武闘会の後と出産
武闘会は閉幕し、後はいつもの宴会。
武闘会の時から解放されている食事と酒で、各自が飲食を楽しむ。
表彰式の時にリアとアンが産気づいたが、なんとかなった。
リアは無事に男子を出産。
アンも同じく男子を出産。
それに遅れないようになのか、リゼ、ラファも産気づき、すぐに生まれた。
共に男子だ。
特に子供の性別に希望があったわけではないが、四人全員が男子とは……村に男性を欲しがったけど、少し違う。
そう思っている俺と違って、ハイエルフたちは一気に三人の男子出産に大騒ぎだった。
そして、鬼人族メイドたちは……泣いていた。
「鬼人族の未来は明るいです」
宴会中の慶事に、盛り上がらないわけもなく……なんだかんだと三日ほど祭りが続けられることになる。
そういったトラブルがあったが、表彰式はしっかりと行った。
騎士の部優勝、ウノ。
大きくなるのは何かの術なのか技なのか、今では通常サイズになっている。
サイズが戻って良かった。
前回と同じようにトロフィーと冠を授与。
トロフィーと冠は俺の屋敷の玄関近くに飾られることになるが、今はトロフィーをくわえ、冠を頭に載せたウノが少しテレた感じで歩いていた。
その横に、ウノよりも上機嫌なクロサン。
仲の良いことだ。
マクラは敗北したが、気落ちはしていないようだ。
模範試合のダメージから回復したザブトンと共にジャガイモを食べていた。
うん、食べながら新しい技を習っているように見えるのは気のせいかな。
武闘会の余韻は夜になってもなかなか冷めず、舞台上には希望者同士が戦っている。
戦士の部の優勝者、ハウリン村の獣人族ガルフがリザードマンのダガと良い勝負。
いや、ダガの方が優勢かな。
山エルフのヤーが、悪魔族のスティファノとコンビを組んで、インフェルノウルフのマサユキと天使族のグランマリアでタッグマッチ。
負けが早かったので、消化不良なのかもしれない。
舞台が二面あるので待ち時間が少ないと評判がいいが、無理をして怪我をしないようにお願いしたい。
審判役の始祖さん、ご苦労様です。
ドースたちドラゴンは、飲食と住人の出し物に集中。
リザードマンによる組体操がそれなりに受けている。
尻尾を含め、キッチリした動きが美しい。
それを見たハーピー族が、自分たちでできるかどうか試し始めたので軽く注意。
そういったことは宴会が終わった後にするように。
あと、お酒が入った状態では危ない。
獣人族は曲芸を披露。
玉乗り、シーソージャンプ、空中ブランコ……サーカスだな。
ナイフ投げは止めよう。
危ないから。
曲芸は見ていて楽しいが心臓に悪い。
それが曲芸の魅力なのかもしれないが……安全対策は大丈夫なのかと思ったら、ザブトンの子供たちが各所にネットを張っていた。
ありがとう。
グラッツはロナーナと良い感じになり、ランダンはビーゼルに村を案内してもらっている。
考えてみればビーゼルとの付き合いも長くなったものだ。
二人はそのまま風呂に入るらしい。
それは構わないが、お風呂場にお酒を持ち込まないようにお願いしたい。
ユーリはフラウと文官娘衆となにやら色々と話している。
時々、明るい笑い声が上がっているので恋バナだろうか?
巻き込まれないように距離を取る。
まあ、色々とやっているが、宴会場で一番元気なのはハイエルフたちと鬼人族だろう。
お酒をいつもよりハイペースで飲んでいる。
ドワーフ達がバーテンダー役でフル回転。
食べ物は……ああ、自分たちで作るのね。
子供が産まれてお祝いムードもわかるけど、飲み過ぎないように。
こんな感じで宴会は続けられたが、畑の世話があるので一部の者は二日目の昼には帰る。
やはり、二村三村でも何かお祭りをやって不公平感を減らしたいところだ。
まあ、不公平と思っているのは俺だけかもしれないが。
二村三村の警備をしているクロやザブトンの子供たちは、交代でやってきては食事を楽しんだ。
ビーゼル、グラッツ、ランダンは二日目の夜に帰ることになった。
「もう少し、楽しみたいのですが……」
「ロナーナ、また来るよ」
「仕事をしないとなぁ」
魔王も忙しいらしいが、所用で残る。
ドラゴン一家は、宴会が続く限りは残っている。
彼らは基本、暇なのだそうだ。
ただ、力ある存在ゆえに特定の場所にいて重りにならないといけないらしい。
「まあ、一年二年の不在でどうこうなるものではないがな」
「ラスティやハクレンはこの村にいても大丈夫なのか?」
「うむ。
まだまだ軽いからな」
「真実は?」
「一箇所に留まれと言ってもなかなか。
この村で大人しくしているのが夢のようで……
夢ならついでに長女に子供が生まれるところまでみたいものだ」
「チラチラこっちを見ながら言われても……」
「これ、疲労回復に良い薬。
人間なら……十日は頑張れる」
「危険なものを……」
「危なくないぞ。
安全安心だ」
「いやいや、そういった意味で危ないんじゃなくてだな……まあ、いいや。
それは他の者には見せないように頼む」
「これからはそうするが……
すでにいくつか持っていかれたぞ」
「え?」
えーっと……
村長である俺に薬を盛るような真似をする者はいないと信じたい。
信じることにしよう。
四人の出産は、武闘会の終わりを盛り上げ、大樹の村に活気を与えた。
そしてさらなる出産欲を生んでしまった気もする。
うん、頑張るから薬は止めよう。
正面から持ってきたのは褒めるけどね。
あと、一応は責任者だから。
宴会が終わるまでは完全に気は抜けない。
生まれたばかりの子たちを見ると頬が緩んでしまうけど。
なんだかんだでハウリン村のガルフ、ラミア族は宴会が終わってもしばらく残っていた。
目的は特訓。
優勝経験者のウノとマクラ、そしてリザードマンのダガが人気だ。
ダガも弱いわけではないが、ウノとマクラに並んで人気なのはなぜかと思ったら……
人型として人気らしい。
なるほど、ウノやマクラだとどうしても変則的な相手になるからな。
ダガはダガで人気の理由を察しているので、尻尾攻撃は控えていた。
そういったことができるから、人気な面もあるのだろう。
俺はちらりとグランマリアたちを見た。
「わ、私たちは仕事がありますから」
「忙しい忙しい」
「よーし、今日も頑張りましょう」
そういうことで、決していきなり全力で相手を叩きのめしたからではないそうだ。
ちなみに武闘会、その後の宴会、宴会後の特訓などで治療魔法を求められたフローラは疲れていた。
「もう少し、私を褒めてもいいのでは?」
まったくその通りだと、俺はフローラを褒めた。