防衛訓練
ウルザ、アルフレート、それにラナさんが旅立ち、村は少し寂しくなった。
それでも俺たちは、生活するために働かないといけない。
……
働かないといけないんだが、ルーが離してくれない。
アルフレートが旅立ったからだろう。
普段はどうでもないって感じだったのにな。
まあ、ルーが俺にひっついて離れないぐらいはかまわない。
ただ、できればプロレス技みたいな絡み方ではなく、もう少し雰囲気のある絡み方をお願いしたい。
多少、関節が痛いから。
ルーが離れてくれるまで、数日かかった。
そしてルーが離れたあとはハクレンだった。
まあ、ハクレンもウルザがいなくなって寂しかったわけだしな。
かまわないぞ。
ただ、頼むからプロレス技みたいな感じになるのは……
数日はハクレンと一緒だった。
ハクレンが離れると、次はザブトンだった。
そうだな。
ザブトンも寂しいよな。
ああ、わかっている。
いくらでも服を着ようじゃないか。
ザブトンはプロレス技をかけてこないから、痛くなくてよかった。
三日で五十着ぐらい着替えたけど。
そして、物陰から見ているティア、リア、アンたちからの視線は……気にしないことにする。
ラナさんとウルザが旅立って二十日ぐらい経過したら、やっとドースとギラルが普段通りになった。
滞っていた仕事がかなり進み、ドースとギラルの部下たちは満足気だ。
何人かは、またラナさん来てくれないかなぁと呟いてしまい、ドースとギラルに睨まれている。
そして、ドースとギラルはラナさん対策を考える会議を開いた。
ライメイレンやグーロンデも参加するのか。
そんなにラナさんを嫌わなくてもと思うが……
えーっと、お茶の手配ぐらいはしてやろう。
妖精女王も姿を見せるようになった。
ラナさんを避けていたようだ。
「昔、ちょーっとあってね。
顔を合わせづらいの」
気にしなくても大丈夫だと思うけどな。
「あれ、温厚に見えるけど暴れるときは暴れるからね」
そんなに?
「星を砕いたとか、大陸一つを沈めたって話もあるわよ」
それはさすがに大げさだろ?
「そうね。
星は大きい隕石を撃墜しただけだし、大陸は全部じゃなくて一部だけみたい」
……
「なんにせよ、気を許しすぎちゃ駄目よ」
あー、心に留めておこう。
ウルザを五村まで送ってくれた飛行船は、ウルザがラナさんの転移魔法で移動することが決まったときに連絡し、先にウルザの作っている新しい街に移動してもらっている。
だから、飛行船の心配はない。
心配なのは五村の村議会。
ラナさん対策で防衛の準備をし、戦時訓練や避難訓練をした。
そして、ついでとばかりに敵役を用意して防衛訓練もした。
その結果、改めて五村の防御力が脆弱だと再認識した村議会の議員たちは、頭を抱えている。
「住人の避難や、食料の備蓄に問題はありません。
ですが、やはり防壁がないことが……」
「防壁を作ると、街が広がらんぞ」
「日当たりの問題もある」
「しかし、今後、戦に巻き込まれたときは、どうする?」
「村に近づく前に止めるしかあるまい」
「五村道と五村新道のどこかに要塞を作るか?」
「戦時はよいが、平時は流通に影響がでるぞ」
「シャシャートの街との連携を強化すべきではないか?」
「西はシャシャートの街に任せてもいいだろう。
問題は東だ。
エルフの里に任せるにも限度がある」
「東の森のなかに防衛拠点がほしいと現場から意見が出てます。
目立つものと、目立たないものをと」
「意見とともに出された建設費の試算がすごい額になっているが……五村の財政なら問題ないか」
「まて。
拠点を用意したとして、中に入れる兵はどうする?
五村全域を守るのにも不足しているのだぞ」
「戦時訓練では、志願兵が多く集まったのではないか?」
「日常的に訓練している兵と、訓練していない志願兵を一緒に考えないでもらいたい。
志願兵は街の防衛にしか使えない」
「計画段階から志願兵を計算に入れるな。
正規兵でなんとかなる防衛計画を用意すべきだ」
「それはそうだが……」
「今回の訓練で、防衛に有益と判定されたのは警備隊と神社から参加した部隊、あとは……天使族ですね」
「警備隊はさすがだ」
「神社から参加した部隊は……各部隊との連携は取れていない。
ただ、遊撃には向いている」
「敵をひっかきまわす役か。
……天使族は戦力として期待してもいいのか?」
「天使族が各地で部隊を適切に指揮したからこそ、防衛成功の判定が出たと思います」
「つまり、五村は中級の指揮官が足りないと」
「中級どころか、下級も足りません。
充足するまでは、天使族にはなんとか協力してもらいたいです」
村議会では、熱心な話し合いが行なわれた。
話し合いが終われば、議員たちは現場に意見を聞きに行き、また話し合って防衛計画を組み立てていく。
ヨウコはそんな会議から執務室に戻り、呟いた。
「我やニーズ、エキド、あとは美術館の者たちが出れば、そこらの敵ならなんとかなるだろう。
それでも、あのラナノーンには敵わんが……」
それを聞いた秘書のメッサーが注意する。
「ヨウコさま。
個人に頼った戦力は不安定です。
防衛は組織で行なうべきです」
「ああ、すまん。
そうだな。
組織での防衛を考えよう」
いざとなればハクレンやラスティ、ドライムに頼めばいいかなと考える俺は、駄目なんだろうなぁ。
ところで、五村の文官代表であるロクは、今回の防衛訓練はどう評価しているんだ?
ヨウコの執務室にロクがいたので聞いてみた。
「無事に終わってよかったなと」
志願兵が集まりすぎて、その管理が大変だったらしい。
「防衛側の勝利判定は、甘めに見てですね。
防衛失敗と判定すると、住人が不安を覚えますから」
なるほど。
それじゃあ、防衛力の強化は急がないと駄目か。
「いえいえ。
ほどほどで大丈夫です。
現状で、ここを攻めてくる勢力はいませんから」
まあ、それはそうだが。
防衛は考えておかないと駄目だろ。
「そうなのですが……現状で戦力過多ですよ」
そうなのか?
訓練では、五村に被害が出たとなっているが?
「訓練には、五村にいるザブトン殿のお子さまたちが参加していませんので」
あー……
「あと、攻めてきたのが魔王国軍の精鋭部隊という設定でしたから」
敵の想定が強いと?
「敵側の指揮官にビーゼル殿やグラッツ殿がいましたから。
実際にそのお二方が攻めてくるとは思えません」
ビーゼルとグラッツ、訓練に協力してくれていたのか?
「ええ。
あと、魔王殿も参加しましたよ。
防衛側ですが」
……?
なぜ防衛側に?
攻める側じゃないのか?
「攻撃側での参加を表明したら、ビーゼル殿とグラッツ殿に断られて……防衛側に志願兵として参加を。
丸太を持って防御柵の建設をしてました。
大活躍であったようですが、建設の現場を指揮する者がすごくやりにくいと言ってました」
あー、えっと、感謝と注意をしておくよ。
「よろしくお願いします」
あと、話のついでなんだが……
「なにか?」
五村の武官代表であるヒーはどうしたんだ?
今回の訓練で活躍したと聞かないんだが?
「最初の奇襲攻撃で防衛の指揮官がやられるという状況設定でして」
出番がなかったのか。
「はい。
状況設定はクジでランダムに選ばれるのですが、そのクジを引いたのがヒーなので文句を言うこともできず」
せっかくの機会だったのにな。
「ですね。
ちなみにですが、ヒーの代わりに指揮を執った者に、顔をあわせるたびにあれが駄目だった、これが駄目だったと指導しています」
ははは、気持ちはわかるな。
でも、あまりに続くようなら、ベルに言っておこうか?
俺の提案に、すぐに言って早くなんとかしてほしいとロクは嘆いた。
久しぶりの更新となり、すみません。




