405/978

番外　嘘

●人物紹介

　リリウス　　　ハイエルフ、リアの息子。

　リグル　　　　ハイエルフ、リゼの息子。

　ラテ　　　　　ハイエルフ、ラファの息子。

　トライン　　　鬼人族、アンの息子。

　アルフレート　吸血鬼、ルーの息子。

　ルプミリナ　　吸血鬼、ルーの娘。

　ティゼル　　　天使族、ティアの娘。

　オーロラ　　　天使族、ティアの娘。

　ヒイチロウ　　竜、ハクレンの息子。

　ラナノーン　　竜、ラスティの娘。

　ウルザ　　　　人。村長の娘。（養女→息子嫁？）

　グラル　　　　竜。ヒイチロウを狙っている。

　クーデル　　　天使族。皆殺し天使の一人。

　シール　　　　獣人族の男の子三人組の一人。

　森林。

「リリウス。

　エルフ隊、ドワーフ隊が揃った。

　総勢千二百だ。

　予定通り、前に出るぞ」

「リグルか。

　もうちょっと待て。

　領軍がまだ配置についていない」

「おいおい、また領軍か？

　領軍には後から、ゆっくりときてもらったらどうだ？」

「それをやると、後々揉めるんだよ。

　みんなで一緒に戦って勝ちましたって体裁が必要なの」

「面倒な」

「文句があるならお前が領軍の尻を叩いてくるか？」

「いいのか？

　任せろ。

　怒鳴ってきてやる。

　領軍のまとめ役は誰だ？」

「シールの兄貴」

「え？」

「だから、シールの兄貴」

「兄貴がいつの間に来たんだよ？」

「昨日の夜。

　今朝のミーティングで報告したぞ」

「あはは……寝てたから」

「それじゃあ、頑張ってシールの兄貴に怒鳴ってきてくれ。

　できればその際、リリウスは関係無いと証言してくれると嬉しい」

「あはは。

　あー……うん、ごめん。

　領軍が揃うのをゆっくり待とうかな」

「それがいい。

　俺じゃなくシールの兄貴が総大将をやってくれたら楽なんだけどな。

　うるさいのが大人しくなる」

「それこそ体裁の問題だろ？

“大樹の村”が頭を張っていないと」

「“大樹の村”の頭役が俺ってのも問題だと思うんだけどな」

「畑耕しているアルフレート様を戦場に出すのか？

　相手が可哀相だろ」

「あー……うん、そうだな。

　アルフレート様が来たら、ウルザ様も来るだろうし……」

「間違いなくティゼル様もついてくるよな」

「ヒイチロウ様、グラル様、ラナノーン様も出てくるかも。

　オーロラ様がどこまで止められるかだな」

「オーロラ様が心の安らぎだな」

「まったくだ。

　弱音を吐いて悪かった。

　俺が“大樹の村”の頭役を頑張るよ」

「よろしく頼むぜ。

　我らが長兄。

　ところで…………あれはなにかな？」

「あれ？」

「ほら、南の空」

「…………天使族とハーピー族だな。

　持ってる旗は……“大樹の村”？」

「誰か参軍するって聞いてる？」

「聞いていない。

　あ、先頭にいるのルプミリナ様だ」

「やる気満々みたいだけど……あの位置で上昇したってことはクーデル様もいるのかな？」

「いるだろうね。

　クーデル様、急降下爆撃が好きだから。

　角（つの）の持ち出し、村長の許可は取ったのかな？」

「俺は取ってないに一票」

「賭けにならないな。

　あー、決まった。

　城門が吹き飛んだ」

「この戦い、勝ったってことだよね？」

「そうだろうけど、ラテやトラインが頑張ってた開城工作が全部パーになったよな」

「なったね」

「ラテとトラインが来たら、どう言おう」

「これは現実じゃない。

　嘘だって言ってやればいいんじゃないかな？」

「なるほど。

　優しいな。

　あと、これから俺、総大将としてルプミリナ様にクレームをつけないといけないんだけど」

「頑張れ、我らが長兄！」

「これは現実じゃない。

　嘘だって言ってくれよ」

　変な夢をみた。

　なぜリリウスたちが戦争をやっているんだ？

　前にも見たよな。

　あれの続きか？

　いや場面は全然違ったし……成長もしていた気がする。

　敵は誰だ？

　うーむ。

　まあ夢だしな。

　深く考えても仕方がないが……

　もう少し、リリウスたちとのコミュニケーションをとるようにしよう。

　兄弟に“様”はいらないぞ。