ラナさん
ドースの知り合いというか、ライメイレンの祖母であるラナノーン。
娘と同じ名なので、ややこしいなと思っていたところ、ラナでいいと言われたのでそう呼ぶことにした。
そして、そのラナさんは……
まだ村にいる。
雰囲気的にすぐ帰るのかなと思っていたけど、温泉地で湯治をするらしい。
なんでも、ドラゴンの姿で満足に飛べないそうだ。
だから、ウルザが温泉を勧めた。
そして、ラナさんと一緒に帰る予定だったウルザの滞在が延び、ハクレンとザブトンは喜んでいる。
子供たちも。
そうそう、ザブトンなんだけど、ラナさんとは顔見知りのようで珍しく積極的に絡みに行っている。
ラナさんは、ザブトンと頑なに目を合わせないようにしているけど。
昔、なにかあったのかな?
ラナさんが滞在していることで、ちょっと変化があった。
ドース、ギラルが仕事をし始めた。
溜まっていた仕事を精力的にかたづけているらしい。
これはラナさんに注意とかされたわけではなく、仕事をしていることを理由にラナさんを遠ざけるためらしい。
ライメイレンがそう言ってた。
そして、仕事のために呼ばれたドース、ギラルの部下たちは……
ラナさんを見ても普通だった。
あー……逃げたところで、どうしようもないと。
諦めの境地か。
悪魔族の助産師たちも、似たような感じだった。
逃げたりするのは、まだなんとかなる人たちと。
なるほどなぁ。
ドライム。
ラナさんは、ドライムに畑仕事のことを聞いた。
苦言や注意ではなく、普通になぜやっているのかと聞いただけだ。
それに対し、ドライムはしっかりとこう言った。
「ダイコンの美味さを広めるため、育てております」
なにか問題でもありますかという顔だった。
足は別の生物のように高速で震えていたけど。
「なにも問題はない。
神代竜族にはいろいろな役目があるが、それ以外は好きにやればよい」
「はっ。
ありがとうございます」
「お主がそこまで気に入るダイコン。
興味がある。
気が向いたときにでも供せよ」
「春蒔きのダイコンでよろしければ収穫できますので、今晩にでもご用意いたしましょう。
実は秋口に蒔いたダイコンがもっとも美味しいのですが、村長の畑だと春蒔きのダイコンでも十分に美味しく育ちます」
「そうかそうか」
ドライムはラナさんにダイコンの説明をした。
そんなドライムを隠れて見ていたライメイレンとグラッファルーンは、涙を流し立派になったと呟いていた。
妖精女王。
甘味を用意しても、やってこない。
珍しい。
子供のところにもいないなんて。
別の場所でなにか用事でもあるのかな?
でも、妖精女王用に取り分けておいた甘味は、いつのまにか消えているから……
村には来ているのだろう。
子供たちが寂しがっているから、また姿を見せてくれる日を待ちたい。
始祖さん。
「まず、ボクとラナノーンさんのあいだに線を引いて、村長はその線のうえに来るようにポジショニングしてほしい。
できるだけボクに近い場所で」
なぜか、なにかのスポーツのディフェンスみたいなことを指示してきた。
すごく真剣な顔で。
フラウをはじめとした文官娘衆たち魔族。
彼女たちはラナさんに憧れの視線を送っていた。
なんでも、魔族にとってラナさんは救世主。
魔族が苦境の時代に、対抗勢力(ドラゴンとか古の悪魔族とか人間とか)をボコボコにしてくれた大恩人なのだそうだ。
古典好きな者なんかは、臆せず話しかけている。
ラナさんも聞いてもらえるのが嬉しいのか、ニコニコして話をしている。
最近の夕食のテーブルでは、ラナさんを中心に文官娘衆が囲んでいるのをよくみかける。
しかし……
魔王はラナさんに近づかない。
あきらかに距離をとっている。
なぜだろう?
「な、何人かの魔王が引退した理由でもあるから……」
な、なるほど。
ヨウコ。
ニーズ、ニーズの友人のエキドの連名で、五村を死守するとの意見書らしきものを送ってきた。
ラナさんを警戒してらしい。
そんなに恐れる必要はないと返事しておいた。
なんだったら、紹介するぞとも。
すると、すごく丁寧に書かれた「遠慮します」という内容の手紙が急ぎ届けられた。
ヨウコは娘のヒトエを五村に呼び寄せ、しばらく大樹の村に帰ってきていない。
五村にいるナナからの報告では、五村は防衛戦の準備中だそうだ。
大丈夫なのか?
あ、戦時訓練や、避難訓練も兼ねているのね。
それならいいけど。
……いいのか?
ま、まあ、祭りみたいな感じかな。
ベルたち四村のフォーグマ。
変化はない。
普段通り。
「あのかたは、自然災害みたいなものです。
普段から備えているのであれば、あとは神に祈るだけです」
なるほど。
ハイエルフやドワーフ、リザードマンたちも似たような感じだ。
天使族は……変わらない者たちと、逃げる者たちと、戦う者たちに分かれた。
変わらない者たちはいつも通りだな。
逃げる者たちは転移門を使って五村に。
一応、仕事名目での移動だったので、ヨウコに捕まって五村防衛軍に入れられたらしい。
天使族の戦闘力を見逃したりはしないか。
戦う者たちは……
なぜか俺の背後にいる。
ラナさんはあっちだぞ?
グッチ。
彼は昼間なのに酒を飲み、愚痴を吐き続けている。
その相手をしているのは俺だ。
捕まってしまった。
グッチは昔、ラナさんにかなり酷い目に合わされていた。
何度か挑んだけど、種族の相性的に手も足も出なかったそうだ。
それだけでなく、これでもかと執拗に追いかけまわされたらしい。
どうしようもなくなって、ラナさんをなんとかしてほしいと当時は敵である竜王に頼みに行ったら、無言で頭を下げられて絶望したと。
そうかそうか。
とりあえず、飲め。
うん。
あと、ブルガとスティファノは許してやって。
パニックになって呼んだだけみたいだし。
二人には、ラナノーンとククルカンが世話になっているんだ。
こんな感じかな。
あ、始祖さんが来るときに一緒にアルフレートも戻ってきた。
最近のアルフレートは村に戻っても大人な姿だったのだけど、ウルザに褒められて普段の姿になっている。
難しい年ごろだ。
ちなみに、ウルザはザブトンが作った最新の黒いゴスロリ服を着ているのだけど、アルフレートは照れずに普通に褒めてた。
このあたり、ルーたちの教育を感じる。
いや、似合っているのはたしかだけどな。
あー、アルフレートの趣味的には黒いゴスロリ服はど真ん中なのかもしれない。
ライメイレンから相談を受けた。
ラナさんの家を村に用意しないかという内容。
定住するわけでもないのに家を用意するのは、転移魔法の移動先として。
転移魔法を使わないと言っていても、非常時には普通に使ってくるらしい。
そういうドラゴンだと。
屋敷に一部屋用意するのでもかまわないのだけど、それだと転移魔法でやってきたときにドースが泣く。
ライメイレンとしても、気が休まらないと。
まあ、俺としては家を用意することに問題ないが……
そういった理由だと、ギラルの家の近くは駄目だな。
森の中でも可って……管理が大変だから、それは却下だ。
うーん。
どこにしようかな。
居住エリアもなんだかんだで施設が増えて、手狭になっている。
普段、使わない家を建てるのも……
そういえば、家の大きさとかはどうするんだ?
普通の家で大丈夫か?
豪邸とかだと、ちょっと困るが?
あと、お世話は?
ラナさんの感じから、自分で料理とかしないだろ?
……
お世話は、ライメイレンの伝手で使用人を何人か連れてくるそうだ。
家の大きさに関しては……
本人に聞くのがベストだな。
聞いた。
村にある普通の一軒家でいいそうだ。
そして、めちゃくちゃ喜んでいた。
喜ばれるのは悪い気がしない。
しっかりとした家を建てよう。
グッチ 「ラナノーンさまを娶って大人しくさせたギグラントさまは、私たちの英雄」
古い魔王「名前を聞いたら挑まねばならないという罠……」




