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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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フラウの出産


 個人個人に意見はあるだろうが、産気づいた妻にしてやれる事はない。

 後は母子共に無事に産まれるのを祈るだけ。


 同じ部屋で手を繋いでやるとか、応援してやるとかあるかもしれないが……

「男子禁制です」

 そう言われてフラウのいる部屋に近付く事もできない。

 これまでの出産でもそうだったので、いまさら慌てたりはしない。

 悪魔族の助産婦達やホリー、これまで出産に立ち会ったハイエルフ達が頑張ってくれているのだ。

 ドンと構えて、後は待つだけ。

 待つだけなのだが……

「おおう、おおう、ど、ど、どうすれば……ああ、大丈夫かな、大丈夫だろう、大丈夫なはずだ」

 目の前で慌てている人を見ると、俺も慌てなきゃいけないのかなぁと思ったりしてしまう。

 目の前の慌てているのはビーゼル。

 フラウの出産を察したのか、こちらが連絡する前にやって来て待機。

 ウロウロしている。


 娘を心配する父親の姿としては、正しいのかもしれない。

 俺は……慣れ過ぎてしまったのかな。

 この世界に限らず、出産は命懸け。

 しかしながら……この村で死産はまだない。

 俺の子に限らず、二村のミノタウロス、三村のケンタウロス達も全て無事に出産している。

 リザードマンの卵も、全て孵っている。

 それゆえ、少しボケていたのかもしれない。

 万が一を考えれば…………違う。

 悪い事は考えない。

 フラウも無事、子も無事。

 無事に産まれる。

 よし。


 とりあえず、目の前のビーゼルの気を紛らわせるか。

 ただ、前々からフラウに注意されている。

 下手に子供の未来を語るのは駄目だと。

 万が一ビーゼルが暴走すれば、産まれる前に結婚相手を決めてくる可能性があると。

 いくらなんでも親である俺やフラウを無視して結婚相手を決めてくる事があるのだろうか?

 それがあるらしい。

 子供の未来は話すという事は、やんわりとした相談なのだそうだ。

 つまり。

「子供がまっすぐ育ってくれれば、何も言う事はありません」

 などと純粋に言っても、次のように変換される。

「優秀な教師を捜しているのですが、誰か居ませんか?」

 そんな馬鹿なと思ったが、文官娘衆達からもそうなると注意された。

 いわゆる、直接言わない貴族言語らしい。

 ビーゼルも普段なら俺の言葉をそんな風には取らないが、娘の妊娠に()かれている今は怪しいそうだ。

 下手な事を言うと「婚約者を探せって言ったじゃないか(言ってないけど、そう感じ取れる言動をしたでしょ!)」と後々の揉め事になる。

 なので子供の話題は禁止。

 正直、厳しい。


 宗教系の話題はどうだろう?

 今更だが安産を願い、俺が神像を彫るからと……

 実はこの世界。

 安産を担当する神様がたくさんいる。

 原因はコーリン教。

 本来、安産は大地神が担当しているのだが、コーリン教が各宗派の信仰の広め方を抑制した為、各宗派が信仰する神様を多芸にしていった。

 簡単に言えば、人気のあるご利益があるとする事で、信者を増やそうとしたのだ。

「ウチの神様は農業にご利益があるよ。
 安産?
 もちろん安産にもご利益があるよ。
 ほら、農業って実りに関わるだろ。
 だから安産も大丈夫。
 他にも色々あるよ」

 なので、大抵の神様に安産、戦勝、合格、健康、長寿などのご利益があるとされている。

 神様が実際にいる世界で、それは大丈夫なのかと思うが、大丈夫らしい。

 神様にしても、自身の信仰が増える事、多芸であると崇められる事は……嬉しいのかな?


 ともかく、そういった事情なので人によって安産を願う神様が違う。

 俺も安産は創造神に祈っている。

 フラウは俺と同じで良いと言っていたが、ビーゼルはどうなんだろう?

 聞いてみた。

「魔神です」

 ……

 一瞬、ビックリしたが考えてみれば魔法の神様だ。

 なるほど。

 ビーゼルから魔神の外見を聞き取る。

 魔神に限らず、人によって神様の外見は変化する。

 これは信仰する者の種族が大きく影響している。

 例えば、エルフ族の想像する魔神は耳が長く、ドワーフ族の想像の魔神は背が低い。

 なのでケンタウロス族の想像する魔神は、ケンタウロス型なのだろう。

 前にミノタウロス達の為に神様を彫ったが、ビジュアルに拘らないのもその辺りが影響しているらしい。

 大事なのは信仰心であり、神様の外見ではないらしい。


 ただ、有名な神様になれば、それなりの固定された特徴があるらしい。

 女性であるとか、腕が十本あるとか、髪の毛が地面につくほど長いなど。

 魔神の特徴は、杖を持っている事。

 ビーゼルの想像する魔神を、三十センチぐらいの木材を【万能農具】で彫っていく。

 彫る前に想像を固め、【万能農具】を使う時は無心。

 これが神像を彫る時のコツ。

 気付けば、魔神が出来上がっていた。

 ……

 俺はなぜ、猫を彫ったのだ?

 雑念が入ったか?

 これは横に置いて、作り直し。

 ……

 …………

 よし、良い感じに出来た。

 ビーゼル、どうだ?

「これは……凄い。
 魔神を見事に体現している」

「フラウの安産をこれに願おう」

「はい。
 しかし、その……」

「なんだ?」

「隣の猫の像の方が、神々しさを感じるのですが?」

「……気のせいだ」

 俺とビーゼルは、魔神の像に安産を願った。



 猫の像は……………………………………………………どうしよう。

 悩んでいたら、酒スライムが持っていった。

 玩具にする……ヤツではないな。

 となると……聖女の所に持って行くのか。

 しかし、聖女は猫に怯えてなかったか?

 あれで慣れさせようって事か?

 有効利用してくれるなら構わないか。

 ……

 聖女が祭壇を求めて来た。

 あの猫の像を祭るって……

 なんだったら、大樹の創造神の横に置くか?

 それは駄目?

 わかったわかった。

 じゃあちっちゃい祭壇な。

 ……

 山エルフ集合。

 コンパクトで持ち運び可能な祭壇を設計。

 普段は箱型で、必要に応じて祭壇に変形する。

 どうだ?

 あ、すでにそういった祭壇はある?

 残念。

 でも、頑張って作ろう。

 フラウの出産をジッと待っているより、俺も気が紛れるが……

 結構、時間が経っているが大丈夫か?

 産気づいたんじゃなかったのか?

 ちょっと不安になる。

 いやいや、前向きに。

 無事に産まれる。

 俺が信じないでどうするんだ。

 そう思った時、大きな産声が聞こえた。

 魔神像の前で祈っていたビーゼルが慌ててフラウの部屋の扉の前に待機する。

 ビーゼル、そこだと扉が開いた時にぶつかる……ほら、ぶつかった。

「女の子です」

 扉から、悪魔族の助産婦が一人出てきて俺とビーゼルに報告してくれた。

 そうか。

 初産だからか、ちょっと苦労したけどフラウも無事なようだ。

 初産。

 そうか、そう言えばそうだったな。

 これまでのルーやティアも初産だったけど、特に苦労らしい苦労はなかったから……

 ふう。

 ともかく、無事に出産を終えたようだ。

 良かった。



 祭壇作りは中断。

 その日は宴会になった。

 ビーゼルが普段より飲んでダウンした。

 出産を心配していた疲労もあるのだろう。

 ……

 考えてみれば、ビーゼルが義理の父になるのか。

 ドースにドライム、ビーゼル。

 最初に会った時には想像もしなかった。


 そう言えば、ビーゼルの奥さんには会っていないな。

 領地経営に励んでいるらしいので健在なのだろう。

 今度、フラウと一緒に会いに行くのもいいな。


 始祖さんが宴会に途中参加。

 聖女と共に、盛大に祝福を与えてくれた。




 フラウの娘、フラシア。

 正式にはフラシアベル。

 きっと、美人になるに違いない。

 おっとティゼル、お前も美人になるぞ。

 この子はお前の妹だ。

 仲良くするように。

 アルフレートはどうした?

 宴会で音楽演奏するからそっちに?

 妹の誕生を祝う曲を演奏してくれると……

 良い息子を持った。

 では、聞きに行くとしようか。

 悪いがフラシアは静かな部屋でお休みだ。

 ホリー、フラシアを頼む。

「お任せください、旦那様。
 ついでに、寝ているビーゼル坊ちゃまの面倒もみさせていただきます」

「頼むが……大丈夫か?」

「はい。
 万が一の場合は、フラシア様を優先したいと思います」

 頼もしい。

 頼もしいが、ビーゼルが可哀想だから万が一の時は素直に応援を呼ぶように。


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