和解
本日、二話投稿です。
その二話目です。
僕の名はモンレン。
モンレン=ダーグリン。
レイワイト王国を形成するダーグリン王家の一員。
ラフス王の息子の一人だ。
そんな僕は、宰相を睨む。
なぜ殴った?
「それが理解できていないからです」
理解もなにも、まず、あれは誰だ?
アルフレートはどこに行った?
でもって、いきなり現れた者になにゆえ謝罪を拒絶されねばならんのだ!
「私たちの話、聞いていなかったのですか?」
最初のやつか?
聞いてはいたが、よくわからなかった。
「……はぁ」
王子である僕に、そこまで露骨な溜息を吐くなっ!
「では、吐かれないようにしてください。
そして、あそこにいたのがアルフレート……アルフレート殿です」
お前が殿をつけるとは珍しいな。
「以前は勉学に来ただけの子供でしたからね。
ですが、あそこにいたのは違います」
姿が違うからか?
「それだけではありません。
覚悟が違いました。
もう子供ではありません」
そうなのか?
「そうなのです。
感じ取れませんでしたか?
そして、向こうの厚意を、無下にするかのように最後の最後で邪魔を……殴られて当然です」
待て。
向こうに厚意なんてあったか?
あ、こら、また溜息を!
「いいですか。
まず、アルフレート殿の違う姿を見せてもらいましたよね?
そしてコーリン教の大司祭フーシュと、レイワイト王国が誇る神官戦士団のオブライエン神官戦士長が、それを認めていました。
つまり、彼はただ者ではないと教えてくれたのです」
ま、まあ、姿が変わるんだから普通じゃないだろ。
「そのうえで、こちらの謝罪を受け取らず、向こうから謝ってきたでしょう。
ただ者ではないとアピールしたうえで、その者が謝る。
それが厚意でなければ、なんなのです?
いいですか?
今回の件、向こうは王子たちの首を要求することもできたのですよ?」
まさか……
「コーリン教から、ことを収めるためにそうすることもやむなし。
との意見を内々にもらっています」
う、嘘だろ。
「嘘だと言いたいですけどね。
本当です。
ですが、アルフレート殿から悪かったと謝ってくれた。
謝ってくれたのです。
フーシュとオブライエンも。
揃って、あの事件はこれで終わり。
なかったことにしようと言ってくれたのです。
それで終わる話だったのに……王子たちが待てなどと言ってしまうから」
だ、駄目だったのか?
「駄目ですよ」
待てと言っただけだぞ。
お前だって待てと言ったじゃないか。
「私は話が始まる前にです。
同じにしないでいただきたい」
同じだろ。
「違います。
王子は、なかったことにしようと言ってる相手に、待てと言ったのです。
意味はわかりますよね?
なかったことにはしないと言っているのです」
そ、そういう意味で言ったのではなく……
「外交の場では、言葉の真意などどうでもいいのです」
外交って……
「外交なんですよ。
コーリン教に対しては。
はぁ。
頭が痛い」
わ、悪かった。
それで、このあとはどうすればいい?
「……もう一度、謝る場を用意します。
そこで全面降伏してください」
…………一応、僕は王子なんだが?
「コーリン教を相手に喧嘩を売るなら、一人で売ってください。
私はコーリン教側につきます」
……すまなかった。
宰相の言葉に従う。
「ぜひとも、そうしてください。
頑張って、王子が素直に頭を下げられるシチュエーションを用意しますので」
?
宰相に任せて数日後。
レイワイト王国の王城にある広い中庭の一角、背の高い植木に隠れるような場所に俺はいた。
ここに行くように宰相に言われたから、ここが用意された謝罪の場なのだろう。
偶然、出会った体裁で謝罪か。
理解した。
あとはここにアルフレート……アルフレート殿が来るのを待って、謝るだけ。
なのだが……
おっと、アルフレート殿が中庭に来た。
一緒にいるのはフーシュさまと、神官戦士長のオブライエン殿だな。
三人は……僕のほうには来ない?
僕の存在には気づいていない?
ここに僕がいることを知らないのか?
宰相め。
ここからは自分でやれということか?
シチュエーションを用意すると言っていたのに。
そう憤りながらも、アルフレート殿たちの様子を見ていると……
あー……訓練をするのか。
すごいな。
オブライエン殿と剣は互角に見える。
でもって、魔法。
まあ、姿を変えられるのだから、魔法ぐらい使えるよな。
いいなぁ。
……
あれ?
魔法って、あんなに威力あったっけ?
ここまで揺れているんだけど?
熱い?
熱波も届いてる?
こんなに離れているのに?
戦場魔術師の魔法より、すごくない?
最後に……神官戦士団が捕え、連れてきた魔獣と……
魔獣、嫌がっているじゃないか。
あの狂暴な魔獣が、かわいそうなぐらいに怯えている。
追い詰められた魔獣が自暴自棄になったら、危なくない?
大丈夫?
僕も逃げたほうが……
あ、魔獣が屈した。
アルフレート殿はなにもしていないのにっ!
落ち着け、落ち着け……
えーっと。
まず理解した。
彼はすごい。
うん。
コーリン教の重要人物であることも理解した。
なるほどなるほど。
……
そして、ここは宰相が用意した、謝罪の場ではないことも理解した。
僕にアルフレート殿の力を理解させるための場だ。
だから、僕は……
自らアルフレート殿に謝罪しにいかなければいけない。
うん、今日にでも面会を申し込もう。
後日。
アルフレート殿に謝罪ができた。
よかった。
友誼も結べた。
よかった。
しかし、なぜ僕は王国のトイレの改善事業を手がけることになっているんだ?
いや、僕だってトイレは綺麗なほうがいいけど。
僕と一緒にアルフレート殿と揉めた王子二人も、個別に謝罪に来たらしい。
あのとき、中庭のべつの場所にいて、僕と同じ考えにいたったそうだ。
だよな。
そうなるよな。
しかし、彼らは料理と畑。
なぜ僕はトイレ?
い、いや、規模はもっとも大きいけど。
二人も手伝ってくれるけど。
え、ええいっ!
考えるな!
動け!
動くんだ!
ああ、でもやっぱり疑問が浮かぶ。
アルフレート殿はすごい。
認めよう。
だが、なぜそんな彼の目標が、村長なんだ!
そこがわからん!




