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トラブルの来訪

修正)城の高度を二千から千に変更。計算ミスです。すみません。


 トラブルは突然、やってくる。


 知ってはいたけど、遭遇するまで大抵の場合は忘れている。


 思い出すのはトラブルに直面した時だ。





 トラブルは南東の上空からやってきた。


 細長い三角錐の岩盤部と、その上に乗った城。


 俺の第一印象は空飛ぶソフトクリーム。


 ソフトクリーム、ちょっと少ないかな? といった感じ。


 空を飛ぶ城なんて、浪漫溢れる存在。


 子供の頃に見たアニメを思い出す。


 可能なら行ってみたい。


 まあ、行くのは無理でも、遠くで見物するだけでもワクワクする。


 そんな存在だ。


 無害なら。



 十日ほど前からその存在は確認でき、大樹の村に少しずつ近づいているとグランマリアたちが報告。


 確かに少しずつ大きく見えるなぁと確認。


 高度は千メートルぐらいだろうかと推察。


 ハクレン、ラスティ、ティア、グランマリアたちが偵察を検討。


 誰が同行するかで揉めていた時、空飛ぶソフトクリームは懇切丁寧に俺たちの村に宣戦布告をしてくれた。


 立体映像というのだろうか?


 俺の屋敷の正面に、少し透けた十メートルぐらいの男の姿。


 背にコウモリの羽があることから、悪魔族だろう。


「我が名はクズデン!

 愚かな人間共!

 残念ながらこの城は我らが占拠している!

 貴様らの希望はついえたのだ!

 絶望するがいいっ!

 ふははははははははははははははっ!」


 ……


 とりあえず、俺は周囲にいた者と相談。


 空飛ぶソフトクリームは敵と認定。


 少しずつ大樹の村に近づいていることから、早々に撃墜がベストと判断。


 俺は【万能農具】の槍を投げた。


 槍は一直線に空飛ぶソフトクリームのコーン部分に命中。


 コーンの下三分の一ぐらいが落下した。


「もう少し、上だったか?」


「そうですね」


 グランマリアが同意してくれたので、俺は次の槍の狙いをもう少し上にする。


 そこで立体映像のクズデンが土下座していた。


「すみません。

 勘弁してください」


 折れるの早くないか?




 俺は立体映像のクズデンから話を聞いた。


 あの空飛ぶソフトクリームの名は太陽城。


 遥か昔、文献によれば二千年前には確認されている天空の城だそうだ。


 そこには神人族しんじんぞくと呼ばれる一族が住み、人間の味方をして魔族側を攻撃していたらしい。


 特にその矢面に立たされたのが悪魔族。


 それが約千年前の話。


 その後、何度か太陽城を舞台に神人族と悪魔族が激突し、ついに五百年ほど前に悪魔族が神人族を追い出して勝利。


 太陽城を占領した。


 占領したと言っているが、実質的には太陽城の二十分の一程度を掌握しただけで、全てを支配しているワケではない。


 特に、最後まで抵抗した神人族が太陽城を自動操縦にして逃亡したため、太陽城のコントロールはできないとのこと。


 しかも、太陽城は上空高くに移動し、占領した悪魔族たちは帰れなくなった。


 当初は色々と脱出方法を考えたが、十年もすると色々と諦め、その地に適応。


 クズデンは太陽城生まれの悪魔族らしい。



「それで、どうしていきなり村に宣戦布告してきたんだ?」


いにしえの契約に従い、人間に味方するために移動すると……」


 城内のアナウンスがあったそうだ。


 城内アナウンスか……


 俺の中で浪漫溢れる城から、アトラクションの城に格下げになった。




 つまり、自動操縦の城が勝手に大樹の村を目指して移動。


 戦争になるからと悪魔族は古式にのっとって宣戦布告した。


「はい。

 その通りです」


「城にいる悪魔族は全員、戦意旺盛なのか?」


「は、半々……いえ、四分の一もいません」


「四分の一ぐらいしか戦意がないと?」


「太陽城を占領したのは曾お爺ちゃんの世代で、もうほとんど残ってないから」


「お前は戦意がある方と」


「すみませんでした」


 クズデンのスムーズな土下座。


 初めての戦争でテンションが上がっていたとのことだ。


 なるほどな。


 そして俺の攻撃で、今は完全に降伏ムード一色と。


 そうか。


 それは良かったが……


 俺は少し離れて話し合っている村の住人たちを見る。


 現在、どこに太陽城を落とすか検討している。


 こっちの戦意は高いままだ。


 どうもクズデンの謝罪が通信越しなのが気に入らないらしい。


 謝罪は目の前でということなのだろう。


 理解できる面はある。


「クズデン。

 お前がここに来るのは無理か?」


「えっと……それが、城からは出れないんです」


「ん?」


 城から出れない?


 そう言えば……


「お前たちが支配していない残りの部分はどうなっているんだ?」


「魔物や魔獣が縄張りを作ってます」


「……」


 どうやらクズデンたちは、太陽城に閉じ込められた悪魔族らしい。


 それでどうしてああも強気な口上を述べられたのか、不思議だ。






 太陽城を落とす案は中止。


 クズデンたちが死ぬだろうし、太陽城にいる魔物や魔獣が生き残った場合が面倒だ。


 となれば放置したいのだが……クズデンの話だと、大樹の村の上空で待機する可能性があるとのこと。


 それは迷惑。


 というか、いつ落ちてくるかわからないのが上にあるって怖くない?


 なので制圧に行くことになった。


 誰が行くかで揉めた。


 超揉めた。


 最終的にはクジ引きになった。


 俺も参加したいと手を挙げたら、ルーとティアがアルフレートやティゼルを連れてきた。


 そして何も言わない。


 ……


「すみませんでした」


 俺は辞退。


 なのにルーやティアが参加に手を挙げるのはどうなのかな!


 口では勝てない。


 頼んだぞ、クジの神様っ!




 太陽城までの移動手段を兼ねるため、ハクレン、ラスティは自動的に参加。


 本人たちもやる気満々。


 続いて飛べるルー、ティア、グランマリア、クーデル、コローネ、キアービットが優先的に参加。


 クジはどうなった!


 ズルいんじゃないかな!



「よしっ!」


「やった」


 リザードマンのダガと獣人族のガルフが当選。


 喜んでいる。


 他にリザードマンやハイエルフは数名。


 リアは外れたようだ。


 山エルフのヤーが当選している。


 他にも山エルフたちが何人か参加を表明、クジを引いている。


 山エルフ達がこういったのに参加するのは珍しいな。


「浮遊する城の仕組み、気になりますので」


「気持ちはわかるが、無理するなよ」


「はい」




 第一制圧部隊。


 ハクレン、ルー、ティア、グランマリア、クーデル、コローネ、キアービット、ダガ、ガルフ、ヤー。


 他にリザードマンが四人、ハイエルフが三人、山エルフが八人。


 合計二十五人。




 第二制圧部隊。


 ラスティ、クロの子供たちが百頭。




 第一制圧部隊は、城の上部から侵入。


 クズデンとの合流、情報収集をした後、太陽城のコントロールを制御下に置くことを目指す。


 第二制圧部隊は、城の下部から侵入。


 魔物、魔獣を手当たり次第退治。


 ただし、ラスティの一回の輸送で安全に運べるクロの子供たちは五十頭が限界。


 ラスティは少し大変だが最初は四十頭、その後に三十頭、三十頭と輸送をしてもらう。


 最初の四十頭は精鋭揃いというか、ウノとクロサンが混じっている。


 全員、無事に帰ってくるように。


 一応、魔物や魔獣の情報をクズデンから得て、ルーたちは大丈夫だと判断しているようだが……


 心配はしてしまう。


「無茶はしないわよ」


 ルーが出発前に俺の所に来た。


「太陽城をコントロールするのに知識が必要かもしれないでしょ。

 だから私が行くの」


 そうかもしれないけどな。


 怪我はしないように。


「任せて」


 続いてティア。


「私は鍵を開けるためですね」


「鍵?」


「はい。

 実はクズデンの言っていた神人族というのは、その……天使族のことでして。

 太陽城を制御するのに天使族の認証が必要かもしれませんので」


「は?

 え?

 そうなの?」


「昔の天使族は多少、思い上がっていた面がありまして……過去の恥はキッチリと処分しておきます」


「過去の恥?」


「今現在、神人族という単語を使う人って、いないはずなんですよね」


 あー、それでか?


 妙にグランマリアたちやキアービットが赤面しながらも気合が入っているのは。


 ……


「クズデンたちは保護だからな」


「わかっています。

 ここに連れてきて謝罪させなければなりませんからね。

 ただ、その前に少しお話をするぐらいの時間はあるかと」


 グランマリアは微笑む。


 俺は頷くしかできなかった。


 クズデン、立体映像での会話だけだったが……すぐに謝ったことから馬鹿じゃないはず。


 彼の理解力に期待しよう。




 野外で寒いながらも村人が集まり、声を上げながら手を突き上げる。


 それに応えながら、ハクレンの第一制圧部隊、ラスティの第二制圧部隊が出撃した。




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― 新着の感想 ―
クズデンおつ
[良い点] 身構えている時に死神は来ないものだ
[良い点] ラピュタかと思いきや攻略はガトランティス [一言] 真上と真下。ふふ脆いものよのう。
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