キアービットとの話し合いとハーピー族
「ここのお酒は美味しいわね。
お土産に少しちょうだい」
キアービットとハーピーたちは、一村で寝泊りした。
そして、食事を大樹の村に飛んできて食べている。
渡り鳥みたいだとか思ってしまった。
「ニュニュダフネたちに迷惑をかけていないだろうな」
「大丈夫よ。
迷惑を掛けるほど接触してないから」
それは良いことなのだろうか。
「ところで、どうしてあんなに家が空いている?」
「ははは」
悲しい話をすることになった。
「なるほどね」
「なんだったら、このまま住んでみるか?」
「ありがたいけど、ちょっと厳しいわね。
仕事があるから」
「仕事?」
「ガーレット王国の巫女職」
「……ガーレット?」
「ここからだと北西に向かった所にある国よ。
あそこ、天使族を崇めてくれてるからそれなりの地位があるの」
「へぇ」
「一応、そこの王様よりも偉いんだけど」
「……」
「変な目でみないでくれるかな」
「いや、そう言われても」
「むー」
「悪かった。
お前は無理でも他のは?」
「彼女たちも仕事があるから無理よ。
でも、グランマリアが声を掛けてたのなら大丈夫じゃない。
何人か来ると思うわよ」
「ん?
グランマリアが声を掛けたのと、彼女たちは別なのか?」
「そうよ。
グランマリアだって、仕事を持っている私たちを誘ったりしないでしょ。
私たちは偶然グランマリアと会って話を聞いてって感じだったの」
「なるほど」
「暇してたみたいだから、二~三人は来るんじゃないかな。
来たらよろしくしてあげて」
「わかった。
それでハーピーたちだが……」
グランマリアにつけと言ったので、彼らはこのままここで生活する気でいる。
「構わないわよ。
他にまだいるから。
でも、家族持ちがいるから希望者だけにしてほしいかな」
「それはそうだな。
戻りたいヤツがいたら、引率を頼む」
「連れてきたからには責任は持つわよ」
「ははは」
本当に頭に血が上ってなければ、まともなんだな。
「あと、残る者の家族を連れてきてもいいかしら?」
「そうだな。
希望者は頼む」
「ええ」
キアービットはさらに一泊し、翌日に帰った。
ハーピーたちは大半が残る希望をしたが、一旦、全員で帰るらしい。
荷物や家族への説明などがあるからだ。
「ハーピーたちが来たら、一村に住んでもらおうか」
「そうですね。
ただ、ハーピー族はどちらかと言えばケンタウロスたちと似た感じの家でないと駄目だと思いますよ」
俺の呟きに、グランマリアが答える。
「どういうことだ?」
「ハーピー族はベッドを使って寝ません。
木に止まって寝るか、巣を作って寝ます」
「……」
「止まり木に雨風を避ける屋根と壁があれば良いかと」
「今ある家じゃ駄目か?」
「駄目ではありませんが、扉の開閉に苦労します。
まあ、慣れたら大丈夫だと思いますが……」
「な、なるほど」
「それと、家族は家族単位で生活しますが、独身の若手は集団生活を好みます」
「集団生活?」
「はい。
ハーピー族は集団で狩りをするので、その連携を高めるためかと」
文化の違い、生活スタイルの違いか。
リザードマンたちが卵の出産場所に水場を欲しがったようなものだな。
「わかった。
配慮しよう」
「ありがとうございます」
「……今居る者たちで、そういった問題や不満を抱えていたりはしないか?」
「その辺りは大丈夫かと。
みんな遠慮がなくなってきています」
「そうだと良いんだが……」
「一応、確認してみます」
「頼む」
種族の差があるしな。
気付かないうちに不便を押し付けているかもしれない。
注意しよう。
一つの提案があった。
それは綿に関して。
例えば布団。
これまではザブトンたちが作った布団型の袋の中に森で集めた草を詰めてきた。
ソファーなどもそうだ。
この中に詰める草だが、森に生えているので集めやすい。
元手もかからないので、とても重宝している。
だが、欠点もある。
それは半年に一回は詰め替えないと駄目なことだ。
使用頻度が高い物は、月に一回ぐらい。
俺の布団に関しては、鬼人族メイドたちが気を使ってか十日に一回ぐらいのペースで草を詰め替えてくれている。
ありがとう。
これを綿にしてはどうかとの提案。
そして、着ている服に関してザブトンの糸で作った服ではなく、綿で作った服にしたいとの提案。
これはザブトンの作った服が気に入らないのではなく、良い服過ぎて普段着や作業着にできないとの意見だ。
主にミノタウロスやケンタウロスたちから出ている。
この二点が、綿に関しての提案だ。
なるほど。
綿に関しては、草があったのと食料じゃないという理由で意識から外していた。
村の産業と考えるなら、綿花を育てるのも悪くないか。
しかし、布団に詰め込むのは良いとしても、服にするには綿を糸にする技術がいる。
誰がそれを……ザブトンたちが前足の片方をあげた。
大丈夫? 任せろ?
「いいのか?」
……ふっ。
良い顔をする。
来年、綿花の畑を計画することになった。
当面は現状のまま。
ミノタウロス、ケンタウロスたちの服に関しては、ザブトンたちの作った布をマイケルさんに販売し、代金として中古の服を販売してもらった。
知らなかったが、この世界では中古服は一般的で、新しい服は驚くほど高い。
ミノタウロスやケンタウロスたち用の服となると難しいかと思ったが、さすがは魔王国にあるお店。
代金分、集めてくれた。
「結構な量だな」
「ですね」
ミノタウロス、ケンタウロスたちに配り、普段着や作業着にしてもらった。
そして、一番喜んだのがザブトン。
外からやってきた大量の服のデザインに刺激を受けたのか、新作の服を精力的に作っていた。
「俺は普通ので良いぞ」
新しい服を数着、手に入れた。
祭りの準備。
居住エリアの西側、ゴルフ場のさらに西側で俺は穴を掘る。
ザクザク。
さらに掘る。
ザクザク。
穴の形は丸ではなく、長方形。
しかも細長い。
横幅五メートルに対し、縦幅は五十メートル。
端から中央に向けて深くなり、また端になると浅くなる。
イメージとしては、コインを半分ほど地面に埋めたような感じ。
長方形の短い辺の片方を入り口とし、その入り口に誘導するように小山を作っていく。
小山といっても、こっちも円山ではなく、細長い山だ。
高さは十五メートルぐらい。
幅はもう少しあるが、コースとしては穴の入り口より少し狭い四メートルに加工。
コースから転落しないようにガードを作る。
制作に苦労するかと思ったが、意外と簡単だった。
住人の数が増えたからだろうか。
「なかなか見事ですね」
「だな」
この辺りで一番高い。
二村、三村が見えないかと思ったが、見えなかった。
残念。
さて、これで完成ではない。
まだ作業は残っている。
それは穴の反対側だ。
「ここに水を溜める池だな」
「はい。
お願いします」
皆で頑張った。