ、獣人族の男の子たちの心配も理解した。


 誰か一緒に通えるとなると……ナートかな?


 となると来年か。


 ウルザ本人が学園にあまり興味を示さなかったのもあり、今年の入学は流れた。


 学歴重視の世界じゃないからな。


 行きたくなければ、無理に行く必要はない。


 学園で変な男に絡まれたらとも心配にもなる。


 そういえば、ウルザの相手はアルフレートが有力らしいが……どうなのだろう。


 気になる。


 しかし、余計なことはしない。


 成り行きにまかせよう。


 うん、それがいい。



 その日の夜。


 ハクレンから言われた。


「ウルザの相手にはアルフレートがいいと思うのだけど、進めていいかしら?

 ルーからは、貴方次第だって言われているの」


「……」


 知っていたけど、この世界では自由恋愛は希少らしい。


「あー、まだ早いんじゃないかな?」


「そうなの?

 フラウから、今ぐらいの年齢だと婚約者がいてもおかしくないって聞いたのだけど」


「フラウは貴族だからな」


 しかし、フラウ自身に婚約者はいなかったと思うが?


「早めに婚約者を決めておいて、変な虫がつかないようにするそうよ。

 状勢の変化で婚約は解消してもいいしね」


「状勢の変化って?」


「どちらかに、好きな人ができた時」


「好きな人ができない場合は?」


「そのまま結婚」


 ……


 結婚できないというリスクは減るのか。


 なるほど。


「私はウルザの母として、アルフレートとの婚約を希望するわ」


「俺、ウルザの父であるが、アルフレートの父でもあるのだが?」


「つまり、貴方が決めたら本決まり。

 反対する人はいないわ」


「うーん」


 とりあえず、しばらく悩むと言ってその場での回答は避けた。


 今度、ウルザとアルフレートにこっそり気持ちを聞いてみよう。


 ……


 聞くのはハードルが高い気がする。


 アンやリアに、こっそり聞いてもらうほうがいいかな?


 いやいや、父親として逃げてはいけない。


 ぶつかってみよう。



「ところで、ヒイチロウとグラルに関しては、構わないのか?」


 俺は何も言っていないが、ほぼ確定として扱われている。


「お父さまとギラルさまが賛成だからね。

 お母さまも、グラルを厳しく鍛えているから賛成だろうし」


 ライメイレンがグラルを鍛えているのか?


 知らなかった。


「母としては、結婚は……好きなタイミングですればいいんじゃないかなと」


「ウルザと違って、あまり心配していないのか?」


「私たちの息子だもの。

 グラルとの結婚が駄目になっても、なんとかするでしょう。

 でも、ウルザはねー。

 私たちがなんとかしないと、相手が見つからない気がするの」


「そうか?

 黙っていても、アルフレートとくっつきそうだが?」


「そうだったらいいけど。

 ウルザは村で大人しくするタイプじゃないと思うのよね。

 ありあまるパワーで、外へ外へと行っちゃう感じ。

 で、気付いたら周りに仲間はいるけど、恋人はいないみたいな……

 そんな未来がみえるの」


 し、心配し過ぎだと思うぞ。


 確かに、俺にもその姿が見えてしまったけど。




 後日。


「ウルザ、好きな人っているか?」


「お母さん」


「……お父さんは?」


「お、お父さんも」


 ははは。


 結婚はまだ早い。


 でも、ちょっと本気で考えておこう。



 あと、ウルザ。


 好きな人でまだ挙げていない人がいるだろ。


 土人形の。


 ほら、そこで拗ねてるから。





遅くなりましたが、レビューありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ウルザは村で大人しくするタイプじゃないと思うのよね。 >ありあまるパワーで、外へ外へと行っちゃう感じ。 ライメイレン「他人事じゃないでしょ」
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