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神殿と死霊騎士



 真っ白な創造神様の像を中心にした広い空間。


 その像を照らすように側面に配置された光る石。


 光る石は全て炎のデザインに加工されており、白く燃えているようにも見える。


「まさか、光石ひかりいしを加工するとは……」


「素晴らしい」


 山エルフと始祖さんが素直に驚いてくれる。



 光石は、その名の通りに光る石。


 常に光っているので、ライトの代わりに使われる。


 使われるのだが、小石サイズの物でもそれなりに貴重なのでそこらの見回りが持つような物ではないらしい。


 主な用途は、お金持ちの家の照明。


 そんな扱いの光石を、始祖さんがどこからか運んできた。


 小さな子供ぐらいのサイズの光石を、何十個も。


 創造神様を飾るためなんだろうが、小石サイズの物でそれなりに貴重らしいのだが……値段は聞かない方が良いんだろうな。


 でもって、それらを山エルフ達が計算した場所に照明として設置したのだが……


 無骨。


 石というか岩が光っているだけだからな。


 俺が設置場所のデザインに凝ったのも悪かった。


 だから光石を加工した。


 炎の形に。


 うん、ナイスデザインと自画自賛。


 形を変えても光量は変化せず、光の強さにムラもない。


 一つを完成させて問題無しと判断して、全部を加工。


 雰囲気が出たんじゃないかな。



 壁の模様は俺がデザインした。


 風景にしようかと思ったが、こういった空間なので模様系で。


 ただし、規則正しくはしない。


 規則正しいのは綺麗だが、圧迫感を与えてしまう。


 ワザとズラすと意図が透けて気持ち悪くなる。


 綺麗なうえで手作業の温かみのあるデザインを目指した。


 ……


 上手くできたと思う。


 始祖さん、文句言わないし。


 熱心に祈ってるし。


「これで完成ですか?」


 ハイエルフが聞いてくる。


「そうだな」


 出入り口は俺の掘った斜めの螺旋穴の周囲を整え、扉を設置した。


 空間の壁は俺のデザインで完成。


 床も同様。


 創造神像の正面に、祭壇っぽい物を始祖さんの指示で作成。


 一通りは完成したと言ってもいいだろう。


「地下は完成だな」


 そう、地下は完成。


 地上が残っている。



 問題は創造神像の真上に空いている穴。


 雨が降った時、創造神像が汚れるのが問題だ。


 なので地上の穴を塞ぐことで話が決まった。


 それで、どうやって塞ぐのかという話なのだが……


 地上にも神殿が建てられることになった。


 救いは木造でOKということだろう。


 村からハイエルフに追加で来てもらい、一気に建設した。


 創造神像の真上の穴と、俺が地下に行くために掘った穴を全て取り込むような形で。


 俺はハイエルフたちの指示に従い、木材集めと加工を頑張った。




 地上の木造神殿は完成した。


 見た目は木造の家だが。


 家は大きく前後二つのエリアが構成。


 前のエリアが生活エリア。


 普通にテーブルと椅子が置かれ、どこかの休憩所みたいな雰囲気になっている。


 後ろのエリアにあるのが俺の掘った穴へと続く扉と、創造神像の真上に通じる穴。


 穴の周辺には転落防止の柵が設置されている。


 落ちたら大変だからな。


 屋根に仕掛けがあり、開閉式になっている。


 その仕掛けのため、家の中央の梁が撤去され、強度不足を補う工夫が要所要所にされている。


 山エルフたちのアイディアだ。


 雨の時は閉じ、天気の良い時は開けるのだが……


 誰か常駐するのか?


 ここに?


 あと、建ててからなんだが……


 魔物や魔獣に潰されないか?


 これ?


 その問題を解決したのは始祖さんだった。


 魔除けの魔法。


 魔法って便利だな。


「例のガーゴイルは出さないのか?」


 トンネル内部に十体設置してくれた。


 ここにも置くと思ったのだが……


「創造神様を敬愛してはいるけど、像は像。

 あっちのトンネルは巨人族たちの生命に関わるからね」


「なるほど」


 ちなみに、俺が地下に向かう穴を掘る時に協力してくれた土の兵士たちは、地下で創造神像の警備を行なっている。


「本当にありがとう。

 感謝するよ」


「始祖さんには色々と世話になっているからな」


 始祖さんが嬉しそうに言ってくれたので、それだけで十分だ。


 さあ、帰るか。


 ん?


 なぜ、俺の肩を持っているのかな?


「もう一箇所の方なんだけど?」


 ……だよな。



 とりあえず、全員で村に戻る。


 忘れ物は無いな?


 よーし、点呼。


 ……問題無し。




 では、改めて二つ目の黒い岩のある場所に向かう。


 そちらも穴が空いているので、地上から侵入できる。


 場所は始祖さんが知っているので問題無し。


 俺と始祖さんで、まずは偵察に向かった。


 二つ目の黒い岩があるのも死の森の中だ。


 場所はかなり東寄り。



 こちらはラスティが燃やしていないので、探すのに手間取った。


 森の中にぽっかりと空いている穴を発見。


 神殿の方と同じような穴だ。


 ということは、この穴の下に黒い岩が……?


 ん?


 なんだか凄い気配がする。


 俺は【万能農具】を持った。


 始祖さんも警戒している。


 ……


 俺は何か放り込める物は無いかと探したが、なかった。


 小石でもあれば良いのに。


 同じことを考えたのか、始祖さんは呪文を唱えて土の兵士を作り出した。


 そして土の兵士が穴に近づいていく……


 食われた。


 あっという間だった。


 穴から飛び出してきたのは例のデカいムカデ。


 続いて見たこともない虫系がワラワラと穴から這い出してきた。


「て、撤退っ!」


 俺は始祖さんに抱き付き、転移魔法で逃げてもらった。


「空中?」


 逃げた先は空だった。


「一旦、上に出ただけだよ」


 始祖さんは、なんでもないように空中に浮かぶ。


 俺はそんな始祖さんの腰に抱きついている状態。


 そんな俺たちを見つけたのかムカデが頭を伸ばしてきた。


 デカい牙がガシャンガシャンと威嚇しながら近づいてくる。


「うん……これは駄目だね」


 始祖さんは改めて転移魔法を使い、村に戻った。




 見慣れた景色に一安心。


 手に汗がビッショリだ。


 巨人族のダンジョンで遭った時はそれほどじゃなかったけど、さっきのムカデは変な感じだった。


 森の中にあんな場所があるのは困るな。


 どうしたものか……


 俺が考えている間に、始祖さんは動いていた。


 ハクレンを呼ぶ。


 穴の上空に移動。


 穴に向かって炎を吐いてもらう。


 ドラゴンって凄いなぁ。


 なぜか同行させられた俺は、始祖さんに抱き付きながら改めて思った。



 始祖さんなら、ムカデぐらいどうとでもなるらしい。


 ただ、細かいのが一杯いるので面倒だから、撤収したとのこと。


 俺はハクレンの吐いた炎で燃えた森の鎮火作業と、燃え跡を耕していた。


 うん、燃えた魔物や魔獣に合掌。


 穴の内部には始祖さんが突入している。


 ハクレンは俺の護衛として傍にいる。


 ウルザと一緒に。


 ハクレンが移動する時にウルザが付いてきたのだ。


 ずいぶん慣れたものだ。


 ただ、留守番の言いつけを守らないのは良くないぞ。


 あと、ハクレン。


 甘やかすだけじゃ駄目だからな。


「そんちょー、あっちに何かいる」


 ん?


 ウルザに言われた方向を見たけど……普通の森だ。


 えっと……


 俺には見えなかったけど、ハクレンには見えたようだ。


「会話は無理のようですね」


 ハクレンはウルザの前に立ち、隠す。


 少し遅れて、俺にも存在が確認できた。


 剣を持った鎧姿の人間。


 だが、纏う雰囲気が人間ではないと教えてくれる。


 ハクレンの炎の難を逃れたのか……その名は死霊騎士。


 後で始祖さんに教えてもらった。





「地上に出た後で道に迷い、彷徨っていたと……

 前にも同じことをして怒られた。

 もう駄目かなぁと思っていたところ、覚えのある気配を感じてこっちに……」


 俺は死霊騎士のジェスチャーを解読していた。


 ハクレンとウルザは飽きて遊んでいる。


 この死霊騎士、敵意が欠片もなかった。


 なんでも主人とのリンクが切れ、フリー状態。


 別になんでもかんでも斬りかかる狂人じゃないですよとジェスチャー。


 だったら剣を持って歩かないでほしいと伝えたら、鞘がないからとの理由。


 手早く近くの木で鞘を作ってやると、話し相手になってほしいと現在に到る。



「主人になってくれませんか?

 あー、嬉しい誘いだが……向こうの二人にも聞いてほしい?

 駄目だと思うけど……ウルザなら」


「今の彼女に、死霊騎士を使役するのは無理ですよ。

 村長もですけど」


 始祖さんが合流。


 生きていたのにも止めを刺したので、穴の中は全滅。


 安全安心だそうだ。


 良かった。


「それで、彼は?」


 俺は紹介し、死霊騎士は丁寧に頭を下げた。


「場所から考えて、死霊王の部下っぽいですけど」


「たぶんな」


「どうするのです?」


「どうしよう?」


 村に連れて帰る……のは無理だよな。


 いける?


 いけるか?


 いけちゃう?


 ……駄目だ。


 自分を騙せない。


 もう少し、外見と雰囲気をなんとかしないと……


「この身で人の輪に入ろうとは思いません。

 お気になさらずに……そう言われてもな」


「死霊とはいえ騎士なのだから、何か使命を与えればいいんじゃないかな?」


「おおっ、それは名案。

 って、主人じゃないのに使命を与えていいのか?

 ……細かいことは気にするなと。

 お前、大物だな」


 少し考えた。




 死霊騎士は温泉の番人になった。


 最初、神殿の警備をと思ったら魔除けの魔法の効果で苦しみだしたので却下。


 ならばと次案が温泉。


 神殿作りの最中に、何度か来たので施設は無事だ。


 死霊騎士は、やる気満々のようだ。


「頼んでおいてなんだが……一人で大丈夫か?」


 俺の質問に、グッと腕を突き出してくる。


 そうか。


 頼んだぞ。


 今度来る時、死霊騎士に役立ちそうな物を持ってくるとしよう。




「寄り道になったけど、穴の場所に戻ろうか?」


 俺は温泉に入っている始祖さん、ハクレン、ウルザに声を掛けた。


 男風呂、女風呂から「もうちょっとー」と声が返ってくる。


 寒いから入りたいのはわかるけど、入浴の準備もなく入るのはどうなのかな。


 え?


 村から持ってきている?


 そういうことは早く言ってほしい。


 穴に向かうのは、少し遅くなった。




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― 新着の感想 ―
死霊騎士、アツいぜ!
[気になる点] 地上の木造神殿に施された魔除けの魔法は、クロたちやザブトンたちにも効いてしまうのかな?
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