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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ビッグルーフ・シャシャート


 魔王はカレーを食べた後、始祖さんに送られて帰った。

 ご苦労様でした。


 なんだかんだあったけど、お店はそれなりに繁盛。

 マルコス、ポーラ、そして従業員を頑張りを再確認。

 遊戯エリアのボウリングは問題なし。

 ただ、無料なのでちゃんと交代して遊んでもらう雰囲気を作らないといけない。

 空いている時は良いんだけどね。

 場合によってはレーンを増やす事も考慮しよう。


 輪投げ、射的は改善を実行中。

 射的は特に安全に関わるから、しっかりしないといけない。

 そう思いながら、本日は撤収。

 また明日、来ます。





 ビッグルーフ・シャシャート。

 店の名前らしい。

 知らなかった。

 しかし、店内に店を入れた事によって、それは施設の名前に格上げになった。

 店の中に設置された肉串の屋台などは、ビッグルーフ・シャシャート内の肉串屋となるのである。

 カレー販売店の名前を考えなければならなくなった。

「マルコス、ポーラが考えるか?」

 任せようと思ったが、是非とも村長がお考え下さいと断られた。

 仕方が無い。

 ……

 素直に『カレー屋』ではどうだろ?

 駄目だな。

 ラーメン屋、焼肉屋、串カツ屋みたいなお店のジャンルであって、個別のお店の名前じゃない。

 今はまだ良いが、他のお店でカレーを提供した時に困る。

 ちゃんとした名前にしなければ。

 ……

 マルコス&ポーラとかどうだろう?

 んー、お店を指しているのか、二人を指しているのかわかり難いか。

 それに、現在の予定ではマルコスもポーラも一時的な出張だ。

 別の者と交代になった時に、この店名では混乱するかもしれない。

 となると……

 マルポ……いや、マルーラはどうだろう。

 マルコスとポーラから少しずつ名前をもらってみた。

 カレー屋マルーラ。

 うん、悪く無い。

 一応、一部でも名前を使うから二人に許可をもらって、問題がなければ採用という事で。



 泣かれてしまった。

 そんなに嫌だったか?

 違う?

 感動で泣いたと……喜んでもらえてなによりだ。

 従業員達にも通達。

 好評のようだ。


 看板が必要だな。

 余っている資材で、大きめの看板を店内と店外の二箇所に設置。

 屋根の上に置きたかったが、万が一の落下事故が怖かったので下に。

 それでも、なかなかの出来だな。

 え?

 ビッグルーフ・シャシャートの看板も欲しい?

 わかった。

 しかし、施設の看板となると、お店の看板よりも大きくないとな。

 こっちも落下事故が怖いので下に設置。

 ついでに場所やエリアにナンバリング。

 南東の飲食エリア、北東の遊戯エリアの名前はそのまま採用。

 南西は出店エリアとして名付けた。

 お店は順調に集まっており、飲食店以外のお店の姿もチラホラ見え始めている。

 そのうち、北西も出店エリアにする予定だ。




 屋根のある場所に魅力を感じるらしく、近くの屋台の大半がここに集まった。

 そうなると、それを目当てのお客も集まり、なかなかの活気。

 だが、場所がわかり難い。

 目当ての店を探すだけで一苦労。

 それを助ける為、出店エリア用の地図を製作する。

 字が読めない人が多いとの事で、イラストで。

 一枚完成したが、結構な労力だった。

 これを……何枚か作り、その上で半年に一回の交換。

 ……

 専門家を雇おう。

 絵が描ける者はいるだろうか?

「絵描きは大抵が貴族のお抱えですから……」

 いないとの事。

 詳しく話を聞くと、絵は娯楽であり、絵の具は高い。

 なので、絵を描くのは貴族に抱えられた画家か、絵を描く事を趣味にした貴族だけと。

「簡単な絵なら描ける者はいるでしょうが、このように精密な絵になると……」

 精密な絵?

 ちょっとディフォルメした串肉や、海産物なのだが?

 しかし、困った。

 俺が描くしかないのか?

 さすがにちょっと……

 文字で勘弁してもらえないだろうか。

「あ、あの、私に描かせてもらえませんか」

 誰だ?

 従業員の一人だった。

「私、絵を描いてみたいです」

 なかなかのやる気。

 しかし、求めるのは人の目に触れるものだ。

 まずは実力を見せてもらおうか。

 紙とペンを渡す。

 ……

 うん、天才がいた。

 俺よりも上手い。

「私、昔っから絵を描くのが好きで……地面にいっぱい描いていたんです」

 ポーラに伝え、シフト調整。

 地図製作をお願いし……同時に店内の店の看板の製作の仕事を始める。

 さすがに一人では無理なので、従業員から絵に興味がある者を数名追加で採用。

 地図は基本業務で、店内のお店の場所代からお金をもらおう。

 看板には、商品の絵と店名をドーンと描く。

 強制ではなく希望店のみ。

 看板は材料費込みで一枚、大銅貨十枚。

 最初は注文が入らないだろうから……とある羊肉を焼いているお店に協力してもらう。

 この店が、最初にお店を出すと声を上げてくれたらしい。

 それで流れが出来たとマーロンが評価していたからな。

 感謝も兼ねてだ。


 看板を掲げてから、お客の動きに変化が出来た。

 看板が目印になるのだ。

 さらに、お店は店頭以外での客引きは禁止。

 看板は馬鹿に出来ない効果を発揮する。

 まあ、看板代が安くはないから殺到はしないだろう。

 自分達で作るかな?

 それも有りだろう。

 そうなったら、今度はノボリで派手にしていこうか。

 いや、火を扱う店もあるからな……ノボリに火がついたら困るか。


 ただ、ある程度の美観のコントロールは必要だろう。

 トラブル防止の為の見回りもいる。

 今は俺に同行しているミノタウロスやリザードマン達が頑張ってくれているが、いつまでも手伝わせるわけにはいかないからな。

 マイケルさんに相談して、警備隊を組織してもらおう。

 案内員も兼ねてもらえば、トラブルが無い時も遊ばせる事にはならないだろう。


 マイケルさんとの相談で、警備隊の取り纏めに推薦されたのがゴールディだった。

 これまでうちの店、マルーラの混雑対応をやってくれていた人だ。

 顔が怖いが、腕は悪く無い。

 部下を何人か抱えている人なので、そのまま全員を警備隊への就職をお願いした。

 ゴールディとしては、他にも仕事があるので就職は出来ないと謝罪された。

 ただ、彼の部下が警備隊に就職するのは歓迎との事で警備隊は結成された。

 隊長はゴールディの推薦を受けた若者。

「頑張ります」

 よろしくお願いします。

 警備隊への給料も、場所代から支払われる。

 ゴールディは以前と同じく、カレー屋マルーラの混雑対応を。

 警備隊に就職して減った部下は……まだ他にも部下がいるのか。

 頼もしい。



 そして、ビッグルーフ・シャシャートの運営に関して。

 現在、マーロンに一任している。

 しかし、彼はゴロウン商会の次期会頭。

 さすがにずっと借りっぱなしはマズいだろう。

 だが、代わりと言われてすぐに出てくるほど、人材は豊富ではない。

 そこで、ビッグルーフ・シャシャートの運営に関してはゴロウン商会に任せた。

「よろしいので?」

「慣れた者がやった方が良いだろう」

「確かにそうですが……わかりました。
 ゴロウン商会で引き受けさせて頂きます」

 場所代の一部が、ゴロウン商会に委託料として支払われる。

 残った金額が、運営管理費だ。

 ああ、カレー屋マルーラも場所代を払う事にした。

 自分の店なのにと思うが、不公平感をなくす為だ。

 それに、外部に運営を委託するワケだしな。

 場所代と思わず、運営委託金と思おう。

 とりあえず、遊戯エリア込みで一ヶ月に十店分を支払う。

 少ないかな?

 足りなければ、増やそう。

 この辺りは収支をもう少し見てからだな。





 出店エリアと飲食エリアの間に舞台を設置した。

 周囲より一メートルぐらい高い、半径七~八メートルぐらいの半円形の舞台。

 音楽を演奏したり、劇をやったりと色々できる場所なんかあったら良いんじゃないかと思ったのだ。

 嘘です。

 大体の仕事を終え、暇そうにしていたハイエルフに仕事を与えたかっただけです。

 完成した舞台で、実験的にガルフが演舞。

 その後、ガルフとミルフォードが模擬戦をやってくれた。

 舞台に傷が付いた。

 反省。

 まあ、観客が喜んでくれたから良いか。

 マイケルさん達と相談し、舞台を一般に貸し出す事にした。

 収入が少しでも増えれば良いな。




 遊戯エリアは、完成した輪投げと射的に列が出来ていた。

 あまりの人気に、スペース拡張が余儀なくされそうだ。

 ボウリングの方も順調。

 常連客達がマナーを初心者に教えている。

 助かる。

 今度、ボウリング大会をやる事を伝えたら、かなり喜ばれた。

 賞品は奮発しよう。



 カレー屋マルーラの隅で、カラアゲとお酒の販売が正式に始まった。

 当初はカレーの無料配布の目先を逸らす為だったが、なんだかんだとファンが出来たようだ。

 通常営業になって販売しなかったら、不満が出たそうだ。

 求められる事は良い事だ。

 ただ、カラアゲは鶏肉の確保が大変だった。

 これはゴロウン商会に頑張ってもらった。

 しかし、どこでどう話が大きくなったのか、街の郊外に大規模な養鶏場が建設される予定になっている。

 本当に、どうしてなのだろうか。


 酒の方は、大樹の村からの持ち出し。

 ただ、生産量は急に増えないので、外部に販売する分がお店に持ち込まれた形になる。

「来年はお酒の生産量、期待しますね」

 酒の取引量の減少を快く受け入れてくれたマイケルさんの言葉。

 色々と頑張ってもらっているので、素直に頷くしかない。

 そして、本当に申し訳ない。

 個人的に味噌、醤油、マヨネーズに最近開発したケチャップを加えて渡しておこう。

 楽しんでください。

 胡椒とハチミツも追加で。

 見慣れた品ばかりで悪いけど。


 話を戻して、カラアゲの販売は従業員達が行う。

 カラアゲが転がらないようにフチのあるお皿に希望の量を盛る形だ。

 切ったレモン、マヨネーズ、ケチャップ、塩を皿のフチに適量置いている。

 味の変化用だ。

 胡椒はカレーの方で使うから、しばらくは提供できない。

 申し訳ない。

 販売直後から、個性的な常連が出来た。

 貴族っぽい人だが……気さくな感じのようだ。

 ガルフと知り合いっぽいな。

 まあ、貴族全員がアルバトロス家の嫡男のようではないか。

「あれは特殊な例だから。
 本当にすまなかった」

 裏で魔王に謝罪された時の事を思い出す。



 酒の販売も従業員にお願いしようと思ったけど、これはさすがに年齢的にどうかと思った。

 なにせ従業員はみんな小さい。

 俺の感覚で中学生以下だ。

 お酒の販売をさせるのは気が引ける。

 そこで人材を募集したら、集まった。

 主に近所の主婦。

 かなりの人数が集まったが、実際に働くのは数人。

 なので、交代でお願いする。

 各自の収入が減るから文句が出るかと思ったけど、そんな事はなかった。

 逆に交代要員がいる事で、子供などの事情で休みやすいのが良かったらしい。





 なんだかんだと十日ほど、通ってしまった。

 転移魔法で送ってくれた始祖さんには感謝だ。

 ただ、実際に店や街を見れて良かった。

 色々と自分に足りない事も自覚できた。

 頑張らないと。

 直近は、カレーの調味料。

 今の販売ペースは、生産量を超えた消費量だ。

 放置はできない。

 気温の変化の少ない太陽城こと四村で調味料系を大量に育ててもらおうかな。




「村長、よろしいですか?」

 マイケルさんが、大きな紙を持ってやってきた。

「どうした?」

「そろそろ向かいの店の話をと思いまして」

「……え?」

「明日から解体が始まります。
 建物は、ここと同じ感じで構いませんか?」

 え?

 ちょ、ちょっと待って。

「向かいの店?」

「はい」

「向かいの店って……大通りの向こう?」

「はい」

 詳細を聞いた。

 このビッグルーフ・シャシャートの南側にここと同じ大きさの店が出来るらしい。

「別の店じゃないのか?」

「村長のお店ですよ。
 まとまった大きな土地の確保ができず、通りに分断される形になったのは申し訳ありませんが……」

 ……

 計画では、東側と南東側にも出来るらしい。

 そっちの進捗しんちょく具合は……あ、土地購入が終わって、退去待ち……

 中止は無理っぽいね。

 ……

 おかしい。

 何が悪かった?

「頂いた土地の購入費、建物の建設費に合わせた場所をご用意しただけですが?」

 土地の購入費、建物の建設費……

 ああ、たしかその額を決める時、俺はなんと言ったっけ……

 思い出す。


「マイケルさんのお店、まだ払っていない代金があるよね」

 前に金貨が不足しているので支払いを待って欲しいと言われた。

「はい。
 恥ずかしながら……」

「その代金、全部使っていいから、それで買える土地と建物で。
 バランスは任せるよ」

 村には金貨で支払うしかないけど、シャシャートの街ならゴロウン商会の信用で金貨を使わずに取引ができると前に聞いている。

「全部ですか?」

「一割は手数料で受け取ってよ」

「一割……承知しました。
 このマイケルに全てお任せください」

 ……

 土地代が俺の想像よりやすいのかな?

 それとも建物の建設費が?

 計算外。



 もうすぐ村でお祭りだから、それが終わってから本格的に考えよう。


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