新しい家
新しい俺の家ができた。
立派な家だ。
横幅……二百メートル?
奥行き百メートル?
うん、家というか屋敷だな。
それも貴族の屋敷。
しっかりとした土台の上に、レンガと木で作られた二階建ての屋敷。
一部三階建て。
村の村長の家のレベルじゃないのは確かだ。
建築過程が分割だったので屋敷も分割されている。
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以前の家のあった中央が百×五十の玄関兼大きなホール。
ミノタウロスたちでも屈まずに入れるように、扉はかなり大きく作られている。
ただ、それだと普通に生活する俺たちには労力なので普通サイズの扉も併設。
二階部分は吹き抜けで、窓の開閉や清掃を行うためだけにある通路だけなのだが……
要所要所に弓矢の保管庫があるのはなぜだろう?
いざという時は立て篭もる気なのかな?
この場所だけ三階部分があり、そこは三畳~四畳半ぐらいの部屋がたくさんある。
屋敷で働く人が住む部屋として用意されたが……今は空き部屋だらけ。
今まで知らなかったが、建物で高い場所には使用人などの立場の低い者が住むらしい。
へー。
偉い人とか上の方に住んでるイメージだけどな。
エレベーターがないからかな?
ともかくホールは雨の日でも住人を集められそうな広さ。
ただ、要所要所に立ったデッカイ柱が少し邪魔。
無ければ見通しがよくなるのだろうが……
強度的に必要だから仕方が無い。
玄関入ってすぐの場所に、展示場所を用意。
現在、そこには第一回武闘会優勝トロフィーが、マクラの名前と共に飾られている。
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ホールから右側の一階が食堂と台所、二階が鬼人族メイドたちの住居になっている。
広さは大丈夫なのかと思ったが、全然大丈夫だった。
また、ここには地下室が作られ食料の貯蔵庫となっている。
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ホールから右側の奥。
ここは一階も二階も来客用の部屋になっている。
一階の部屋を少し改造し、駐在員をしているミノタウロスやケンタウロスの部屋とした。
小さいがホールもあり、遊技場的な道具を多数配置しておいた。
誰が一番最初に使うことになるのだろうか。
……
ルーやティアが鬼人族メイドと一緒に遊んでいた。
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ホールから左側。
ここの一階が俺の執務室兼私室、そして会議室になる。
執務室は仕事をする為の部屋で、偉そうなテーブルと椅子の他に本棚なども設置されている。
まるで貴族の部屋みたいだ。
私室はその奥。
俺のプライベート空間。
俺の寝室とルー、ティア、フローラ、ハクレン、フラウの部屋がある。
フラウは居住エリアに家があるので、こっちの部屋は代官としての面子用。
「あそこに私が住んでます」
部屋があれば、そう言えるのだ。
フラウからは気にしないのですがと言われたが、ビーゼルには世話になっているのでそれぐらいはする。
まあ、空いている一部屋をフラウ用と言っただけだが。
現在妊娠中のハイエルフのリアたちはこれまで通り居住エリアの家に住み、鬼人族のアンもメイドたちの住居にそのまま住む。
こっちで住んでもいいよと言ったがやんわりと遠慮された。
それだと生まれた子供に会いにくいじゃないか。
まあ、色々と話し合った結果なので文句は言わない。
こちら側でも料理ができるように台所と小さめの食堂が作られている。
家が大きくなり過ぎた弊害だな。
食堂までが遠すぎる。
会議室は、普通に会議室。
色々と使えるようにテーブルは固定していない。
二階は個室。
八畳ぐらいの大きさの部屋が複数。
今の予定は、アルフレートとティゼルの子供部屋になる二部屋だけで、残りは空き部屋になっている。
ここにも地下室があり、食料庫と武器庫になっている。
武器庫には剣、槍、弓と防具が保管されているが……
ほとんどがドライムやドースたちから貰った物だ。
なので、武器庫ではなく宝物庫っぽい。
食料庫は普通に食料庫。
ただ、ここからホールの下を通り、メイド達の住む場所の地下にある食料庫と繋がっている。
食料移動用と、メイド達がホールを通らなくてもこちら側に来るための通路だ。
さらにこの地下室の下に、金庫が設置された。
入り口は俺の執務室からだけで、他からは侵入できない。
出入りが多少面倒だが、地下に隠された金庫。
こういったのはなぜか少しワクワクする。
ただ、金庫の中身はショボイ。
武器庫の方が価値がありそうな気がする。
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ホールの左側奥。
ここの一階はお風呂と倉庫になっている。
お風呂は……広い。
うん、広い。
二十人ぐらい同時に浸かれる湯船とその倍ぐらいある洗い場。
銭湯?
そう思うぐらい広い。
湯船や洗い場には外で沸かされたお湯が流れてくるようになっているが、この辺りは山エルフたちの匠の技が見える。
一応、俺の要望で一人用の小さな風呂場も作ってもらった。
風呂は狭くてものんびりできることが大切だと思う。
倉庫は普通の資材置き場。
主に木材、石材、後は草などが保管される。
お風呂の近くに置くのはどうかと思ったが、意外と湿気は感じない。
魔法かなと思ったら違った。
ちゃんとお風呂場の湿気を逃す構造にしているらしい。
素直に感心。
二階は工房と研究室。
工房は俺が作業をする場所と、出来上がった物の保管庫も兼ねている。
研究室はルーとティアが色々と使う予定。
フローラの研究室もあるが、こっちは封印となった。
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少し遠くにフローラの研究小屋。
主に発酵食品を扱っている。
味噌と醤油が完成した辺りで居住エリアに量産用の小屋が作られたが、自室でも生産を始めて匂いが問題になったので隔離された。
醗酵には部屋というか小屋も大事なので、これでよかったのかもしれない。
ちなみにフローラはほぼここで生活をしている。
うん、食事の時ぐらいは顔を見せに来ような。
最近、影が薄いぞ。
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こんな感じの新しい家……いや新しい屋敷だが、以前の家とは大きく違う点が三つある。
まず、水。
これまでは井戸で汲んだ水を各所の桶や甕などに溜めて使っていたのだが、水道っぽいものができた。
ポンプの仕組みを山エルフに教えた結果だ。
屋敷の上に大きなタンクを作り、そこにポンプで汲み上げた水を貯め、配管によって各所に配る。
さすがに一箇所のポンプとタンクで屋敷全部は無理なので、全部で五箇所設置された。
朝の水汲みが格段に楽になり、鬼人族メイドを筆頭にかなり喜ばれた。
次にトイレの数。
かなり増えた。
屋敷が大きくなったのだから当然。
そして二階や三階にも設置。
これはポンプとタンクの設置による水の手の配給と、スライムたちのお陰だ。
そして最後。
キャットウォークならぬスパイダーウォークが屋敷のほぼ全体に張り巡らされた。
スパイダーウォークとは、屋敷の天井部分に設置されたザブトンの子供たち用の通路だ。
子供たちといっても、拳サイズの大きさだけ。
マクラのサイズとかはさすがに無理。
廊下は当然、個室以外の部屋には入れる。
階の移動のための専用の通路もあり、専用の外部への出入り口で外にもいける。
これにザブトンの子供たちは大喜び。
感謝を伝えに来たのか、執務室の天井いっぱいにザブトンの子供たちがいたのには驚いた。
うん、結構な数はいるんだな。
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とても良い家、屋敷だ。
満足。
満足だが……不満がないわけでもない。
というか疑問がある。
それは主に俺のプライベートルーム。
ハッキリ言えば寝室。
内側から鍵が掛けられるのは普通だが……
なぜ、外から鍵が掛かる仕様にしたのかな?
閉じ込められるでしょ。
設置ミスだと思うから、直してほしい。
あと、寝室と他の部屋の間に隙間があるのは何かな?
その隙間、人が通れる広さだよな。
隠し通路?
でもって出入り口が俺の寝室?
おかしくないか?
いざという時の逃走用?
なるほど。
じゃあ、どうして寝室側から通路への扉を開けないのかな?
ここも鍵の付け方、扉の方向かな? 間違ってますよ。
あと、通路から寝室を覗けるのはなぜですか?
護衛の待機場所としても使う?
寝室に知らない人が来ることはないから大丈夫です。
それと、天井からも寝室に入れる通路があるよね。
そんな通路を使って寝てる俺を起こさなければいけない事態って、あるかな?
ないことを祈りたい。
というわけで……
俺の安眠のため、その辺りを改善させた。
「天井は塞いでもらうけど、通路は残す方向で。
隠し通路はちょっと楽しい。
あ、でも、基本は立ち入り禁止。
入っていいのはザブトンの子供と緊急時だけ」
ということになった。