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新たな春


 今年の冬は太陽城関連で終わった気がする。


 何度も往復したなぁ。


 ……


 やはり、自力で移動できる手段が欲しい。


 早く気球を作らないと駄目かな。


 まあ、急いで失敗しても困る。


 墜落は避けたいしな。


 万が一を考えて、人間用のパラシュートも用意したい。


 前に酒スライムで実験しただけだったからな。


 しかし、その前にしなければならないことがある。


 春になって目を覚ましたザブトンに太陽城の説明。




 ハクレンに頼んでザブトンと共に太陽城に行くと、そこはお昼寝会場だった。


 いや、全員気絶してるだけかな?


 そんなに怖がらなくても……


 ザブトンも気にしなくていいぞ。


 慣れてないだけだろう。


 ベルはさすがだな。


 ……


 意識は保っていたが、腰を抜かしていた。


 つっつくとへたり込み、泣き出した。


 着替えも必要だったらしいので、彼女を背負って私室に送った。



 ゴウは……水晶石になり切って乗り切ろうとしていたので、俺がバラした。


「ひ、酷いっ」


「いや、お前らってドラゴン相手でもなんとかなるんだろ?」


「ドラゴン相手になんとかなるわけないじゃないですか!」


 全力で怒られた。


 あれ?


 そうだっけ?


「全盛期の太陽城の防御力はドラゴンの攻撃にも耐えるようにできていますが、今はそれすらありません」


「燃料不足は解消しただろ?」


「村長の攻撃によって、防御機能が停止しましたから……自動修復待ちです。

 計算では、二年ほど掛かる予定になっています」


「すまん」


「いえ、あの時の非はこちらにあります。

 改めて謝罪させてください」


「もう終わったことだ」


 謝罪合戦になったので、適度に切り上げてザブトンを紹介。


 被服関連の情報が欲しいと頼んでおく。




 ザブトンを太陽城の各所に案内。


 と言っても、まあ俺がなんだかんだと耕したので村とあまり風景は変わらない。


 遠くが森か空かの違いだろうか。


 家を建てる予定の場所では、少しずつ建設が始まった。


 やはり建材の輸送が大変だ。


 建材となる木も育てているが、さすがに成長を待つのは気が長い。


 下で用意して、ドースたちが来た時に一気に運び込むべきだろうか?


 それとも、ビーゼルや始祖さんに頼んでの転移魔法?


 輸送する建材の量が多いから、始祖さんはともかくビーゼルは厳しいかな。



 ザブトンが気になったのは太陽城ではなく、夢魔族の下着みたいな格好。


 刺激を受けるのは構わないが、普段着としてはどうかと思うぞ?


 水着のデザインに流用する方向でお願いしたい。






 大樹の村に戻って、春の仕事。


 当然、畑仕事!


 頑張る。


 何をどれだけ育てるかは、事前に話し合っている。


 大樹の村の畑も広くなったが、俺の作業速度も上がっている。


 集中させてくれたらもう少し早く終わったのだけど、なんだかんだと用事が入って一ヶ月ぐらい掛かってしまった。




 用事その一。


 ラミア族、巨人族に太陽城の説明。


 双方、特に気にしないとのこと。


 反応が鈍くて悲しい。


 ダンジョンで生活しているから空を飛んでいる物に興味が無いのかな?


 ちなみに、ハウリン村や魔王国、ドライムに関しては小型ワイバーン通信で冬の間に連絡している。


 ハウリン村は連絡前から太陽城を確認していたので、詳細がわかって安堵。


 祝辞を返してくれた。


 魔王国は太陽城を管轄下にしたことの承認と、余裕のある時に太陽城に招待して欲しい旨の私信。


 ドライムは冬場でも気にせず来訪し、太陽城を見学し終わっている。


 温泉とか酒場とかそういった施設を早く用意してほしいそうだ。


 俺もそう思う。


 頑張りたい。




 用事その二。


 一村いちのむら二村にのむら三村さんのむらが各自で農業をスタートさせているが、協力要請はある。


 こちらの作業が終わった後で構わないとのことだが、【万能農具】に頼っている大樹の村と違い、各村は普通の農業だ。


 できるだけ優先した。


 太陽城こと四村よんのむらの畑は、俺が【万能農具】で作ったので成長が早い。


 今回は問題ないだろう。


 問題は今後。


 あそこは季節を気にせずに農作業ができるが、果たして普通の農業は可能なのだろうか?


 太陽城に適した作物を探さなければならないかもしれない。




 用事その三。


 ガットが太陽城の土台部分に関して、調査を進言。


 太陽城の土台部分は、俺の攻撃によって森に落下し、小さな山になっている。


 冬場だったのでこれまで何もしていなかったが、暖かくなってきたので調査をということだ。


 何か珍しい鉱物があるかもしれないと。


 しかし、太陽城の土台はゴウやクズデンの話だと悪魔族の攻撃の結果だそうだ。


 そこに鉱物があるのだろうか?


 あってもおかしくないとのことで、調査隊が結成。


 俺は畑があるので不参加。


 リザードマンのダガ、獣人族のガルフを中心とした調査隊が結成され、意気揚々と出発。


 ハクレンかラスティに運んでもらうのかと思ったら、徒歩らしい。


 冬場で鈍った身体を鍛える意味もあるのかもしれないが、同行するガットが悲壮感を漂わせている。


「無理に同行しなくても良いんじゃないか?

 ガルフでも鉱物の見分けができるんだろ?」


「自分で言ったことだから……が、頑張る」


 護衛役のクロの子供たちに、ガットを頼むとお願いしておく。




 用事その四。


 始祖さんが来た。


 太陽城を見て、懐かしいとか言い出した。


 ……


 考えてみれば、知っていてもおかしくない。


 話を聞くと、天使族が神人族と名乗っていた時に行ったことがあるらしい。


 特に目新しい情報は無かった。


 始祖さんはそのまま温泉に。


 向こうでライオン一家に出会い、驚いていた。


 その後は一緒に温泉に入っていたらしいけど。


 子ライオン、結構大きくなっている。


 成長、早いなぁ。




 用事その五。


 山エルフ達があっと言う間に小型の気球を完成させた。


 キーとなるのは保温石を精製した太陽城の燃料を使った筒状の魔道具。


 提供はルー。


 以前、俺が魔道具を色々と頼んだ時の試作品の改良だそうだ。


 空気に接する面を調整することで温度調整を可能とした。


 ザブトンが作ってくれた気球の風船部分も丈夫だ。


 そのうえで、魔法による強化をしているので試作品は成功。


 酒スライムが得意気に試乗していた。


 酒スライムでも操縦できる操作性を褒めるべきだろうか。


 それを見ていたウルザたちが、早く乗りたいと要望。


 正規サイズでの製作を開始。


 材料の伐採に借り出された。


 これは後回しにしても良かったのだが、太陽城との移動の確立が大事だからな。


 いつまでもハクレン、ラスティ、天使族に頼っているのもよろしくない。


「村長だけなら、喜んで運ぶのですが……荷物が多いとさすがに厳しいです」


 太陽城の悪魔族、夢魔族は俺を抱えての飛行は無理。


 俺を抱えて飛べる天使族たちの凄さを再認識した。






 用事は多かったが、なんとか対応できて良かった。


 畑が一段落すれば、俺も手が空いてくる。


 ダガたちの応援に行ったほうが良いだろうか?


 それとも……


 ん?


 クロがフライングディスクを咥えて待っていた。


 そう言えば、あまり相手ができなかったな。


 よし。


 今日はクロと……じゃないな。


 クロの後ろにはクロの子供たち。


 ボールを咥えていたり、ブーメランを咥えていた……。


 わかった。


 今日はクロたちと遊ぼう。




 ちなみに、クロの子供たちの一部は交代で各村の防衛を担っている。


 交代期間はクロの子供たちに任せているが……特別に一日交代で大樹の村に戻ってきている。


 俺は四日ほど、クロの子供たちと遊んだ。


 気分はドッグトレーナー?





 余談その一。


 前にクロの子供が拾ってきた子犬。


 でっかく育ち、フェンリルと判明したが……


 普通にクロたちに混じって生活をしている。


 かなり馴染んでいるようだ。


 ただ、クロたち用の道具ではサイズが合わない。


 ……


 大きなボールの製作が急がれる。





 余談その二。


 今年もザブトンの子供たちが旅立った。


 糸を空に伸ばして、風に乗って移動するスタイル。


 今年の風下には太陽城があった。


 十匹ほどが太陽城に着地。


 そこで生活するらしい。


 早い再会に俺は嬉しかったが、太陽城に住む者たちは怯えていた。


 慌てて俺に連絡してきたぐらいだしな。


 だが、大丈夫。


 慣れる。




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― 新着の感想 ―
熱気球は移動は風まかせだろーに? 飛行船ならばエンジンプロペラで移動可能だけど?
[良い点] イベント配分が多いしキャラや内容もほっこりしている [気になる点] もう少し会話文入れてほしい(そのままでもいいが) [一言] 会話文なくてもすごく面白い
2022/11/06 21:55 桜(仮名)
[良い点] 最新話時点では、自己修復も済んで四村(太陽城)の防衛システムは完動してるんでしょうね。 [気になる点] >>ベルはさすがだな。 >>…… >>意識は保っていたが、腰を抜かしていた。 >>…
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