表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
406/990

真面目な話


 俺の屋敷の客用リビングの一角いっかく、板敷きの間に設置された囲炉裏を取り囲んだ名前の長い先代の四天王とビーゼルは、真面目な顔で話をしていた。


「調査に調査を重ねてわからなかったことが、この村にきた途端に判明する。

 これ、どう思う?」


「私も通った道です。

 今回は何が判明したのですか?」


「ガーレット王国の巫女だ。

 聞かぬ名だったから調べたのに……正体はあそこでコタツに入っているおさだった」


「ああ、偽名の件ですか。

 すみません、私のほうからお伝えすればよかったですね」


「お前はどうやって知ったのだ?」


「巫女の代替わりを知ったので手紙を出しました。

 その返事の筆跡で」


「嘘だよな。

 巫女の手紙は補佐長が代筆する」


「ふふ。

 失礼しました。

 実は直接、会いに行きましたので」


「転移魔法か。

 それ、ずるっこいぞ」


「非力なのですから、これぐらいは許してくださいよ」


「お前クラスを非力扱いできるなら、魔王国は安泰だな」


「ええ、非力なんですよ。

 この村に来てからはさらに痛感します」


「なるほど。

 確かにそうだ。

 我が現役であった時代であれば、魔王さまに敵う者などおらんと思っておったのだが」


「今は猫に負けますからね」


 二人の視線の先では、子猫のサマエルをお腹の上に乗せて寝ている魔王。


「あれは……なんとかしないとまずくないか?」


「王城では仕事、バリバリやってますから」


「だとよいが。

 ……戦線は大丈夫なのか?」


「なんとか膠着させています。

 勇者の件はお聞きに?」


「耳に入っている。

 いい気味だ」


「哀れな方々でもあります」


「ふんっ。

 勇者が動けぬ間に、魔王さまを前に出せばフルハルト王国ぐらいは潰せるのではないか?」


「潰せますよ。

 ただ、潰した後が困るので」


「ふむ。

 フルハルト王国の民を皆殺しにするわけにはいかんか」


「ええ。

 ですので、今のフルハルト王国を併合しても魔王国にはメリットが欠片もありません。

 逆に経済が悪化します」


「だからフルハルトの王家・・に援助をしたのか?」


「それ、極秘事項なんですが……いい耳を持っていますね」


「巫女のことはわからなかったがな。

 危ないことをするではないか。

 前線の貴族が聞けば矛先がお前に向くぞ」


「根回しはしていますよ。

 それに、あそこの王家は馬鹿ではありませんから。

 援助した分は働いてくれます」


「貴族は馬鹿ばかりだがな」


「馬鹿というか……勇者を擁する教会の圧力に屈していただけでしょう。

 そちらにも手を回しています。

 そろそろ動きがありますよ」


「やっとか。

 用心深いことだ」


「ええ。

 ですが、これで戦線は縮小傾向になるでしょう」


「戦争は終わらんか?」


「残念ながら。

 知ってのとおり、フルハルト王国は我らを相手に戦争することで、他国から支援をもらっていますからね。

 当面は戦争を続けながら経済と食料生産を立て直すのではないかと、あちらの方が」


 ビーゼルの視線がコタツに入ってミカンを食べているマルビットに向けられる。


「ガーレットの巫女がそういうのであれば、そうなのだろうな」


「停戦交渉が本格化するのは三年後。

 その際、ガーレット王国が取り纏めに動くので、よろしくとも言われました」


「相変わらず、ガーレットは美味しいところを持っていく」


「見習いたいものです。

 そろそろ焼きあがりますよ」


「おっ。

 すまんな」


 囲炉裏の火であぶられた魚の串をビーゼルが取り、名前の長い先代の四天王に渡す。


「あちっ、ほふっ……うむ。

 塩加減が絶妙だな」


「そうですね。

 お酒もどうぞ」


「うむ」



 お酒をぐビーゼルの横には、いつの間にか酒スライムがいてマイコップで飲んでいた。


 さらにその横でフェニックスの雛のアイギスが魚の串を片足で器用に持って、つついている。


 変な集まりだ。


 そう思いながら俺は抱えていたルプミリナを始祖さんに渡す。


 ん?


 始祖さんは嫌か?


 俺のほうがいいか?


 ははは。


 嬉しいが、始祖さんのところに行ってくれ。


 あまり嫌がると始祖さんが泣くぞ。


 俺の腕にはもう一人、オーロラがいる。


 お父さん歴は長いが、抱っこ歴の短い俺に幼い子を二人も同時に抱かせるのはどうなのかな?


 サポートのために鬼人族メイドが二人、俺の後ろに控えているけど。



 いつの間にかルィンシァがいて、こちらを見ている。


 はいはい。


 俺はルィンシァにオーロラを渡す。


 こっちは嫌がらないな。


 ちょっと寂しい。


 だが、両腕は解放された。


 世の中のお母さんは大変だ。


 子供たちを落とさないようにサポートしてくれた鬼人族メイドの二人は、ルプミリナとオーロラを追って移動する。


 さらに寂しい。


 だが大丈夫。


 このあと、リリウスたちと遊ぶ予定が入っている。


 考えてみれば久しぶりだ。


 なにをして遊ぼうか。


 五歳ぐらいだからな。


 ふーむ。


 まあ、親子だ。


 なんとかなるだろう。


 頑張るぞ。



 ……


 子供たちにすごく礼儀正しく接された。


 たぶん、練習したのだろう。


 凄いぞ。


 ああ、きっちりした挨拶だった。


 よしよし。


 遊ぶ内容も決めてきたのか。


 わかった。


 その通りにしよう。


 だが、ちょっと待ってくれ。


 はい、そこの柱の影で隠れている子供たちの母親、こっちに来るように。


 後で話があります。


 子供たちの教育方針に関して。


 少し長めに話し合おう。


 うん、そんなに難しい話じゃないから。


 とりあえず、緊急の案件として一つ。


 子供たちに、父親おれを村長と呼ぶように指導するのはめるように。


 この前まで、パパとか父ちゃんとか言ってたでしょ。



 子供たちとのコミュニケーションをサボってはいけない。


 そう心に刻む俺だった。




遅くなりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ビーゼルはん、何言うてまんねん。フルハルトの王家は馬鹿ではない?んなワケあるかい!まんま愚王やないかw
[一言] サマエルの鳴き声はたぶん「まおー」。
[一言] >はい、そこの柱の影で隠れている子供たちの母親、こっちに来るように。 >子供たちに、父親(おれ)を村長と呼ぶように指導するのは止(や)めるように。 こういうのも『公私混同』って言うのかな? …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ