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後片付けと余波


 祭りが終わった。


 さあ、のんびりするぞーっと思うが、やることはやらなければならない。


 それは祭りの後片付け。


 二日酔いになっている者が多いが、片付けは迅速に行う。


 いつまでもお祭り気分では困る。


 舞台や観客席を残すかどうかで話し合われたが、特に邪魔ではないので残されることになった。


 今後、何か使えないか各自で考えることになっている。


 野外の舞台だから、俺としては演劇とか演奏会ぐらいのイメージしかない。


 他の人のアイディアに期待だ。


 しかし、土で作った舞台はともかく、木の観客席は野ざらしだと腐るかもしれない。


 こっちの世界にはブルーシートとか無いからな。


 昔の人はどうしていたのだろう?


 普通に屋根を考えるべきだろうか?


 ああ、違う。


 木の椅子に拘らず、土で椅子を作ればいいのか。


 暇を見つけて、少しずつ土の椅子を作っていこう。




 昼過ぎ。


 遅めに目を覚ましたドース、ライメイレン、ドライム、ドライムの奥さん、ビーゼル、ユーリ、魔王、そして始祖さんたちが帰る準備を始めた。


 帰る前になんだか難しそうな話をしていたが、何か問題でもあったのだろうか?


 まあ、偉い人たちらしいので余計なことに首は突っ込まない。


 各自にお土産を渡しながら、別れの挨拶をする。


 まずはドース、ライメイレン、ドライム、ドライムの奥さん。


「楽しかったぞ」


「賑やかなのは良いですね」


「もう少し滞在したいのだが……邪魔はできない。

 素直に帰るとしよう。

 新しい村の住民を探さねばならないしな」


「娘に落ち着きがでました。

 これからもよろしくお願いします」


 次にビーゼル、ユーリ、魔王。


「久しぶりにリラックスできたよ」


「王国でお祭りをやる時は、ご招待しますね」


「あ、こら。

 それは私の役目。

 むー……まあ、その、なんだ。

 今後もよろしく頼む」


 最後に始祖さん。


「もう少しアルフレートと触れ合いたいんだけど、色々とあってね。

 はぁー。

 あ、そうそう。

 薬草を育ててる畑を見たんだけど、いくつか貰っていいかな。

 今度、珍しい薬草を持ってくるから」


 それぞれの方法で、帰路についた。



 ラミアたちも目を覚まして挨拶に来たので、お土産を渡しておく。


「いいのですか?」


「来られなかった者たちにも、お祭り気分のお裾分けだ」


「ありがとうございます。

 それと、次は絶対に勝ってみせますから!」


「ははは」


 次回の予定は無いのだが……


 ラミアたちは帰ったが、ハウリン村から来たガルフたちは帰らない。


 この村に移住した者たちの様子を見ながら、秋の交易という名の交換市の時に一緒に帰る予定とのことだ。


 つまり、ガルフを含めて四人の獣人族の男が村に居るということになる!


「パパー」


「娘よ、元気だったか?

 ああ、こっちは大丈夫だ。

 お母さんも元気だぞ」


 こんなやり取りが四箇所で行われた。


 あー、全員、既婚者ね。


 で、娘の一人が村に移住していると。


 はい。


 わかってます。


 家庭を壊そうとは思いません。


 仲良くしてください。


 獣人族の娘たちの結婚相手に丁度良いとか考えてすみませんでした。




 武闘会の片付けを終えると、村の雰囲気はいつも通りに戻った。


 ただ、余波が残っている。


 まず、トレーニングをする者が少し増えた。


 ランニングや柔軟程度なら以前からあったが、今は普通に模擬戦が行われたりする。


 怪我をしないように注意してほしい。




「そういえば、ルーって吸血鬼だよな」


「何を当たり前のことを言ってるのよ」


「武闘会の時、そういった特性を活かした戦い方をせず、普通に戦っていたなって」


「吸血鬼の特性を活かした戦い方って?」


「え?

 あ、ほら……」


 俺のイメージする吸血鬼だと……


「例えば、その……霧になって攻撃を避けたり?」


「あれ?

 貴方の前で霧になった事あったっけ?

 よく知ってるわね」


「いや、イメージで」


「どんなイメージを持ってるか知らないけど、霧に姿を変えるのは戦いに向かないのよ。

 疲れるし攻撃力が無いし、霧から元に戻る時に無防備になってしまうの。

 主に鍵の掛かった部屋に侵入する時の術ね」


「なるほど。

 じゃあ、動物に姿を変えたりは?」


「あれも戦闘向きの術じゃないわね。

 人間の姿の時以上に強くなることは無いから。

 こっそりと侵入する時に使う術ね」


「侵入する術ばかりだな。

 ひょっとして身体の年齢を変化させる術も……?」


「あれは術じゃなくて特性みたいなものかな。

 力を消費したくない時は幼く、全力を出す時は大人姿でって感じなんだけど……

 酷いダメージを受けると、強制的に幼い身体になっちゃうのよね」


「最初に会った時だな。

 吸血して、相手から力を奪うのは?」


「愛する夫がいるのに、他の人の血を求めたりしないわよ」


「あはは。

 失礼しました。

 後、吸血鬼らしい攻撃方法となると……催眠術とかかな?」


「催眠術?」


「相手を操る術だ」


「ああ、幻惑ね。

 あれって、相手が弱くないと効かないのよ。

 騎士の部に出てた人たち相手だと私が疲れるだけね」


「あー……じゃあ、血液を操るのはどうだ?」


「血液を操る?

 どんな感じに?」


「自分の腕とかから出した血を剣の形にして相手を攻撃する」


「液体操作の応用かしら?

 多分、できると思うけど……剣の形になるほどの量の血液を出すデメリットを考えたら、やらない方が良いと思うけど」


「むう」


「貴方のイメージする吸血鬼って変わってるわね。

 ひょっとして、私とフローラ、始祖様以外にも知り合いが居るの?」


「ははは。

 物語で知っただけだよ。

 だから、怖い目で見ないでほしいな」




「ティアはゴーレムを操れるだろ?

 武闘会の時、どうして使わなかったんだ?」


「ゴーレムはパワーがあっても動きが鈍いですから。

 武闘会のような決闘には向かないのです」


「じゃあ、ゴーレムはどういった時に使うんだ?」


「私は主に囮として使っています。

 魔物や魔獣相手なら、それなりに引っ掛かってくれますから。

 後は……汚れたくない時でしょうか」


「汚れたくない?」


「魔物や魔獣の中には、その……不衛生な存在も居ますので」


「なるほど」


 ちょっとゴーレムが可哀相だと思ってしまった。




「アン。

 正直に言ってほしいんだが……俺の生活に改善点はあるだろうか?」


「特にはありませんが……

 どうかしました?」


「いや、溜め込まれても怖いと思って」


「?

 ……あ、ひょっとして武闘会の件ですか?

 ご安心ください。

 村長は言えば改善してくださいますから」


「ルーの時は?」


「何度も注意したのですが、改善が見られなかったので……

 ああ、私怨ではありません。

 このままですと、アルフレート様やティゼル様に悪い影響が出ると思っていたところ、良い機会が転がってきたので……つい」


「何かあったら言うように。

 溜め込まないでね」


「あー、それでしたら一つ」


「ん?」


「村長のことをご主人様とお呼びしたいのですが……」


「時々、呼んでないか?」


「村長が恥ずかしがるので、お部屋やお風呂限定です。

 ですが、今後はどこでも村長のことをご主人様と」


「まだ吹っ切れないから、勘弁してほしい」




 ドワーフのドノバンが、俺の家にやってきた。


「村長。

 酸っぱい果実があっただろ。

 あれをいくつか貰えるか」


「酸っぱい……レモンのことか?

 いいけど、珍しいな。

 どうしたんだ?」


「酒の香り付けにな。

 それと、祭りの時に商人が送ってきた酒。

 あれを少し買い付けてほしい」


「商人ってマイケルさんだよな。

 となると……ハチミツ酒か?

 そんなに美味くないって言ってなかったか?」


 差し入れに酒がある事を確認した直後、どこで聞いていたのかドワーフたちが来て試飲。


 辛口の批評を聞いた覚えがあるが……


「そう思っていたのだが、祭りの時に鬼っ娘がやってた飲み方が美味くてな。

 聞かれなくても説明しよう。

 そう難しい飲み方ではない。

 ハチミツ酒にハチミツを追加してあの酸っぱい果実の汁を少し入れるだけだ。

 それだけで、グンッと美味くなった。

 村長に教えてもらった酒と果実に合わせる方法と一緒だな」


「なるほど。

 今度、試してみよう」


「うむ。

 買い付け、頼んだぞ。

 それと、買い付けた酒は褒賞メダルで交換できるようにするのを忘れずにな」


「それはするが……

 買い付けた酒なら、普通に食事に出すぞ」


「いいのか?

 酒は宴会の時以外は出さんのだろう?」


「酒を制限している主な理由は、村の作物を全部酒にする勢いで飲むからだ。

 節度を守って飲むなら、制限なんか取っ払うぞ」


「節度かぁ。

 難しい……

 まあ、頑張りたいが……まだしばらくは制限をしてもらおう。

 毎日飲む酒も美味いが、時々飲む酒もまた美味い」


「わかった」




 武闘会で優勝したマクラは、トロフィーと冠を俺の家に飾っている。


 寝場所に置くよりも俺の家の方が安全に飾れるということかな?


 そういうことならと俺は家の一角に棚を設置し、そこにトロフィーと冠を飾った。


 うん、満足。


 マクラもそれを見て、満足そうだった。


 ザブトンも、それを嬉しそうに見ていた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] このエピソード、色々なキャラクターたちの魅力が詰まっていていいですね。好きです。
[一言] やはり蜘蛛さんたちは文にちょこっといるだけでも大きな癒し効果になる。
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