表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
410/978

獣人族の男の子たちの学園生活 捕縛


 罠を解除し、先に進む。


“ミアガルドの斧”のメンバー二人が十メートルほど先行し、偵察と罠のチェック。


 二人なのは、何者かから攻撃された時に叫べるようにだ。


 二人まとめて口を封じられる可能性はあるが、確率は低い。


 本隊には僕を含めて四人。


 戦闘態勢を整えながら、慎重に進む。


 この本隊の後方十メートルほどに、一人が隠れながら付いてきている。


 彼は後方からの奇襲に対して警戒。


 また、事故や罠によって本隊がどこかに閉じ込められた時、救助を呼びに行く役目もある。



「これで確定だな。

 ここを寝床にしているやつがいる」


 いくつかの罠に遭遇したあとで、コークスが全員にそう声をかける。


 僕もそう思っていた。


 罠が新しいのだ。


 コークスが確定と判断したのは、罠に使われている木の枝。


 木の枝のち具合から、数ヶ月ほど前にセットされたのがわかる。


 そして、罠の種類が捕縛。


 この手の罠は、定期的にチェックが必要となる。


「罠を隠す技術から一般人とは思えないが、いきなり攻撃しないように。

 普通に住んでいるだけかもしれんからな。

 攻撃は相手の敵意を確認してからだぞ」


 コークスが注意をうながし、探索が続けられた。




 捕まった。


 僕以外は、遺跡の一室に閉じ込められていた。


 注意していたのに、一人ずつ捕まった。


 後方にいた一人が最初に捕まったから、救出は期待できない。


 僕は最後だったけど、“ミアガルドの斧”のメンバーが人質になってはどうしようもない。


「人質を取る相手との交渉には応じないように。

 どうやっても事態が改善することはないから」


 フラウ先生の教えを忘れたわけじゃないけど、交渉に応じるしかなかった。


 なにせ相手は僕より強い。


 逃げることは可能だったかもしれない。


 しかし、逃げた場合は“ミアガルドの斧”のメンバーは殺されていただろう。


 さすがにそれは寝覚めが悪い。


 まあ、だからと言って黙って殺されるのは嫌だ。


 一応、事態の改善に希望があるから、交渉に応じて捕まった。


 と、いうことにしておこう。


 じゃないと、無事に戻っても怒られるから。




「確認したな?」


 僕たちを捕まえた相手が、そう聞いてくる。


 僕が交渉に応じて捕まったのは、“ミアガルドの斧”のメンバーの生存を確認するため。


 怪我はしているが、死にそうな者はいない。


 一安心だ。


「では、話を聞かせてもらおう」


 僕は頷く。


 僕たちを捕まえた相手は一人。


 ハイエルフだ。


 エルフではない。


 エルフは五村ごのむらで見たことがあるし、ハイエルフを見間違えることはない。


 彼女はリアお姉ちゃんたちと同じハイエルフだ。


 そして、強さはリアお姉ちゃんたちより上だ。


 彼女の弓の構えをみたら理解できた。


 なので戦う気はない。


 向こうは戦っても勝負にならないと思っているのか、僕たちから武器を取り上げもしない。


 そんな彼女が僕たちを捕まえたのは、僕から話を聞くためだ。


「お前が知っているハイエルフの名を言え」


 彼女が古代ハイエルフ語でそう聞いたので、僕も古代エルフ語で返す。


「リア、リース、リリ、リーフ、リコット、リゼ、リタ、ラファ、ラーサ、ララーシャ、ラル、ラミ……」


 僕は村にいるハイエルフのお姉ちゃんたちの名前をあげていく。


「……待て」


 途中でストップがかけられた。


 驚いているようだ。


「どうして複数の氏族の者の名を知っている?」


「氏族?」


「血統だ。

 リア、リースがリフ氏族。

 ラファ、ラーサがラフ氏族になる。

 共に戦うこともあるが、基本的には別の場所で生活するだろう?」


「そうなんだ。

 両方、村にいたけど」


「……」


「名前、続ける?」


「いや、全員で何人だ?」


「五十人ぐらい」


「…………………………」


「他に聞きたいことは?」


「リアを知っているのだな。

 リグネは知らないのか?」


「リグネ?

 聞き覚えはない……と思う」


「そうか。

 村にいると言っていたが、ハイエルフの村ができたのか?」


「ハイエルフだけが住んでいる村じゃないよ。

 他にも色々な種族がいる」


「まあ、そうであろうな。

 場所は?」


「死の森の真ん中」


「…………

 誤魔化すならもう少しましなことを言え」


「そう言われても……僕もそこに住んでいたから」


「……いいだろう。

 これまでのお前の言葉が全て真実だとしてだ。

 それを証明することはできるか?」


「証明?」


「そうだ。

 証拠でもかまわない。

 お前が名をあげたハイエルフと知り合いだという証拠だ」


「村に案内するのは?」


「道中、お前を縛ったままにするが、それでも案内してくれるのか?」


 僕が縛られていたら、どうなるだろう?


 ……


 学園は大丈夫かな?


 ビーゼルのおじさんにお願いすれば、すぐだろうし……


 村に入った時が問題かな。


 捕まった僕はすごく怒られる。


 それに、アルフレートやウルザを心配させるかもしれない。


 それは避けたい。


「縛られたままの案内は難しいかな」


「だろう。

 だが、お前の話が私を誘い出す罠という可能性もある」


「だから、証明や証拠と?」


「そうだ」


「そっか。

 それじゃあ……教えてもらった草の編み方とかじゃ駄目かな?」


「それは駄目だな。

 草の編み方はエルフにも伝わっている」


 ……


 困った。


 どうすればいいんだ?


 思いつかない。


「後ろにいるメンバーと相談していい?」


「……好きにしろ」



「何を喋っているんだ?」


「僕たちが敵じゃないって説明しているところ。

 それで、とある人と知り合いだって証明しなきゃいけないんだけど、どうしたらいいかな?」


「とある人って?」


「村でお世話になったお姉ちゃん」


「何か物をもらったりしていないのか?」


「消耗品ならいくつももらったけど」


「それは駄目だな。

 その人しか知らないことを言うとかは?」


「僕たちを捕まえた人が、その人を知らないと意味がないのでは?」


「知らないのか?」


「……ちょっと待って」



 確認した。


 リアお姉ちゃんなら知っているそうだ。


 さっきも名前を出していたし、リアお姉ちゃんの知り合いなのかな?


 最悪の事態は回避できそうだ。


 一安心。


「で、その人……リアお姉ちゃんだったか?

 リアお姉ちゃんしか知らないことはあるか?」


「うーん。

 ずっと一緒にいたわけじゃないからな……」


「じゃあ、普段の口癖とかモノマネをするのはどうだ?」


「口癖はないけど、モノマネか……」



 やってみた。


「いまのはなんだ?」


 凄い変な目でみられた。


「リアお姉ちゃんがお風呂に入った時にする、お湯の温度を調べる様子」


「お風呂?」


 あ、お風呂を知らないのか。


 それじゃあ駄目だな。


 モノマネの選択が悪かった。


「証明できないようだな」


「待って。

 もう一回、もう一回だけチャンスをちょうだい」


 リアお姉ちゃんたちが昔っからやってそうなこと……


 これかな?


「そ、それは……」


「リアお姉ちゃんが獲物を仕留めた時にする小さな喜びのポーズ」


 細かすぎるか?


 駄目か?


「お、覚えている。

 そうだ。

 リアは獲物を仕留めた時、そうやって喜んでいた」


 よしっ!


「これで大丈夫?」


「うむ。

 疑って悪かった。

 これまで何度かハイエルフの復興をネタに私に近付く者がいたからな。

 警戒していた」


「そうなんだ。

 えっと……後ろのメンバーは解放してもらっていいかな?」


「いいだろう。

 リアの知り合いなら敵対する理由はない。

 だが、私のテリトリーに入ってきたのはそちらだからな。

 ちゃんとテリトリーを示すマークは出していた」


「それは申し訳ない」


 確かにマークがあった。


 ハイエルフを知らない人には気付かれないだろうけど、僕はリアお姉ちゃんたちから教えてもらっている。


 そして、僕がそのマークに気付いた様子から、彼女の興味を引いたのだろう。


 気付かなければ、見逃されていたかな?


 いや、一方的にやられていた可能性もある。


 危ないところだった。


「僕はブロン。

 貴女は?」


「リグネだ」


「リグネ?

 あ、さっきの引っ掛け?」


「うむ。

 名前だけを知っているなら、引っ掛かるかなと思った。

 しかし、リアは私のことを話していないのか?」


「聞いてない。

 森での歩き方とか、草の見分け方とか、武器の扱い方とかは教えてもらったけど」


「そうか。

 まあ、私のことなど思い出している暇もなかったのだろう」


「リアお姉ちゃんの友達なの?」


「友達ではないな。

 私はリアの母だ」


「……え?」





花粉症でダウン→仕事が遅れる→更新が遅れる→花粉症がさらに襲い掛かる→仕事が……

という状態でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 細かすぎるモノマネ草
[一言] リアと一緒にお風呂に入ったことがある・・・ってこと!?
[良い点] 経産婦の園が茂るー!いいぞもっとやれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ