キアービットの里帰りとコミュニケーション
キアービットが天使族の里に戻ることになった。
「クジ引きが憎い」
なんだか魔王みたいなことを言っているが、決まったならばと準備をしている。
「お土産はこれぐらいで構わないか?」
お酒を小樽で二つ。
ハチミツを小瓶で三つ。
あと、俺の手作りの像。
十五センチぐらいの農業神の像だ。
「創造神じゃなくていいのか?」
「こっちのほうが福々しいでしょう?」
モデルが花咲か爺さんだからな。
まあ、無理に押し付けるのはよろしくない。
用意していた創造神のミニ像は、始祖さんが来た時にでも渡そう。
あと、途中の交通費として銀貨を袋に詰めて渡しておく。
「多くない?」
「少ないよりはいいだろ?」
「そうだけど……自由に使っていいの?」
「ああ、好きにしていいぞ」
「わかったわ。
ありがとう」
「気をつけて帰れよ」
「ええ。
それじゃあ、さっそく……と思っているのだけど。
まだかしら?」
キアービットが待っているのは、ティアの手紙。
ティアは無視する気だったが、キアービットと俺の説得で手紙を書くことになった。
俺が説得を手伝ったのは、キアービットが手紙を出すように言っている相手が天使族の長ではなく、ティアの母親だからだ。
なんでも、ティアは生まれたばかりのオーロラはともかく、ティゼルのことも母親に伝えていないらしい。
母親との仲が悪いのかとも思ったけど、そうではないそうだ。
まあ、複雑な関係というやつなのだろう。
本来なら深入りはしないのだけど、ティアの母親なら義母になるからな。
……
三十分ほど待って、ティアが手紙を持ってきた。
それなりに悩んだらしい。
疲れた表情をしている。
キアービットは手紙を受け取ったあと、その場で開封した。
「お、おいっ」
さすがにマナー違反だろうと俺は声を上げたが、キアービットは呆れ顔でその手紙を見せてきた。
……
手紙には、ティアと母親の名前しか書かれていなかった。
「……暗号? あぶり出しとか?」
俺の疑問に、ティアは顔をそらした。
「もう少し書かないと補佐長が泣くわよ」
補佐長は、ティアの母親の職。
以前のキアービットと同じく、ガーレット王国で巫女職をやっているそうだ。
「それで伝わります」
「……」
「わかりました。
もう少し書きます」
キアービットの出発は、一日遅れた。
キアービットを見送った後、屋敷に戻ると子猫にタックルされた。
見事な一撃。
俺は悶絶した。
その倒れている俺の上に、子猫たちが乗ってくる。
な、なんだ?
さらに姉猫たちも乗ってきた。
これはひょっとして……しばらく相手をしなかったから怒ってる?
怒ってるよね。
爪、刺さってるから。
悪かった。
ほら、アゴを撫でてやろう。
背中もどうだ?
腹は……あ、そこは駄目なのね。
知ってる。
流れでいけるかなぁと思っただけ。
耳の後ろは大丈夫だな。
ははは。
俺の手は二本しかないんだ。
八匹を同時には撫でられない。
後回しにされたからって引っ掻くの、やめてくれないかな。
けっこう、痛い。
二時間ほど戯れた。
なかなか疲れた。
しかし、満足してくれたようだ。
よかった。
だが、遊びに来た魔王のもとにすぐに行くのはどうなのかな?
俺は弄ばれたのかな。
そんなことはないと、猫……ライギエルが俺のもとに来てくれる。
よしよし。
お前は腹を撫でても怒らないんだよな。
尻尾の付け根は嫌がるけど。
わかってる。
そこは撫でない。
冗談だ。
だから噛むな。
猫たちの相手を終えると、クロの子供たちが数頭、こちらを窺っていた。
何かを期待しているその顔。
さっきの子猫たちを見ていたな。
……
待て待て。
まさか、俺にタックルする気か?
猫とお前たちの違いを考えろ。
お前たちには角がある。
猫にはない。
わかるか?
そうか、わかってくれたか。
よかった。
でも、タックルはするんだな。
痛い。
猫、クロたちのあとは、誰かなと思っていたら、アルフレートたちだった。
わかった。
遊ぼう。
何をする?
新しい遊びがいい?
そうだな。
……
程よい竹の節を抜き、吹矢を作ってみた。
矢は木製。
太い爪楊枝みたいな感じだな。
まず、注意。
向けていいのは的だけだぞ。
人に向けないように。
誰か怪我したら、取り上げるからな。
的は多種用意したぞ。
普通の丸いやつに、当たると倒れるやつ。
点数も書いてみた。
数字は読めるな。
ははは。
馬鹿にしたわけじゃない。
成長の確認だ。
矢を三本吹いて、刺さった場所の点数の合計で競うぞ。
子供たちが吹矢を楽しんでいる横で、真剣な顔で吹矢を行うハイエルフたち。
「ふふふ。
懐かしい武器ですね」
「矢にハロリの毒を塗れば……ふふふ」
「矢の先に針をつけることで、確実性が増すかと」
……
ちょっと怖い。
でもって、山エルフはなにをやっているのかな?
機械仕掛けは反則だぞ。
連射機能とかいらないから。
いや、だから六十連発だからOKってわけじゃなくて……
ああっ、子供たちが山エルフの機械に羨望の眼差しを向けている。
ウルザ、ふらふらとそっちにいかない。
駄目だぞ。
絶対に駄目だからな。
え?
俺が発射させていいの?
このハンドルを回せば発射?
……
い、一回だけだからな。
みんなで吹矢? を楽しんだ。
ちなみに、翌日。
朝から冬眠していないザブトンの子供たちと遊ぶことになった。
わかっている。
お前たちを忘れたりはしないぞ。
短いですが。




