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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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隠し扉の先


 隠れていた通路を進む。

 現在、俺の傍にいるのはクズデン、ルー、ハクレン、ウルザ、グラル。

 それと、クロの子供が数頭、俺達の護衛として残っている。


 他のメンバー、ヤーをはじめとした山エルフ達は悪魔族、夢魔族から、技術面の聞き込み。

 ティア、グランマリア、クーデル、コローネ、キアービットは、太陽城の内部を探索中。

 天使族にしかわからない仕掛けがないかを調べてもらっている。

 まあ、目の前の通路が今のところ、一番怪しいが。

 ラスティには申し訳ないが、追加の食料を村に取りに戻ってもらっている。

 ここの食生活を知ってしまったので、放置しにくい。

 残りのメンバーは、クズデンから提出されたアイテム類や魔道具の性能確認。

 武具関連が多いので、リザードマンのダガや獣人族のガルフに任せたのだ。

 中庭で振り回しているが、爆発とかはしないよな。


 通路を進むと、広い書斎のような場所に出た。

 本棚に本が並んでいるが……床にも散乱。

 地震の後のようだ。

 本棚に残っていた本は綺麗だが、床に散乱した本の上には厚いホコリが乗っている。

 本棚に魔法でも掛かっているのかな?

 本の内容は……多岐に渡る。

『神人族の栄光』

『勝利の為に。戦術論三章』

『城主になるには』

『好かれる上司』

『美術図鑑』

『絵の具の作り方』

『球技大全』

『森の動物』

『モテるファッション』

『恋愛論』

『ドラゴン族の秘密』

 ……ドラゴン族の秘密は読んでみたいな。

 なんにせよ、並びがグチャグチャだな。

 整理のできない城主だったのだろうか?

 床に散乱している本はボロボロで……崩れる。

 いつからこんな感じなのだろうか?

 百年二百年じゃないよな。

 ……

 ホコリがあるので先行したクロの子供達の足跡が残っている。

 各所を警戒した後……書斎の一箇所に空いた通路に続いている。

 通路の横に置物があり、それが倒されている事からクロ達が操作したのかな?

 なかなか賢い。

 俺達はその後を追いかける。

 ウルザ、グラル。

 ホコリで遊ばない。

 ゲホゲホするぞ。


 クロの子供達を追いかけて通路を進むと、また扉。

 仕掛けはなく簡単に開くが……開いて理解。

 置物を動かす仕掛けはあるが、それは扉の向こう側。

 内側からは仕掛けを気にせずに開けるようだ。

 そして、そこは牢屋。

 左右に小さな牢が並んでおり、不気味な雰囲気がある。

 人の手が入っていないのか、牢の中も通路もホコリが溜まっている。

 幸いな事に牢の中には変なものはない。

 ……あ、変なものはあったかな。

 一箇所。

 出入り口に近い牢の中が、綺麗に清掃されていた。

 そして極めて最近まで使用された跡。

 閉じ込められていたのではなく、これは……

 考えながら進むと、見覚えのある場所に出た。

 中庭だ。

 先行したクロの子供達と共に、ダガやガルフがやってくる。

「こんな場所に牢屋が?」

 普通の壁。

 ここにも置物があるかと思ったが、台ごと壊れていた。

 だからか、牢屋を隠している扉は押せば開く。


 俺はこの太陽城に到着した時に魔物の子供を庇っていた少女を呼んだ。

 予想通り、この牢の中で魔物を飼っていたようだ。

 ちなみに、魔物はトカゲ型。

 カメレオンみたいな感じかな?

 人の手に慣れれば、襲う事はないとの事らしいが……まあ、大丈夫か。

 カメレオンは俺から少女を守るような立ち位置で、俺を警戒している。

 素直に感心する。

 だからクロの子供達が近づいたからって、絶望しないように。



 さて、これで隠し通路は終わり。

 城の中から書斎、牢屋、そして外。

 あの書斎は隠し部屋かな。

 でもって牢屋を通じて外に逃げる。

 もしくは謀反が起きた時に牢屋から書斎に逃げ込む?

 城主の用心かな。

 ……

 うん、おかしい。

 書斎に逃げ込んでどうするというのだ?

 俺達はもう一度、書斎に戻る。

 ダガ、ガルフも同行するようだ。



 書斎の出入り口は二箇所。

 俺達が来た城内からの通路と、牢屋に続く通路。

 しかし、置物の仕掛けはもう見当たらない。

 となると……

 書斎に全員を入れ、牢屋側へ続く仕掛けを戻す。

 書斎を隠していたのと同じ仕掛けってのがありえない。

 同じ仕掛けだと、一箇所バレると全部バレてしまうからな。

 となると、牢屋に続くのはダミー。

 置物を調べると……

 うん、回せた。

 書斎全体がガコッと揺れると、そのまま下に降りる感覚。

 エレベーターの中のようだな。

 降下はすぐに終わり、新たな通路が出現。

 ここが本命かな。

 またクロの子供達が突撃するかと思ったが……

 動かない。

 あれ?

 ……

 通路を認識していないようだ。

 どういう事だ?

 俺は通路を指差し、この場にいる者に聞く。

「あそこに通路があるよな」

 俺の質問に頷いたのはウルザだけだった。

 ……

 共通点、人間?

 種族による認識阻害とかあるのかな?

 ともかく、見えてなくても通路があるのだ。

 俺は進めた。

 ウルザも進めた。

 他のメンバーは入れなかった。

 そこに壁があるように。

 いや、他のメンバーには壁にしか見えないらしい。

 ハクレンが思いっきり、その壁を殴ったが弾かれた。

「無茶をするな」

 俺は通路から書斎に戻る。

 うん、戻れる。

 用心を考えたら、進まない方が良いのだろうけど……

 この先にあると予想できるのは太陽城の動力部。

 太陽城が浮遊している仕掛けだろう。

 だからこそ、大きな罠がないと思うが……

 一番、用心すべき場所でもある。

 俺とウルザだけで進むのは止めた方が良いだろうか。

 ウルザが先行しないように手を繋いでおく。

 素直に繋がれているな。

 抜け出してダッシュするかと思ったが。

 ん?

 グラルもか?

 じゃあ、反対側な。

 ルー、ハクレン、出遅れたからって拗ねない。

 さて検討。

 ……

 よし、帰るか。

「待ってください」

 ダガに頼んで仕掛けを操作して貰おうとしたところで、部屋に声に響いた。

 俺達の声ではない。

 聞き覚えのない女の声。

「結界を解除しました。
 これで他の方も通れます」

 すると、俺とウルザ以外にも通路が見えたようだ。

 クロの子供達やガルフが侵入する。

 問題はなさそうなので、そのままクロの子供達が先行。

 ガルフの誘導に従って、俺達は通路を進んだ。



 予想通り、通路の先は太陽城の動力部。

 巨大な水晶石によくわからない機械が取り付けられている。

 だが、雰囲気は動力部ではなく神殿のようだ。

 それを強調するように、神官の格好をした女性が一人。

 先行したクロの子供達が取り囲んでいる。

「予言の書より十年ほど早いですが……よく参られました」

 束ねた長く白い髪が特徴のようだ。

 彼女はこちらに一礼した後、話を進める。

「太陽城城主補佐筆頭。
 ベル=フォーグマと申します」

 城主補佐筆頭?

「太陽城の運航を管理する責任者とお思い下さい。
 さて、さっそくですがお渡しすべき物をお渡しし、伝えるべき事をお伝えして予言を完遂させたいと思います」

 ベルはどこからか錫杖のような物を取り出し、軽く振ってシャランと鳴らした。

 俺の前に真っ赤な刀身の剣が現れた。

「太陽のつるぎです」

 持てという事かな?

 しかし、俺の両腕はウルザとグラルによって塞がれているので持てない。

 ベルは気にせずに話を進めた。

「魔王ガルガルドの弱点は背中に一枚ある鱗です。
 そこにこの剣を突き刺せば、魔王を倒す事ができるでしょう。
 頑張ってください。
 勇者様」

 ……

「すみません、人違いでは?
 俺は勇者ではありませんよ」

「知ってます」

「え?」

「予言の書では勇者が来る事になっているんです。
 なので、ここに来た貴方は勇者です。
 勇者じゃなくても勇者なのです。
 それで良いじゃないですか」

「いや、そう言われても……魔王とは知り合いだし、倒す気もないんだけど?」

「その辺りはご自由に。
 私はここに来た人に太陽の剣を渡し、魔王の弱点を伝えるのが役目ですから」

「えーっと……」

「こちとら、太陽城の運行以外に余計な役目を押し付けられて迷惑してたんです。
 貴方がその剣を受け取ってくれたら私の役目が終わりになるので、どうかよろしくお願いします」

「魔王を倒さないけど構わないのか?」

「問題ありません」

「変な呪いとかないよな?」

「ありません」

「この剣は俺が自由にしても?」

「構いません」

「捨てても?」

「はい」

「そうか」

 俺はウルザとグラルから手を離し、太陽の剣を持った。

 重い。

「ありがとうございます。
 これで私の役目が果たせました」

 ベルは清々しい笑顔だ。

 見ようによっては神秘的だが、先ほどまでの会話から凄く面倒だったと感じる。

「ご苦労様でした」

 俺はそう述べ、受け取った太陽の剣を床に置き、【万能農具】のクワを持つ。

 そして太陽の剣を耕した。

 うん、土になった。

 知り合いを殺す剣など不要。

 ベルが怒るかなと思ったが……彼女はニッと笑って俺に親指を立てた。

 役目、めちゃくちゃ嫌だったんだろうなぁ。



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