統一王の旅の思い出の続き
俺は統一王。
野球という競技を知った。
なかなか面白い。
魔王が野球の普及に力を入れるのもわかる。
俺も国に戻ったら、野球を広めよう。
そして、野球を楽しんだあとはラーメン。
うん、ラーメン。
いいよね。
そうそう、魔王国の王都で本物のラーメンを食べた。
麺屋ブリトアなる五村にある店の支店だったが、その味に感動した。
なるほど、これが本物だとすれば、俺がこれまで知っていたラーメンはたしかに偽物だ。
なにが偽物なのか?
単純に食材だ。
本物のラーメンが使っている食材の入手が困難だったり、不可能だったりしたのだろう。
俺が知っているラーメンには、代用品が多く使われていた。
本物を知らなければ、それでも十分に美味しいと言えるのだが……
本物を知ってしまうとその味が霞んでしまう。
だが、同時に俺にラーメンを教えてくれた王の凄さを感じる。
俺にできるだろうか。
求める食材がないのに、ラーメンを再現しようとすることを。
……
むずかしいだろうな。
あの王のためにも、なんとか本物の食材を持ち帰る方法があればいいのだが……
食材は腐るからな。
作物や家畜を育てることを考えたほうがいいかもしれない。
さて、ラーメンや野球への興味が尽きないが、旅の目的を忘れてはいけない。
ティゼル嬢の父親に会うことだ。
幸いにして、魔王の部下のクローム伯とプギャル伯が、ティゼル嬢の父親に会う準備をしてくれた。
いますぐとはいかなかったが、少し待てば問題なく五村で会えるらしい。
そして、王都から五村までは複数の転移門を使って移動できる。
半日もかからないとのこと。
とてもありがたい。
そして、待っているあいだにクローム伯とプギャル伯からティゼル嬢の父親の情報を教えてもらった。
なるほど。
ティゼル嬢の父親は、かなりのお金持ちらしい。
魔王国を買えるぐらいというのは冗談だとしても、魔王が気を使うほどには財力があるのだろう。
天使族を妻に持つぐらいだからな。
それも当然か。
そして、かなりの戦力を有していると。
これは天使族だけでなく、それ以外にも有力な戦力があるらしい。
ただ、詳しい戦力を聞いても、知らないほうがいいと、すごく優しい目を向けてくる。
知ったら絶望する戦力なのだろうか?
粘って教えてもらえたのが、天使族が先兵扱いということ。
それは大げさではないだろうか?
ほんとうだとすると、まるで神話の軍団だ。
まあ、俺が軽率に動かないように過剰に言っているのだろう。
その意図を汲むと、ティゼル嬢の父親に変なことするなということ。
もともと揉めるつもりはない。
挨拶にだってしぶしぶ来たぐらいだ。
余計なことはしない。
挨拶したら、すぐに帰る。
うん、再確認。
しかし、なぜティゼル嬢の父親はいくつも大きな街を支配しているらしいのに、村長を名乗っているのだろうか?
魔王国では、村長の地位が高いのか?
文化の違いを感じる。
クローム伯とプギャル伯と雑談をして、ちょっと驚いたことがあった。
なんでもクローム伯とプギャル伯は娘を、ティゼル嬢の父親のもとに出しており、クローム伯の娘にはすでに子がいるそうだ。
関係をまとめると、クローム伯はティゼル嬢の父親の義理の父親?
そんな関係だったの?
プギャル伯の娘はまだ子を成していないが、ティゼル嬢の父親の養子に娘を出していてそっちは子を成していると。
となると……えーっと、プギャル伯はティゼル嬢の父親の……どういう関係だ?
ややこしくない?
ま、まあ、大きい国だと親子で姉妹を妻にしたり、兄弟で母子を妻にしたりと、家系は複雑だけど。
魔王国も似たようなものなのか。
魔王国は力を尊ぶ風潮。
魔王は力がある者が継承すると聞いていたから、貴族も似たような形で継承すると思っていたが違うようだ。
勉強になる。
え?
あ、俺は独身。
うん、ちょっと争いが続いていて。
ははは。
いや、縁組はちょっと。
魔王国の貴族の娘と結婚すると、周辺国がうるさいから。
国内もうるさいかもしれない。
それだと、妻となる者の幸せが見えない。
やめときましょう。
王都から五村に移動。
転移門は便利だな。
そして、王都ぐらいに大きい街に驚く。
どこが村なんだ?
ま、まあ、村と名乗っているから村なのだろう。
ぐっと飲みこむ。
俺は用意された立派な宿に泊まる。
俺に同行してきた者もだ。
半分ぐらい、王都やシャシャートの街で情報収集すると言って散ってしまったが。
帰るとき、合流できるのだろうか?
俺の予定は伝えているけど。
まあ、なんとかなるか。
俺は五村で二日ほど待機の予定。
ちょっと早めに五村に来たのは、俺がラーメンを求めたから。
王都にあった麺屋ブリトアの本店には絶対に行きたいし、お薦めのラーメン店をいくつか聞いている。
ラーメンは味に種類がある。
醤油、塩、味噌、トンコツ、トンコツ醤油、トンコツ味噌……
それらが店ごとに工夫を重ね、独自の味を出している。
できれば五村にあるすべてのラーメン店ですべてのメニューを味わいたいが、さすがにそれがむずかしいのは理解できる。
だが、有名な店の味は押さえておきたい。
ん?
飲食費は大丈夫なのかと?
その心配は無用だ。
ティゼル嬢から、旅費を多くもらっている。
道中、あまり使わなかったからな。
まだまだある。
帰りの船代は分けてあるから大丈夫だ。
さあ、行くぞ!
あ、道案内を雇ったほうがいいかな。
この街……じゃなくて村だ。
この村独自のルールがあるかもしれない。
異国であることを忘れてはいけない。
揉めて追い出されるのは避けたい。
雇おう。
雇った案内人に従い、俺は五村でラーメンを堪能した。
胃袋の限界が憎い。
もっと食べたいのに。
スタジアムでやっていた……障害物を乗り越え、時間内に規定の場所に到達する競技も楽しんだ。
最後のそり返る壁を跳躍で越えるのはむずかしかったが、なんとかした。
あ、うん、見学じゃなく、参加で楽しんだ。
競技に挑戦していた者たちと仲よくなれたぞ。
ラーメン店の情報ももらったし。
工場見学をした。
ゴーレムがあんなにたくさん動いているのはすごかった。
ぜひとも俺の国にも導入したい。
だが、そういった交渉もむずかしいだろう。
工場の管理人が天使族だったし。
国に帰ったら、ティゼル嬢から言ってもらったほうがいいかな。
魔王が五村にやってきた。
野球の試合をするらしい。
俺も見物する。
一軍の動きはすごい。
芸術的だ。
そして、的確な采配。
さすが魔王。
ん?
魔王に呼ばれ、代打で出させてもらった。
いいのだろうか?
だが、もらったチャンスは無駄にしない。
俺は……粘ってのポテンヒットだったが、得点には繋がった。
よし。
五村のあちこちを見物中、ケーキなる食べ物を販売している屋台に遭遇。
ふむ。
美味い。
ラーメンほどではないが。
甘い物が好きなら、夢中になるかもしれん。
そして、そのケーキを売る屋台の横で、飲み物を売る屋台があるのは商売上手だな。
飲み物もいただこう。
飛行船。
……遊覧できるらしいが、飛ぶ乗り物はちょっと怖い。
一応、これでも俺は王。
無様な姿を見せるわけにはいかないので、遠くから見るだけにした。
つ、次にチャンスがあったら、の、乗ってみようと思う。
なんだかんだ五村を堪能し、雇った案内人と別れて俺は宿に戻った。
すでに時間は夜。
夕食は少し前に食べた。
あとは寝るだけだが……
窓の外からかすかにいい匂いを感じた。
これはラーメンの匂い。
五村は夜も安全だと、雇った案内人は言ってた。
それを信じ、俺は宿を飛び出し、匂いのもとに向かった。
そこは表通りから外れた脇道の奥。
ちょっとした広場になっている場所に、営業中の屋台があった。
屋台はラーメンを売っていた。
店主は人間だが、鬼人族のメイドが給仕をやっている不思議な屋台。
匂いにつられて、ふらりと寄ったが……
衝撃を受けるほど美味かった。
ラーメン、奥が深い。
統一王の理想
統一王「文官よ。俺を殴ってくれ。俺は仕事を忘れ、ラーメンと野球に生涯を捧げようとした」
文官A「いいえ王よ。王こそ私を殴ってください。私は王が帰ってこないかもと疑ってしまいました」
統一王「文官……」
文官A「王……」
統一王「これから、すばらしい政治をすると誓おう」
文官A「お手伝いいたします」
統一王の現実
統一王「文官よ。俺を殴ってくれ。俺はグエェッ! ちょ、まだ喋ってグァッ、痛い、痛いから、連続して殴るんじゃないっ! 王命に従っているだけ? なら止めろという命にも従がグェェ!!」
すみません。
腰をやりました。
しばらく、更新が不安定になります。




