準備するアルフレート
僕の名はミケル。
僕は一応、自衛ぐらいはできるていどに戦えるけど、魔獣や魔物がいる場所に望んで行こうとは思わない。
だって危ないんだもの。
なのに、アルフレートくんが魔獣や魔物がいる場所に行こうとしている。
アルフレートくんは強いから大丈夫だろうけど……
一人で行かせることに?
いいの?
駄目だよね?
……
母さん、オブライエンさま!
護衛を貸して!
「慌てるな。
さすがにいきなり行ったりはしない。
準備に数日かかる」
アルフレートくんの言葉に、少し安心する。
「まず、冒険者ギルドに行く」
?
「冒険者登録をしないと、いろいろと面倒だろう」
そうなの?
「そうではないのか?」
アルフレートくんが言うには、採掘した物の権利とか、ダンジョンを見つけた場合の権利とか、すでに見つかっているダンジョンでの探索権、新しく見つけた物の所有権とか面倒なことを仲介してくれるのが冒険者ギルド。
その冒険者ギルドの仲介を得るために、冒険者登録は必須だと。
聞いたことがなかった。
そして冒険者ギルドにアルフレートくんと行くと……
変な人たちに絡まれた。
「おうおう、ここはおめぇら」
絡んできた人が言えたのは、ここまでかな。
アルフレートくんが殴り、壁まで吹き飛ばした。
「てめぇ」
勇敢な二人目が言えたのは、それだけ。
彼は天井に打ち上げられた。
三人目は発する前に、近くのテーブルに叩きつけられた。
うーん。
パワフル。
だけど、ちょっと乱暴じゃないかな?
もう少し、彼らの話を聞いてもよかったと思うけど?
これは儀式?
力を見せることで、ギルド職員の対応が変わってくる?
例えば、これから行なう登録。
ほら、すぐに始まった。
儀式をしないと平気で半日ぐらい待たせるらしい。
悪いときは、登録をしてくれない?
そうなの?
あー、賄賂を待ってるわけね。
詳しいけど、そういった扱いを受けたことが?
冒険者の知り合いに、教えてもらったのか。
なるほど。
ところで、自然な流れで僕も冒険者登録されているんだけど……
「私の案内役なのだろ?」
……
護衛、強い人をお願いしよう。
アルフレートくんは手慣れていた。
水、食料、調理器具、寝袋、毛布、灯り、必要な物を買い集め、まとめていく。
言えば母さんが用意してくれたと思うけど?
「フーシュさんは忙しい。
ゆえに、自分でできることは自分でしているだけだ」
うーん。
僕より年下とは思えないぐらい、しっかりしている。
僕もしっかりしなければ。
ちなみに買い集めている最中、冒険者ギルドで殴り飛ばした者たちの仲間と思われる集団から襲撃を受けたけど、アルフレートくんが叩きのめした。
そして、その集団のリーダー格を引きずりながら、集団のアジトを襲撃。
徹底的に潰した。
相手が止めてくれと言っても続けた。
下手に残すと、絶対に逆襲してくるからと。
「殺してしまえば面倒はないのだが……そういったやり方は好まぬ」
だから、拭えない恐怖を与え、近づかないようにするそうだ。
理解はできる。
……え?
次?
この集団を飼っていたところ?
大手の商会らしい。
あ、あー、なるほど。
大手の商会が、商売相手に嫌がらせをするときにこの集団に依頼していたのね。
不似合いな高級品が、やたらとあるわけだ。
衛兵に連絡してもいいかな?
たぶん、ほかに悪いことをいっぱいやってると思うから。
大手の商会の頭が変わった。
持病の悪化による引退と、世間には公表されている。
アルフレートくんは手際がいい。
ん?
妹に言わせると、手際が悪い?
あれで?
い、いや、どんな妹なんだと思っただけ。
ちょっと怖い。
さて、準備が完了したので、魔獣や魔物がいる場所に出発。
リーダー、アルフレートくん。
荷物持ち、僕。
護衛、三人の王子。
……
王子たち、なにをやっているのですか?
その変装が通用するとでも?
あと、本来の護衛は?
帰した?
…………………………………………
死にたいのかこの馬鹿ども!
命にかかわることだぞっ!
アルフレートくん、止めてくれるなっ!
こいつらは、こいつらは一回殴らないといけない!
殴っちゃ駄目?
だったら!
僕は王子たちの頭に、ゴツンと拳を落とした。
えーっと、三人の王子。
まず、アサムッド王家のイストレ王子。
つぎに、セイブール王家のニルク王子。
最後に、ダーグリン王家のモンレン王子。
年齢はイストレ王子とニルク王子がアルフレートくんの一つか二つ上ぐらいだったかな。
モンレン王子は、アルフレートくんと同じか一つ下だった気がする。
詳しくは知らない。
この三人は、アルフレートくんと揉めて母やオブライエンさまにぎゅっとされた。
和解後は、アルフレートくんの代理人のようなことをして、いろいろな仕事を任されている。
忙しいはずだ。
なので、ここにいるのはおかしい。
あと、王子たちが魔獣や魔物がいる場所に行くのを、王子たちの護衛が許すとは思えない。
王子たちが強いって話は聞いたことはないぞ。
そして、ここに王子たちの護衛はいない。
つまり、勝手にやったということだ。
もう一回、拳を落とした。
「人前で王子たちを叩くと、権威が落ちるぞ」
アルフレートくんがそう言って指さす物陰に……母とオブライエンさまが用意した護衛たちが、申し訳なさそうにしていた。
王子たちには逆らえなかったけど、さすがに帰ったりはしなかったのね。
よかった。
いくつかの生活装備とかも任せてたし。
じゃあ、王子たちを帰せば元通りかな。
そう思ったのに、王子たちが抵抗した。
アルフレートくんのそばにいないと、次になにをやるかわからなくて怖い?
ま、まあ……そのあたりは理解できるけど。
アルフレートくんと一緒にいると、ご飯が美味しい?
理解できる。
あー、せっかくだからとか、ここまで来たんだからとかは駄目だ。
まだ出発していないからな。
街も出ていない。
そんな言葉には流されない。
まず、王子たちは自分の身になにかあったときに、困る人たちのことを考えなさい。
たぶん、王子たちの護衛は今、死にそうな顔で王子たちを探しているぞ。
アルフレートくんが僕の意見に賛成してくれたので、王子たちが同行する、しないは横に置いて、王子たちの護衛と合流することにした。
王子たちの護衛から、涙を流しながら感謝された。
そして、王子たちは縄で縛られている。
拳を落とした僕が言うことじゃないかもしれないけど、王子に対する扱いがそれでいいのかな?
アルフレートくんの妹、似た感じで縛られてた?
……
深く考えないでおこう。
そして、そんな感じだと王子たちの同行は無理だね。
アルフレートくんは……もとより同行させるつもりはなかった?
変装のためか、装備が体に合っていなかった。
それでは危ないと。
なるほど。
まあ、なんにせよ気を取り直して出発。
……
これだと僕がやる気みたいだな。
そう思ったところで、また問題発生。
「まあ、偶然ですわね」
「これも運命」
「ご一緒させていただいても?」
三人の女性……見覚えがある。
レイワイト王国貴族の娘さんたちだ。
高位貴族ではないが、王族が出席するパーティーに参加できるぐらいの地位はある。
それが冒険者の姿で、アルフレートくんの前に。
つまり、アルフレートくんを待っていたのだろう。
行動力は評価できるが、さすがに同行はさせられない。
僕が断ろうとすると……
装備が体に合っており、使い込んだ形跡もある。
持っている荷物のまとめかたも熟練。
雰囲気から、三人の女性は冒険者として活動したことがあるとアルフレートくんは評価した。
「その通りです」
「実家の周辺の魔獣や魔物退治に駆り出されていまして」
「多少、腕に自信はあります」
な、なるほど。
王子たちよりは使えそうだけど……
アルフレートくんは、同行を断った。
理由は女性の護衛がいないから。
僕はどういうことかなと思ったら、護衛の一人が教えてくれた。
魔獣や魔物がいる場所に行くときは、基本は集団行動。
その際、問題となるのが睡眠と排泄。
睡眠はできるだけ一緒に。
排泄も見張りを立てると。
あ、あー……たしかに、そういったときに貴族の娘さんの周囲にいるのが男性ばかりなのは困るか。
女性の護衛は必要。
「ご一緒できないのはとても残念だ。
またの機会に希望を持つとしよう」
アルフレートくんは三人にそう言ったけど……それだと、次は女性の護衛を連れて来るんじゃないかな?
言いなおそう。
ほら、女性の冒険者を護衛として雇おうと動きだしてるから。
なかなか出発できない僕たちだった。




