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夏の事件


 事件が起きた。


 ことの発端は……去年の夏になるのかな。


 俺が戯れに木で船を作り、ため池に浮かべた。


 簡単なイカダに帆を張ったシンプルな船。


 その船をヒイチロウが見て大喜び。


 そのヒイチロウの様子に喜んだライメイレンが、時間は掛かるけどもっと大きな船を見せてやろうと言った。


 ヒイチロウはさらに大喜びした。


 以後、ヒイチロウは思い出したように大きな船の話をするようになる。



 ライメイレンは何隻か船を所持しているそうだが、ヒイチロウの為にと大型の帆船を発注した。


 発注先は、シャシャートの街。


 大きな造船所があるのだそうだ。


 マイケルさんは造船業に関わりはないのだけど、シャシャートの街の窓口としてライメイレンの発注を受けた。


 そして、造船が開始された。


 本来、帆船は何年も掛けて造るもの。


 大型ならなおさら。


 だが、一年で完成した。


 手抜きではなく、金の力らしい。


 カラクリ的には、すでに建造が開始されている船を買っただけ。


 発注がきてから造る方式では、造船所はやっていけないのだそうだ。


 なので先に造っている。


 商人は、まだ完成していない船を、投機目的に買ったり売ったりするらしい。


 マイケルさんを通してライメイレンが買ったのは、時間が掛かる船体部分はほとんど完成しており、装飾を施せば完成という状態の大型の帆船。


 装飾に一年掛けたと考えれば、豪華な帆船になると予想できる。


 だとしても、装飾だけで造船を開始というのかな?


 言うそうだ。


 あ、そう言わないと新造船にならないと。


 なるほど。




 そして春の終わりぐらいに完成。


 お披露目がシャシャートの街で行われるのだが、そこにヒイチロウを連れて行くのはライメイレンが難色を示した。


 人の多い場所にヒイチロウを連れて行きたくないのかと思ったが、理由はそれだけではなかった。


「ほかにも船がある場所では、ヒイチロウの船が目立たないではないか」


 気持ちはわかるので、シャシャートの街でのお披露目は諦め、初航海の様子を見ることに。



 場所は、シャシャートの街の東側、五村ごのむらの南にある海岸。


 この辺りは砂浜ではなく岩場で、それなりに深い場所だから帆船が近寄れるのだそうだ。


 まあ、座礁しては悲しいので、あまり海岸には近寄らないように指示はしている。


 俺、ヒイチロウ、ハクレン、ライメイレン、マイケルさんの五人を中心に、大樹の村、五村から見物組が海岸に集まっていた。


 バーベキューをしながら待機。



 船はすぐに見えた。


 マイケルさんが肉の刺さった串を持ちながら、あれですと言ってくる。


 まだ遠いが、ここからでも大きな帆が二本ある立派な帆船だとわかる。


 見物組からの歓声。


 うん、半分ぐらいはバーベキューに夢中だな。


 俺はヒイチロウに大きな船だぞと、声を掛けたが寝ていた。


 ヒイチロウは前日から、かなり興奮していたので疲れてしまったのだろう。


「もう少し、近付くまでは寝かせてやろう」


 ライメイレンの言葉に、誰も反対しなかった。


 しかし、立派な帆船だ。


 そう思っていると、その立派な帆船の後ろに小さな船が追走しているのがわかった。


 なんだ?


 小さな船には帆がない。


 オールもない。


 なのに同じぐらいの速度で進んでいる。


 ひょっとして前の帆船が引いているのか?


 そんな風に思っていたら、帆船から煙が上がった。


 火事だ。


 帆が燃えている。


 え?


 そして、爆発。


 帆船は豪快に沈んだ。


 ……え?



 状況が理解できず、少し混乱したが、俺はハクレンに救助のために飛んでもらった。


 帆船には少なくない船員が乗っていたはずだ。


 見物に来ていたリザードマン、ハイエルフなどがハクレンの背に乗って移動。


 俺は邪魔にならないようにその場で待機。


 後ろにいた小さい船は……逃げている。


 巻き込まれを恐れたのか?


 それとも、あの小さい船が何かしたのか?


 いや、それよりも……


「ばーば、おっきいお船はどこ?」


 爆発音で目を覚ましたヒイチロウが、目を擦りながらライメイレンに聞いていた。


 これが事件。





 救助した船員の証言から、犯人はあの小さい船。


 エルフ帝国の船らしい。


「五村なる愚かな勢力の船であることは調べがついている。

 我がエルフ帝国の安寧を脅かす大型船の存在は許せん」


 という理由らしいが、エルフ帝国は完全降伏で魔王国に吸収された。


 最初は五村への降伏だったが、迷惑なので魔王国に任せた。


 エルフ帝国の降伏が許されたのは、沈められた帆船の船員が全員、無事に救助されたことと、エルフ帝国が所有する一番大きな船を差し出してきたことによる恩情だ。


 いや、酷い戦いだった。




 エルフ帝国は一つの島。


 その島を取り囲むように無数のドラゴンが飛翔。


 外に出ようとする船は沈められるか、追い返された。


 そして、気まぐれに竜のブレスが島に撃ち込まれる。


「貴様らが全て死に絶えるまで続ける」


 ライメイレンの宣言に、エルフ帝国の指導者層はパニック状態。


 同時に、帆船を沈められたことに対する復讐だと、やんわりとエルフ帝国の民衆に伝えた。


 内乱が起きた。


 それを眺めるドラゴン。


 内乱をなんとか抑えつつも、エルフ帝国の戦意は相手がドラゴンという時点でくじけており、どうすれば降伏の意思が伝えられるかになっていた。


 最終的に、島の海岸にある大きな城を自分たちの手で焼くことで、ライメイレンは降伏を受諾。


 戦いは終わった。


 終わってよかった。




 そして、分捕ったエルフ帝国の一番大きな船をヒイチロウに見せていた。


「ばーば、このお船、布がないよ」


 エルフ帝国の船は魔法動力。


 帆は必要ない。



 後日、分捕ったエルフ帝国の一番大きな船には、無駄な帆が取り付けられていた。






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― 新着の感想 ―
これホント笑ったわw
2026/01/19 14:17 なろう読者は民度低い
領土強奪が目的でなく 殲滅目的だから ロ○アやイ○ラ○ルより酷い。 ライメイレン案件と把握しきれなかった 帝国情報部は粛清されたかも。
島が世界から消えてもおかしくなかった…
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