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鍋と報告


 屋敷の食堂で夕食。


 制圧部隊の面々が戻ってくるかどうかわからなかったけど、ちゃんと用意はしている。


「向こうに残してきたクロの子供たちの食事は?」


 クロの子供たちは数日食べなくても平気で動くが、村にいる時は一日二回キッチリ食べているから心配だ。


「現地調達してたかな」


 ラスティが心配無用と様子を教えてくれる。


 食べられる魔物か魔獣がいるのはありがたいな。


「じゃあ、食事をしながら報告を聞こうか」




 食事は鍋料理。


 昆布ベースのダシに醤油を加え、白菜、豆腐、ニンジン、ダイコン、シイタケ、シメジ、エノキタケなどを入れている。


 メインの具材は少し悩んだが、マイケルさんの所から仕入れたエビを投入。


 なぜか人間サイズの巨大なエビが大量に送られてきたが……発注ミスか?


 あ、いや、俺が大きいと曖昧な指示をしたのが悪かった。


 うん、常識って場所によって違うよね。


 反省。


 エビのサイズに少しビックリしたが味は悪くなかったので問題無し。


 鍋には殻を剥いてブツ切りにして投入。


 エビの面影がなくなるのは残念だが……味はしっかり主張。


 エビだけだと寂しいので白身魚を切り身で投入。


 カニも入れたくなるけど、カニが苦手な者がいるからな。


 別の機会にしよう。


 そのままで食べられるけど、味が足りないならレモンやライムをどうぞ。


 柑橘系の果実酒からポン酢のようなものも用意した。


 他の薬味としてネギ、大根おろし、ゴマ、唐辛子。


 各自、自由にどうぞ。



 四人から六人で一つの鍋を囲んでもらう。


 ウルザはグラルと一緒にハクレンと同じテーブルに。


 獣人族の男の子たちは、自分たちの家に戻ったか。


 食べていっても構わなかったのに。



 クズデンは謝罪を終えたので客扱い。


 俺と同じ鍋をつつくテーブルに。


 話も聞きたいしな。


 酒は許可するが、まだ太陽城を制圧できていないので自制するように。


 明日もまた再アタックするらしい。




「第一制圧部隊は、悪魔族が拠点としているエリアとその周辺を確保したぐらいです」


 ティアが報告してくれる。


「そんなに広いのか?」


「そこそこですね。

 ダンジョンと考えれば狭いかと。

 ただ、生息している魔物がやっかいです」


 危険度は低いが魔力を吸収するタイプの魔物がいるらしい。


「下手に接触すると魔力を奪われ、魔力由来の攻撃も無効化されます」


 なるほど。


 その魔物がいるため、悪魔族たちは城から逃げられないとのこと。


 魔力がないと空が飛べなくなるからだ。


 退治したらどうだと思うが、なかなかしぶといようだ。


 ハクレンがブレスを吐いていたのも、それらを一掃するためかな?



 第二制圧部隊は、エリアの確保はしているらしいけど報告者がいないので不明。


 ラスティの報告では、怪我もなく一方的に攻撃しているから心配しなくていいとのこと。


 頼もしい。


 そして、夜通し頑張るのかな?


 ……


「クロの子供たちが、残っている悪魔族を襲ったりしないか?」


「その辺りを考え、残っている者たちには村長の服を預けています」


 山エルフのヤーが、追加具材を運んできてくれる。


「俺の服?

 ああ、匂いで識別するためか」


「はい。

 あと、確保しているエリアにも置いてあります。

 インフェルノウルフは賢いから、それで察するでしょう」


「確かにな。

 クズデン、詳しく聞いていなかったが……あの城にはどれぐらい悪魔族がいるんだ?」


「は、はい。

 悪魔族は私を含めて六十人ほどです。

 他に夢魔族が二百人ぐらいいます」


「夢魔族?」


「夢魔族はサキュバスやインキュバスといったほうが判りやすいでしょうか」


「あ、あー……」


 ファンタジー物語のお色気担当。


 説明を聞いても間違いない。


 女をサキュバス、男をインキュバスというらしい。


「全部で二百六十人か?」


「はい」


 閉じ込められた環境で二百六十人分の食事が用意できたのだろうか?


 クズデンは鍋料理をかなり喜んで食べている。


 明日の再アタック時に、食料を運んでやったほうが良いだろうか?


 あ、押し付けは失礼か。


 素直に聞く。


「ダンジョンイモを栽培しているので、悪魔族の食料は大丈夫です」


 ん?


「夢魔族の分は?」


「あー……あはは……な、なんとかなっています」


 なんとかなっているなら、なぜ目を逸らす。


「ごほん。

 ただ、ダンジョンイモばかりで。

 冬場で厳しいでしょうが余っている食料があるなら売っていただけると助かります。

 代金は……そのダンジョンイモかアイテム類との交換でお願いします」


「わかった、準備しよう」


 食事はその後、雑談を交えながら続く。


 うん、エビは人気だな。


 クズデンはお代わりか。


 遠慮なく食べるといい。


 ウドンを楽しんでいるテーブルもあるな。


 ハクレンのテーブルでは早々にご飯を投入して、オジヤにしている。


 ああ、ウルザがそろそろ寝落ちしそうなのか。


 なんだかんだ暴れてても、五歳だからな。


 グラルも似たような見た目だが、五歳じゃないんだろうなぁ。


 俺よりも年上ってこともあるかもな。


 怖いから聞かないけど。



 雑談で、判明。


 ドラゴンたちの従者をやっているブルガ、スティファノをはじめとした悪魔族は、太陽城にいるクズデン達悪魔族とは違うらしい。


 正確に言うと、ドラゴンたちの従者をやっている悪魔族は、上級悪魔族とか古代悪魔族というのが正しいとのこと。


 何が違うんだと聞くと、主に戦闘力と寿命だそうだ。


 なるほど。


 悪魔族というだけでブルガたちと同じぐらいクズデンは強いのかと思っていたが、勘違いだったようだ。


 では、実際にどれぐらいの実力なんだろうか?


 今は興味本位だが、太陽城を制圧した後のことを考えると聞いておきたい。



 一応は制圧目的で動いているが、制圧してどうこうする気はない。


 村の真上に居続けられると迷惑なので、どこかにやりたいだけだ。


 それが叶わない場合、落とすことも視野にいれている。


 太陽城が無事だとして、クズデンたちが太陽城に住み続けたいなら別に構わない。


 これまで太陽城に閉じ込められていたのだから、故郷に帰りたいとか思う者もいるかもしれない。


 ご自由にどうぞだ。


 ただ、太陽城を落とした場合、そこに住んでいた二百六十人のことを考えないといけない。


 クズデンがもう少し悪人なら放置なのだが……まあ、謝れるようだし、住んでいる者たちも大半は温和なようだ。


 放り出すのはさすがにちょっと……


 となると、将来的にどこかに移住するとしても当面は村で面倒を見なければいけない可能性がある。


 食料備蓄は二百六十人なら問題なく冬を越せる。


 やはり、【万能農具】をフルに使った年三回の収穫は大きい。


 腐らせないようにすることを考えなきゃいけないぐらいだ。


 食料は問題無いとして、問題は武力だ。


 一村の人間レベルだとするなら、クロの子供たちによる護衛を増やさなければいけない。


 多少失礼だが、どの程度か聞いた。


 ……


 なかなか自分の実力を客観的に説明するのは難しい。


 それが判明。


「すみません」


「いや、気にするな。

 変なことを聞いて悪かった」



 後で太陽城に行ったメンバーに確認。


 力や魔力は村の武闘会で、戦士の部クラスの者が大半とのこと。


 おお、思ったより戦える。


 護衛は不要かな?


 ただ、実戦経験がほぼゼロらしい。


「実戦経験がゼロ?」


「ほぼ城の中で引き篭もっていましたから……」


「魔物や魔獣と戦っていたんじゃ?」


「それは最初の頃だけで、ここ数百年は……」


 なるほど。


 はぁ。


 色々と考えないといけないが……


 まあ、太陽城がどうなるかだ。



 明日の制圧部隊の成果で、方針を決めるとしよう。



 俺はデザートをテーブルに並べる。


 まあ、切ったフルーツだが。


 クズデンは感激したように食べていた。





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― 新着の感想 ―
グラル、見た目は5歳児だけど、ずっと年上なんだろうな。 可愛い時期が長いってサイコーじゃないか。
『反論』 気持ち悪い? お人好しなだけだろうが 仲間強すぎで殺されるとかあり得んし 何考えてんの?
[気になる点] 何で戦争ふっかけてきた連中の生活まで面倒見ようとしてるのか不可解。 普通処刑かそのまま身ぐるみ剥いで追放くらいだと思うけど。そこが少し気持ち悪かった。誰か殺されるまで敵を気にし続けるの…
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