ヤメの有人島生活 その一
あーしはヤメ。
大樹の島の管理人をやっている。
あーし以外の住人は人形のイバンと、鳥、鶏だけど。
十分、賑やかだ。
現在、島にある建物は、宿と鳥小屋、鶏小屋、見張り台、あとは拠点と海岸にあるお風呂。
それと、倉庫かな。
港の建設は中断中。
ユーリがいないと水中用多目的人型機動重機が動かないからね。
なくても建設はできるけど、作業効率が違うからって止まっている。
島の中央の山のなかに作っている村長の家も、建設が中断している。
こっちは内装を担当している山エルフがいないからね。
どうしようもない。
拠点に建てている個人の家は、十軒ほど建っているけど、こちらも山エルフがいないので内装が手つかず。
ハイエルフやリザードマンたちでも内装がまったくできないわけではないのだけど、山エルフたちのために残している。
このあたりは仕事の縄張りというか、勝手に奪わないということで自身の仕事を守っているのだろう。
まあ、建物の完成を急ぐわけでもないので、あーしはなにも言わない。
拠点には商店や食堂も建つ予定だけど、こっちは人手が足りないからあと回しになってる。
まずは人手をどうにかしないといけないかなぁ。
人手のことを考えていたら、島にインフェルノウルフが一頭、増えた。
村長が連れてきた。
なんでも、村の群れのなかで孤立している若い子らしい。
群れの長も、手を焼いたと。
たしかに、群れに馴染めないなら、一度、群れから離すのも悪くない。
しかし、どーしてあーしのところにと思うけど、考えてみればインフェルノウルフをそこらの街には置けないか。
ここなら陸と離れているし、人の数も少ないからね。
驚かせる心配もない。
仲よくやろう。
とりあえず、インフェルノウルフには島に慣れてもらうことに。
孤立してた事情は気になるけど、いきなり聞いても話してもらえないだろうしね。
焦らずに。
そう思ったのだけど、インフェルノウルフは拠点の宿に入ると、広間に設置されているコタツに入って出てこない。
コタツから出るのは、外にトイレに出るときと食事のときだけ。
……
外でトイレをしてくれるなら、まあいいか。
食事もちゃんと食べてくれるようだし。
なにかあったら言うんだよ。
鳥や鶏たちは、やってきたインフェルノウルフの気配に怯えていたけど、すぐに慣れた。
強い。
どうしようもない力の差に諦めたという感じもするけど。
ストレスがすごいから、ピーナッツを寄越せと言ってくるところは、十分に強いと思う。
はいはい、ピーナッツを砕くからちょっと待ってね。
商店や食堂の人手の話を海の種族にすると、陸に上がっても問題なく活動できる海型リザードマンや海エルフが協力できると言ってくれた。
ありがたい。
もちろん、賃金はしっかり払う。
村長から、運営資金としてたっぷり預かっているからね。
ただ、金額を決めるのはちょっと待って。
あーしの金銭感覚、二千年前だから。
五村や大樹の村ではお金を使わなかったから、修正できてない。
島でもお金、使わないしね。
あー、じゃあ、賃金を出しても意味がないかな?
陸で買い物をするときに使えるけど。
海の種族が希望するなら、物々交換でもいいよ。
その場合、こっちが出せるのは大樹の村からもらう作物が中心になるかな。
なんにせよ、村長が来たときに相談しておこう。
時間はある。
商店や食堂が稼働するのは、かなり先の話だから。
海の種族たちが、砂浜や岩場で日光浴をしていた。
水中で長時間生活できるとしても、やはり日の光を浴びる必要はあるから。
ただ、ぐでっと横になって身動きしないと……
水難事故にあった死体が大量に流れ着いたのかと驚く。
実際、驚いた。
ハイエルフやリザードマンたちが。
あーしは、海の種族から日を浴びるのに島の砂浜や岩場を借りたいと聞いていたから驚かなかったけど。
ちゃんと連絡したのになぁ。
言ったのが夕食のときだったから、聞き流されちゃったかな?
情報共有のためのミーティング時間を作るべきかもしれない。
あー、連絡板でもいいかな。
大事なことを書いておく板。
そこを見れば、わかるように。
うん、そうしよう。
連絡板を宿の広場に設置。
連絡板に使う文字は共通語に決められた。
あーしが書く文字、読んでもらえなかったから。
村長は問題なく読んでたんだけどねー。
みんなが読めないと意味がないので、共通語で書く。
大丈夫。
慣れてないだけで、知らないわけじゃないから。
あ、いや、ちょっと文法が怪しいかもしれない。
勉強しよう。
村長が耕していた畑。
芽が出たどころか、かなり育っている。
果樹の成長も早い。
なにかしらの魔法を付与したのかな?
村長はそんな動きをしてなかったけど。
神の加護?
まさか。
まあ、細かいことを気にしても仕方がない。
ピーナッツ畑の成長も期待しよう。
島のゴミ捨て場に、スライムが定住した。
溜まったゴミを処分してくれるので、とても助かる。
島の住人として認めよう。
そっちが希望するなら。
お、希望する?
よし、それじゃあ島の住人ね。
数は……三匹でいいかな?
七匹だった。
島にやってきたインフェルノウルフが、島の生活に慣れてくれた。
あーしにも。
まあ、食事を用意しているのはあーしだし、暇があればブラシをかけたからね。
それで、どーして孤立してたのかな?
ふむふむ。
群れにいると自分を見失いそうになる?
若いねー。
インフェルノウルフは群れてこそだと思うんだけど?
外出は嫌いなのに、外で走らないのはよくないと言われると。
まー、そうだね。
若いころに動いていないと、体が成長しないから。
群れについていくためにも、ある程度は動かないと。
群れのためにってのが駄目なのね。
なるほど。
じゃあ、自分のためにってのはどうかな?
群れずに生きていくためにも、力は必要でしょ?
そのために頑張るのは悪くないと思うけどね。
まー、あんたがいいなら、ずっと島にいていいから。
焦らずに考えな。
あ、でも、なにもせずに食事を食べ続けるのはどうなのかな?
村長から食材はもらっているけど、それを貪るだけでいいのかい?
島で仕事をする気は?
……よし、では島内の見回りを命じる。
なにかあったら、あーしに言うんだよ。
わかってる。
ちゃんと働いたら、ブラシもかけてあげるから。
頑張るよーに。
インフェルノウルフ「えー、そこは自宅警備を命じるところでは?」
ヤメ 「甘えないように。働かずに食う飯はまずいでしょ?」
インフェルノウルフ「え? 超美味いっす」
ヤメ 「……」
インフェルノウルフ「ろ、労働の後の食事って、美味しいですよね!」
ヤメ 「よーしよしよしよし」
インフェルノウルフ「すべての犬が、散歩好きと思わないでほしい!」
ヤメ 「理解はするけど、あんたは犬じゃなくて狼だからね」




